僕、ゴブリンに襲われる。
「ここは?」
皆驚きを隠せていない。そりゃそうだろう。
いきなり景色が変わったのだから。動揺して当然だ。
僕?動揺しまくってるよ?なんでこうなった?
一人の男子が立ち上がった。
「皆、とりあえず落ち着こう!状況を確認するんだ!」
クラスリーダーの『笹野〈ささの〉 勇車〈ゆうしゃ〉』。
イケメン、成績優秀、リーダー格。
彼はいつも女子にモテている。でも、実際には白海に惚れている。
相手にされてないけど。アピールだけはいっちょまえだ。
「状況確認。向こうからゴブリンみたいなのが来ている。」
笹野が言った。すごく落ち着いている。
たしかに向こうから剣を持った猿に似たのが向かって来てる。
敵意むき出し。なら笹野に言うことはひとつだ。
「落ち着いて対処できる奴が、ここに居ると思う?」
白海が言った。そう皆あきらかに怯えている。
ウワ―!とか、キャー!とか。
「どうする?動ける奴だけで戦う?」
僕は提案した。
「でも、下手に動かない方が。」
「ううん、真田君の言うとおりにしたほうがいいよ。」
笹野が却下しようとするが、白海が賛成する。
「ずっとここに居ても、見ず知らずの私たちを、
誰かが助けてくれることは無いと思うよ?」
「いやでも…」
「待機するなら一人でやってろよ。僕は戦うから。」
と言っても武器がない。ないなら奪う。それだけだ。
一匹、偵察みたいなのがきたので、そいつの腕をつかんで剣を奪う。
そして剣を振りかぶって、一気に腕を振り下ろす。
「ギュヤーーーー!!」
ゴブリンが悲鳴をあげて、燃えて崩れる。
どうやら、攻撃の瞬間発火するらしい。おかげで楽に倒せた。
「この剣、面白いね。」
「お、おい、殺したのか?」
「え?あ、うん。じゃなきゃ死ぬとこだったし。」
笹野が驚いた顔してる。間抜けな顔だ。
「生き物を平気で殺すなんて…、この化け物!」
「え?」
なんか笹野がほざいてる。あ、これあれだ。お前なんか…
「お前なんか人じゃない!!さっさと離れろ!!」
「ちょ、ちょっと笹野君!彼は私達を助けてくれたんだよ!?」
「離れろ白海!コイツと一緒にはいられない!僕に従わない奴はいらない!」
なんだコイツ。人を私物みたいに…。
「皆いくぞ!殺される前に!あの町に行くんだ!」
笹野に皆がついていく。皆なにも言わない。ただ黙ってついてく。
「あ、あの真田君。」
「白海、さっさと行きなよ。僕は化け物らしいから。」
「で、でも…」
「心配するなよ。早く行かないと君まで化け物扱いされるよ。
生きてりゃまた会えるしさ、今はお別れだ。」
「真田君…」
「ゴブリンの群れが迫ってる。早く行くんだ!」
「うん…絶対に死なないでね…。」
白海は走って行った。僕は最低だな。女の子を不安にさせるなんて。
さてと、見事に捨てられたし、こっからは全力でやらしてもらうよ。
これまでやったゲームの記憶がよみがえる。
ゴブリンは初期プレイやーの天敵。でも、集団にしなければ怖くない。
ソロでも処理できる。いけそうかな。
「さあ…、初陣だ!!」