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落下少女の懊悩  作者: 蒼のつばさ
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クロネ…

人は、「失」を求める生き物だ。

「どしたの?機嫌悪そうだけど。なにかあった?」

「ん、そう見える?」

「うん!いつもより殺気が満ち溢れてるよ」

 そんな笑顔で言いますか。これでもいつも通りにしていたんだが…

「そう?」

 にこっ。

「うん、笑顔が一番だね!」

 俺の顔を見た柊はそう言う。

「ぎこちないけど」

 付け足しでそう言う。

「最後の一言はいらんだろ」

「おっと、失敬失敬」




 5時間目終了

「あ、今日来れそう?」

 廊下で柊がそう言ってきた。

「気分次第」

 柊は女子サッカー部に所属していて、部活動が終わっても遅くまで練習しているのだ。

 俺は中学までサッカーをしていたが、高校からはしていない。サッカー経験者として、遅くまで練習している柊にたまに練習に付き添われるのだ。

 まあ、俺は部活には所属していないため、遅くまで学校に残ることなんてほとんどない。

「そっか、来てくれるとうれしいな」

「そう願ってろ。多分行けないが」

「…そっか」




 一方、亮介家

「ぶー、つまんない!」

 お疲れで落下少女は寝てしまい、遊び相手がいなくなってしまったクロネ。

「亮介、今何やってるんだろ」



「ヘックシ!」

「風邪?」

「どうだろ」


「ははーん、あれは彼女だな」

 人影のない所からのぞき見するクロネ。

 クロネは影があればどこにでもワープ出来る能力がある。

「いたずらしよ」



「でさ…」

「…え!?」

 体が勝手に動き、柊をお姫様抱っこをしていた。

「え、なに?おおおろしてよ」

 周りの目線が俺たちの方に向く。

「おろしたいけど…」

 体が動かん。くそ、あいつめ…

 クロネがてへぺろしている姿が目に浮かぶ。よし、晩御飯抜きだな。

 と、そんなことしているうちに、教室へとは逆方向に俺は走り出した。

「ちょ!新婚さんごっこはもういいよ!」

 照れながらそう言う。

「したくてやってない!」

 が、急に体が自由になる。足が急に止まる。


 慣性の法則…!


 上半身が前に倒れる。

 …真正面に倒れたから顔が痛ぇ。

 …

 柊がいない。

 前を見ると下り階段があった。

 …

 恐る恐る階段の先を見る。

 そこには、柊が倒れていた。

「!!」




「かすり傷だけね」

「そう、ですか」

 保健室で柊は手当をしてもらった。

「ったく、階段で転んだって、よくかすり傷で済んだわね」

「えへへ、運が良かったんですよ~」

「本当、運が良すぎる。次からは気をつけるのよ」

「はーい」

「亮介も、ここまで運んできてくれてありがと」

「あ、はい…」



 保健室を出た俺は、柊を置いて走って教室に向かった。

 柊は何か言いかけたような気もするが、聞いたら何かを失う様な気がした。


 教室に入ると、先ほどの行動が噂となり、ヒソヒソと、変な視線が俺に襲いかかる。ああ、気持ち悪い。


 6時間目、授業を聞く気力は皆無だった。

 ペンを握った手は動きそうにもなく、右隣にいる柊とは逆の方、ずっと空を見ていた。

 自分の心の天気とは真逆の晴天。空の眩しさを眺めているうちに自分がどんどん汚れていくような気がした。何かが体から抜け落ちていくような気がした。何かってなんだろう。

 黒板に書いてあることをノートに書き写さないことに心配した柊は、何度も「書き写そ?」と声を掛けてくれたものの、俺は「ああ」と答え、空を見続けた。


 授業が終わると、ノートが字で埋まっていた。書き写さない俺を心配した柊が書いてくれたんだろう。字でわかった。が、お礼を言おうとしても、声をかけていいのか?と自問する。そうなると、せっかく開いた口が閉ざされる。




 清掃の時間、この時も、学校全体的に嫌な雰囲気が行き渡っていた。嫌な視線が槍のように体に突き刺さり、もう、何もかもが嫌になった。






 ああ、消えないかな。こんな世界。





 ふとそう思った。

 喉の下あたりまで嘔吐物が来ているみたいだ。学校が終わったらすぐ帰ろう。

 そしてしばらく学校を休もう。

 いや、いっそ学校行くのやめようかな。


 今までざわついていた教室が急に静かになった。嫌な視線もなくなり、やや気分がスッキリした。

「?」

 改めて前を見ると、自分以外の生徒が倒れていた。いや、自分以外の人間が。

 廊下に出ると皆が倒れていた。外でもだ。

 なんだ?何が起こっているんだ?

 ああ、夢だ。夢オチだよ。変に自分を暗くしすぎたからだ。

 頬をつねる。

 …痛ぇ。

 状況は変わらなかった。

 近くにいた人が生きているかどうか確かめる。

「!」

 驚くほど心拍数がゆっくりだった。いや、死んでいるのと変わりない。

 なんで俺だけ生きてるんだ!?

「あれ、なんで生きてんの?」

 後ろから声が聞こえた。

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