俺、四天王と戦う。
『さあ、まもなく試合開始!はたして、
挑戦者カガミ サナダとヤマト ホシナはどこまで戦えるのか!?』
やかましい実況が耳に響く。
こういうのを聞かなくてすむイフが羨ましい。
俺達がフィールドに入って来たゲートとは逆から、
四天王が入ってくる。デカイのからちっこいのまで個性あふれてる。
「君等が挑戦者だね?」
とハブル。ちっこい女。
「どーせ俺等の勝ちなんだ。早く降参しろよ」
とアスガ。チャライ野郎。
「辞めろ。向かってくるものを拒まないのがホワイトローズだろう」
とノザ。デカイ野郎。
「・・・・・・」
とクレイカ。こいつ何も言わねえな。って、こいつ女かよ。
男女2人ずつの四天王は実力者ぞろいのようだ。
むこうさんは俺等を舐めてるようだが。
しかも30秒のハンデをやろうときた。
よほど防御に自信があるのか。
ちなみに野次馬はむこうが攻撃を開始してから、
俺等が何秒でやられるかを賭けているらしい。
冒険者だからって舐めんなよ。
『それでは皆様!おまたせしました!試合~開始!!!』
カーンとゴング一発。実況うぜえ。
「どこからでもかかってこい!逃げも隠れもしないぞ!」
「じゃあ遠慮なく」
俺は素手のまま相手に突っ込んでいく。
そしてかなり近づいたとこで“神速”発動。
肉眼では捉えられないくらいに加速するこのスキル。
ちなみにあまり使うことがない。てか使えない。
使わなくても一瞬で世界旅行できるのだから持っていても勿体ない。
力を押さえてる現状は重宝するが。
俺は剣を一瞬で引き抜き、横から斬りかかる。反応が遅い。
ガードする暇も結界発動する暇もなく、4人のジュエルを斬り落とす。
この間、約1秒。
お望み通り、攻撃開始から1秒で終わらせてやったぜ?おっさん。
会場が静まっている。唖然としてる者、震えてる者、いろいろいる。
そして――――
『し、試合終了…。しょ勝者、挑戦者チーム!!』
実況が叫ぶと同時に、起こったのは歓声、怒号、悲鳴。
俺が気にせずに剣をしまうと、四天王が近づいてきた。
「今、何をした?一瞬でジュエルが斬られたが…」
「いや、別に四天王に興味無かったんで。
ハンデくれんなら、遠慮なくもらっておこうかなと」
四天王一味唖然。
勝敗より、自分たちが格下に思われてたのがショックなのだろう。
俺は四天王に背中を向けて帰ろうとする。
その間際に、四天王に警告した。
「あ、そうそう。もし大会以外で喧嘩売ってきたら買いますよ。
今度は両手両足消し飛ばしますけど」
四天王が俺の警告に顔を青くした。そして逃げた。なさけねえ。
「お疲れ。圧勝だったな」
先輩が声をかけてきた。そして飲み物を差し出してくる。
「どうも。まあ、あんなのどうでも良いんですけどね」
「そういうな。ホラ、実況もうるさいから控え室に行くぞ」
俺は頷いて、先輩と控え室に行った。
「めずらしい客だな。何の用だ?」
控え室に行くと待っていたのは、近藤と氷咲、そして…白海。
「真田、座れよ」
近藤が椅子を持ってきたので座った。
「で?何の用だ?降参しろとでも言いに来たか?」
「・・・・」
白海さんだんまり。
こいつはアカン。後ろの奴に言うか。
「おい、そこで透明になってる奴ら全員でてこい」
でてきた。一瞬で。四天王が。見ればドリンクに毒薬しこんでる。
「はあ。とりあえず証拠写真撮ったから」
「なっ…!?」
俺は今の一瞬で撮った写真を見せる。
地下迷宮で開発した。まあ意味無いけど。
「負けた腹いせか?大方、あのクソイケメンの指示だろ?」
「おいおいマジかよ。いつの間に侵入したんだ?」
「さっきに決まってるでしょう。あなたが天乃を入れてるとき」
むしろ近藤が敵を迎え入れたことに驚きだわ。氷咲は冷静な突っ込みね。
「さっき言ったはずだぜ。喧嘩売ってきたら買うって。
両腕両足を消し飛ばすって。覚えてねえのか?」
俺は魔法を撃つ直前まで一瞬で終わらせた。高速詠唱だし。
「ま、待ってくれ!そんなことすれば部屋ごと…」
「お前らだけ消せるから大丈夫。四肢が飛んでも出血しないし」
おお、顔が青くなった。これ楽しいな、割と。
「じゃあ一人目」
魔法発動。直後スパンという音が響いた。
…アスガから。そして悲鳴が。四肢が消えたのだ。
「ぎゃああァァァァァァッッッ!!!」
うんうん。今頃死んだ方がマシなくらいの痛みが走ってるはず。
俺も地下迷宮でよく味わったな。その痛み。つらいよホント。
「くっ、貴様!」
「おっと、ズルしたのはそっちだぜ?まあそもそも毒効かないけど」
顔が紫に。ふふふ、三人目ぐらいでどこまで顔色変わるかな?
「…4人目」
スパンとクレイカの四肢を消したとこで終了。白から青になった顔色。
全員気絶。そして唸りながら殺してくれと呟いてる。
手足が無い奴等が控え室に転がってるのはシュールである。
部屋から放り出して座りなおす。うん、スッキリ!
「で、だんまりで顔を青ざめてる白海さんよ。
これが今までお前がやってきたことさ。調べたぜ。
本人のとこまで行って直接見てきたんだ。すごかったな」
白海は相変わらずだんまり。しかも顔が青い。
自分のやってきたことをようやく理解したのか。
「そこまでだよ。うちの仲間が世話になったようだね」
突然誰かが入ってきた。
そこにいたのはホワイトローズのリーダー、グローリーだった。
「主犯登場か。色々仕掛けてくれたな」
「君はなかなか勘が鋭いようだね。
冒険者を潰すためだからしょうがないことなのさ」
「親を冒険者に殺された、だっけか?」
グローリーは高貴なイメージ、口調だが腹黒い。
彼の性格はどうやら、彼の親戚が影響してるらしい。
「何故それを?」
「調べたに決まってんだろ。苦労したぜ。証拠隠滅されてたからな」
グローリーは元々一級の貴族だったらしい。
彼の親はすごく偉い人で、割と有名な騎士だった。
しかし彼の親は殺された。冒険者に。10年前に。
ある冒険者が彼の親に受けた仕打ちが酷く、反乱を起こしたのだ。
それによって彼の両親は死んだ。
当時8歳の彼はそれを見て、冒険者を恨んだ。
そして歪んだ性格の親戚に育てられ、彼は騎士となった。
冒険者を潰すため、手段を選ばぬ人間となってしまったのだ。
「アマノ、行こうか。いつまでも敵陣にいちゃいけない」
グローリーは白海に手を差し出した。
白海は黙ってその手を握り、立ち上がる。
そして部屋からでるグローリーはこう言い放った。
「僕は四天王のようにはいかないよ」
そのままでていこうとしたが、白海はこっちを見て口を動かした。
グローリーと四天王以外ははっきりと理解した。
―――彼女が“助けて”と言ったことに。
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