俺、ついに脱出&神器×4ゲット。
「起きろカガミ!」
「ズガッ!」
俺を現実に引き戻したのは先輩の腹パンだった。
痛い。思わず変な声を出してしまった。
「まったく、ビックリしたぞ。いきなり気を失ってしまって」
「す、すいません」
先輩に怒られた。先輩、超涙目。
『ここで二人だけの世界を作らないでくれないか。ワシもいるんでな』
「なぬ…!?ぎ、銀龍!?何故ここに!?」
「私も驚いたぞ。身体が消し飛んだはずなんだが、すぐに復活してな」
なんと、銀龍が復活していた。確かに倒したはずだぞ?
すると銀龍が光り、身体が縮んでいく。やがて人の姿となった。
身長は190はあるだろう。あとゴツい。ヒゲ長い。
簡単にいうと銀髪巨体の髭の老人。人型になった銀龍が口を開く。
「すまんのう。迷宮の主は無限に再生するのだ。試練を乗り越えた者に
力を与えるため、新たな挑戦者を迎えるためにな」
「あ、そうっすか…」
俺が微妙な表情をすると、銀龍は苦笑いした。
「まあ、一応言っておかねばな。よくぞ試練を突破し、ワシを倒した。
見事であったぞ若者よ」
「あ、どうも」
「なんかすっきりしないな…」
先輩も俺も、いろいろありすぎて驚けなくなった。
「まあ、想定外だったな。まさか圧倒されるとは」
銀龍はうんうんと頷いている。まあ、そうだろうな。
「ああ、ビックリしたぜ。1年前はメッチャ強いと感じたんだが」
「今はなんとも感じなかったな」
先輩も俺と同じことを考えていたようだ。前より弱く感じたな。
「ワシは数ある迷宮の主の中でも強い方だぞ?それを圧倒するなんてな」
強い方だったのか。俺らそんなのを圧倒したの?
「まあいい。アテナのお気に入りの二人が強くなったのは嬉しいことだ」
「アテナを知ってんのか!?」
「知ってるも何もワシの孫だ」
ま、孫…?マジで?似てねェ…。
「その様子だと、アテナに会ってきたようだな」
「あ、ああ。あんたと全然似てねェんだけど」
「そりゃあ仕方ない。アテナは人間よりの神だからな」
人間よりとかあんの?なんなの神って。孫は祖父よりも地位が上なの?
「え?あんた迷宮主やってんのに孫は女神なの?」
「その前にアテナって誰だ」
説明忘れてた。俺は、先輩に気絶していた間のことを教えた。
先輩も納得したみたいだ。
「アテナは5代目女神だ。一応、ワシは3代目男神だ」
「男神ってことは、アークと同じか?」
「そういうことだ。そして、ワシは一人の人間と結婚した」
「それが、アテナの親か」
「アテナの父親だ」
ふーん、そうなのか。で、ソイツも結婚してアテナが生まれたと。
アテナは生まれてすぐに女神として覚醒したらしい。すげえなアイツ。
「んで?地上には還してくれるんだな?」
「ああ、もちろんだ。だがその前にいろいろ渡す物がある」
銀龍が魔法で3つの何かを出した。
1つ目、腕輪みたいなやつ。
2つ目、巻物みたいなやつ。
3つ目、武器セット。
「それは?」
「試練クリアの報酬だ。この腕輪が攻略の証。装着していれば、
第二属性として、“神風属性”を与えるものだ」
なぬ、最高属性を使えるだと?俺は“神炎属性”だから、
最高属性二つ持ちだと!?超強いじゃん。
「それっていいのか?最強なんて話じゃねえぞ」
「あくまで属性加護だ。魔法や付与が使えるってだけでオリジナルには
及ばないのさ」
もともと持ってる属性とは、馴染みが違うようだ。だから少し劣る。
この世界って、属性とか関係がわかんねえな。
でも、“暴風魔法”が使える俺からしたら、嬉しい特典だ。
「二つ目は秘伝書だ。攻略者にだけ使える、太古の魔法だ。
その名も“覚醒”。身体能力の向上、魔法の強化などのできる
最強の強化魔法だ」
「いや、強化しなくても強すぎるから困ってんだけど」
「だが、いずれ必要になる。元の世界に帰りたけりゃ覚えとけ」
そういやコイツ、アテナの祖父だっけ。俺が日本から来たって知ってんのか。
「どんくらい強化できんの?」
「注ぎ込む魔力量によって変わる。大量に注げば、無双ができるぞ」
お、おう。つまりあれか。無限強化か。すげえなおい。
「三つ目は武器だ。好きなのを持っていけ。ただし坊主。
お前は剣、弓、槍、拳甲の4つを一つずつだ」
「は?なんで?」
「せっかく“聖”付きのスキルなんだ。生かしてやらんと損するぞ」
ああ、そうか。確かに剣以外を持ってなかったな俺。
「分かった。じゃあ先輩も4つ選ばせてくれ」
「いいのか?」
先輩が聞いてくる。
「いいだろう。同じ数でなきゃ、不公平だな」
銀龍はうなずいた。意外と優しいな。
というわけで、迷宮報酬を全部選んだ。こんな感じになった。
「真田 鏡」
・証の腕輪(神風)
・魔法“覚醒”
・武器セット カザカミ(バスタードソード・神器)
レップウ(長槍・神器)
カザミドリ(神弓・神器)
アラシカゼ(拳甲・神器)
「星菜 大和」
・証の腕輪(神風)
・魔法“覚醒”
・武器セット 夜風≪よかぜ≫(太刀・神器)
桜牙≪さくらが≫(小太刀・神器)
嵐波≪らんは≫(神弓・神器)
涼風≪すずかぜ≫(薙刀・神器)
というように、一人6個の報酬。ちなみに俺も先輩も神器クラスの武器は
これで5つだ。何しろ俺の“ソウエン”も先輩の“ライメイ”も神器扱い
なのだ。どちらも元は“ゴブリンの剣”だけど。先輩は刀、弓、薙刀を
使える。なので、今回はこれを選んだようだ。俺、“神炎属性”なのに、
武器は“神風属性”なんだよな。銀龍曰く、成長すれば属性二つ持ちの
武器になるらしい。
「ああ、それから譲ちゃん。髪は色変えとけ」
「え?なぜだ?」
「地上では、黒髪の女は“奴隷”扱いの証だからな。金髪にでもしておけ」
「変色の魔法なんざ、持ってないぞ」
「ワシがやろう。ついでに瞳の色も変えるからな」
銀龍は先輩に魔法をぶつけた。先輩は魔法によって、姿が変わっていた。
といっても、色だけだが。黒かった髪は金色に、瞳は紫になった。
「に、似合ってますよ。先輩」
俺は思わず目を逸らした。普段から美人なのに、更に綺麗になったからだ。
「そうか?ありがとな」
俺の言葉に先輩が微笑んだ。めっちゃ可愛い。
「おい、坊主。お前も変えるぞ。とりあえず黒の瞳はマズい」
「なぜ?」
「男は、両目が黒いというのが奴隷の証なんだ」
「あ、そうなのか」
俺も、銀龍に魔法をぶつけられる。はたしてどういうふうになったか。
「どんな感じですか?先輩」
「左目の瞳が黄色になった。オッドアイってやつだ」
先輩が魔鏡を向けてくる。こらこら魔鏡を使うな。
たしかに瞳が変わっていた。違和感はない。
「それから、左目を龍眼に変えておいた。まあ、相手の細かい能力を
気づかれずに見ることができるものだ」
なにしてんだこのジジイ。といいたいとこだが便利な物だから許す。
「それじゃ、あの魔法陣に乗れ。地上まで送ろう」
「何から何まですまねえな」
「気にするな。孫のお気に入りだからな」
銀龍の言うとおり魔法陣に乗った俺達。色々教えてもらったな。
「ていうか、いつまで人型でいるつもりだ?」
「そのうち戻る。まだ回復してないんでな」
回復してないと戻れないのか。っと、魔法陣が光りだした。
「地上では苦労するだろう。気を付けてな」
「ああ、わかった」
「そっちも元気でな」
「ここを出たら、龍眼の示す方に進め。そこでこの世界のことが分かる」
銀龍の言葉を聞いた俺達は頷いた。そして、魔法陣が浮き始めた。
「たっしゃでな~~!」
銀龍の声が聞こえた。この声と共に、俺達は地上に出た。
「ここが地上か。やっと出てこれましたね、先輩」
「そうだな。どれ、さっそく行こうか」
「そうですね。」
そして俺達は歩きだした。龍眼の示す方に向かって。
そして声を合わせて言った。
「「いつか必ず、日本に帰るために」」
(二章終了)
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(今回の容姿の変化)
「真田 鏡」
左の瞳が黄色に、左腕に証の腕輪。
「星菜 大和」
髪が金色に、瞳が紫に、左腕に証の腕輪。
星菜 大和の剣、“ライメイ”を紹介。
ソウエンの色違いバージョン。柄が白く、刀身が金色。
性能もほぼ同じ。属性が“閃光属性”になっただけ。
今回で2章終了。次回3章スタート。