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ハッピーエンドは君に託した

作者: 喜悦楽壊

前略

馬鹿は死ななきゃ治らないというが、一回死んで異世界転生したというのに君は変わらずに馬鹿だったな。

私はちゃんと前世の経験を踏まえたうえで生きてきたというのに。

大体どこの鈍感ハーレム野郎だと言わんばかりに美少女達に囲まれていたのに、君ときたら誰にも手を出さずに短い一生を終えてくれた。

おかげで私は君の死後、彼女達の面倒をみなければならなくなってしまったのだぞ。実に面倒だった。

生きた抜け殻を4体も世話をしたのだぞ。

それこそ卒業・就職・結婚・出産その他諸々までをだ。

結婚に関してはどうにか相性の良さそうな男を探し出して引き合わせてこぎつけせたのだよ?

私はどこのマザーだと常常思っていたし今も思っている。

まあ途中から彼女達が自立したのが救いだがな。


さて、今生において君は素晴らしい功績を残してくれた。

腹立つくらい。

少しはラノベよろしくなるべく目立たないように努力する事も出来たであろうに、君ときたら6才で村を襲ってきたキマイラを倒し? 12才で冒険者デビューしたと思えば3年も経たずに頂点まで登り詰め? 果ては魔族の大軍が押し寄せたという噂を聞いて最前線で血祭りパーティーだと?

少しは自重という言葉を覚え意味を理解したらどうかね。

君のせいで私は後始末の書類が仕事部屋の天井に到達したよ。おかしいものだ。部屋の柱は7mはあるというのに。

最初はギルド登録の申請承認、昇格手続きの最終判断。

これはまだいい。私が好き好んでギルドのトップになったからな。

だがね、大戦での補給部隊と君の部隊の編成、費用の捻出、またその他諸々で頭パンクさせながら頑張ったのは労ってくれてもいいのだよ諸君ら。

何故にキラキラした眼差しで見るだけなのかね!?

少しは手伝いたまえよ!

まあ、そんなこんなで君は英雄になった訳だ。


愚痴が長くなるから切った訳じゃないからな。

愚痴が長くなるから切った訳じゃないからな。


英雄となった君には縁談が舞い込むどころか群れで飛び込んできた。

一々釣書と情報を擦り合わせて少しはマシなのを選ぼうと

捌いていたらだ、幼馴染の女の子と結婚しただと?

私が私利私欲の欲望に塗れた阿呆共とにこやかに騙し合いをしている最中に、だ。

幸いにして実に優秀である副長が止めてくれなかったら、ありったけの武器を持って貴様を殺しに行くところだったよ。




さあ、これからが本題だ。

君にギルド長として最初で最後の指名クエストを出そう。



『世界を救え』



何、簡単なことだ。世界は終焉を迎えようとしている。

魔王の人間界への侵略、出生率の緩やかな低下、上級自然素材の入手率の低下。

何故長らく沈黙していた魔王が侵略などという愚行に出たか。世界の終焉を感じ取ったからだよ。

魔物は自然から生まれる生物、よって異変があれば一番に感じる。

最も力のある魔王なら尚のこと。

地震等の自然災害時に野生動物が逃げ出すことがあるだろう? それと同じことさ。

少なくとも彼等の生存領域よりは安全である所に逃げようとした。 それが人間界だ。


人類も長い間に消えかけていた生存本能がそれを察知したのかね、但し本能は諦めたのさ。

世界が終わるなら次を残しても意味がない。

だから子供が減っている。


自然素材は分かり易い。

今まで通り生成するだけの力がもうこの世界に無くなった。



このままでは世界は終焉を迎えてしまう。

けれども不必要に慌てることは無い。私の計算を当てにしてくれるならあと五年は猶予がある。

では、自重を懐かしき我らが前世に置き去りにしてきた君にもう一度言おう。


『世界を救え』


ありとあらゆる手段を持って、使えるものは何であろうと使って、死に物狂いで、五年以内に世界を救うのだよ。

前回、君は人類を救ったが今回は規模が違う。

今回は人類以外の全ての生物を一つ残らずだ。

祈るだけの馬鹿共の尻を蹴り飛ばし、やけくそになって暴れる愚か者を殴り飛ばし、逃げようとする阿呆共をふん縛り、人類の総力と君の(何度でも言うが)自重しない力と知識で救いたまえ。




私は産まれてから今までずっと患っていてね、この歳まで生きてこられたのが不思議なくらいだ。

神とやらが存在するとしたら君の尻拭いをさせる為だけにここまで生かしたのかもしれない。

だがそろそろ火が尽きる。

君の舞台での私の出番は終え、楽屋に戻る時間だ。

カーテンコールは無い。大勢の観客を前に感慨深くなることは楽屋までの道程で充分。

そして、もしかしたら、荷物を持ち出口へ向かい、また新たな舞台へと行くのかもしれない。


『世界の希望』たる者よ、ハッピーエンドは君に託した。







「さて、次の舞台に君は来ないでくれたまえよ? 面倒だからな」

「やなこった。さっさと舞台から降りようとするお前を留めておくのが俺の役目だからな」

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