俺、龍と対面する。
「準備完了!さあ行くぞ!」
「さっきからそう言ってるでしょう…」
いざ脱出実行。行くぜい!なんて先輩は言ってる。
「ほんじゃ走りますよ」
「分かった。フフ、強くなった我らの力を味あわせてやる!」
「はいはい。その台詞は本人の前で言いましょうね~っと」
先輩がさっきからおなじこと言ってるからうんざりしてきた。
俺はまず、荷物をストレージにしまう。
ストレージとはゲームとかで言うアイテムポーチである。
スキルの一つで、最初が「ポーチ」、次が「パック」、
最後が「ストレージ」だ。進化すると容量が増える。
「ストレージ」になると収納された物がリスト化されたり、
希少価値や、名前を表示してくれる。
一度収納して、ロックを掛けておくこともできる。
ロックとは盗み防止のことだ。
たとえ盗まれても、盗んだ奴ごとアイテムを呼び戻せる。
おかげで物を無くすことは一度も無かった。
ストレージは無限にアイテムをしまえる。だから荷物は少ない。
服や剣は装備してるけどね。カッコつけたいから。
ちなみに全部ストレージでロックしている。
先輩も自分のストレージでロックを掛けてる。
「先輩行きますよ~」
「ああ、分かった」
俺はソウエンを鞘に入れて、鞘につけてるベルトを腰に巻きつける。
先輩も自分の武器、ライメイを腰の鞘にしまう。
地図を持って、最短ルートを確認。そして荷物を確認。
「最短ルートはここです」
「よし。じゃあカガミ、行くぞ!」
先輩が走り出した。同時に俺も走る。
―――そして到着。
ここまで3km、そして3秒。
おかしいと思う人もいるだろう。だが現実だ。
これでもかなり押さえてるほうだ。全力ならもっと速い。
俺は目の前の巨大な扉に手をあてる。
「それじゃあ開けますよ」
「ああ、今日でここともおさらばだ」
「死亡フラグですか?」
「違う!」
先輩もこんな会話してるけどメッチャ緊張してる。
まあ、いくらか表情が柔らかくなってきたね。
俺は扉をあける。すると目の前にいたのは巨大なドラゴン。
かつて俺を叩き落としたドラゴンロードだ。
イフから聞いた名前だと確か、「銀龍ヴェルガンク」だったかね。
銀の固い鱗にアメジストのような目が特徴のドラゴンだ。
「よう、俺のことおぼえてるか?」
俺は銀龍に声をかける。するとヴェルガンクが語りかけてきた。
『ああ、覚えてるさ人間。1年前にワシがここに落とした奴だな?』
「正解。ひさしぶりだな」
『フン、ワシからしたら1年なんて大した年月でもない』
「そうかよ」
俺はふてくされたされた感じで言う。
銀龍はそんな俺に微笑むと、先輩のほうに顔を向ける。
『ああ。…なんだお前もいたのか小娘』
「なんだとはなんだ」
『いや、コイツの1か月前に落としたんで死んだかと思ってな』
「生きとるわい!回復魔法のおかげでな!」
『再生者だったか?ならば納得だな』
銀龍がうなずく。この二人面白いな。
「本題いいか?」
『ああ、ここから出たいんだろう?』
野郎すべて察してやがる。
「話が早いな。ダンジョンのボスを倒せば出れるんだろ?」
『正解だ。あの精霊が教えたのか?』
「イフを知ってんのか?」
『こっちが知ってるだけさ。かなり有名な剣士だったよ』
へえ、そうなのか。イフって過去について話さないんだよな。
『ふむ。引き籠もってんのか。まあ、主が強くなったらな』
「どういう意味だコラ」
『そのまんまの意味さ。精霊は常に主より強くなきゃいけないんだよ』
めんどくせえな、精霊って。
「フーン。で?戦うのか?戦わないのか?」
俺が聞く。戦わないなら出ていけないから困る。
『戦うさ。挑戦者はいつでも待ってんだ』
「そうかい。んじゃ始めようぜ」
「ああ、私も一年前の恨みを晴らさなくてはな」
俺はソウエン、先輩はライメイを鞘から抜く。
青と金の二つのバスタードソードが銀龍からの光を反射する。
俺達と銀龍は互いに構える。
「後悔すんなよ」
「私と鏡の力、思い知れ!」
『フン、どんなに強くなってもたった二人に負けるワシではない』
互いに睨みあう。そして、どこかで水が落ちたのが聞こえた。
それが勝負開始の合図だった。
「「『行くぞ!!!』」」
俺達はそう叫んで、戦闘を開始した。