うわ、また新キャラですか
人は何かしら興味をひかれる生き物だ
夕食を終え片付けを済ませ、みんなでマリコカートをやっていた時、3周目に入り、俺が1位になっていたいたにもかかわらずだ、チャイムが鳴った。
「…ちょっと待ってろよ」
俺はメニュー画面に切り替え、一旦勝負は一時停止。
チャイムが2回連続でなる。「はいはーいまでまーす」と少々ふざけながら玄関の戸を開ける。そこには黒のワンピースを着た肌が薄気味悪いほど白い女性がいた。
「…どちら様でしょうか?」
「ああ、用があるのはあなたではなく、ここにいるものに用がありまして」
「…母にですか?」
「もう、とぼけなくていいですよ。シャロワさんにですよ」
「!」
…敵か?こいつ。家に入れるべきかそうでないか…
「…どうぞ」
まあ、敵だったら焼けばいい話か。
リビングにその女性を連れて行く。入ると、メニュー画面にしたはずのマリコカーがなぜか再開され、俺が最下位になっていた。まあ、犯人はあいつだな。あとで殺す…そう思って落下少女を睨む。殺気に気づいた落下少女はこちらを振り向くと、俺ではなく黒服の女性に反応し、「クロネ!」と言って黒服に飛びついた。
「久しぶり」
「え、何、知り合い?」俺は執事に聞く。
「知り合いもなにも、この方は闇の国の女王様でございますぞ」
「え、まじか」
だから名前がクロネとか?まさか…
「そういえば、先ほどから気になっていたのですが、その方は何者なのですか?」
そう言って俺を指す。
「何者って、この星のものだ」
「へえ、この星の生物は魔法も使えるんですか」
ああ、そういうこと。って、生物ってなんだ。人間って言え。
「あ、この方にはいろいろ事情がありまして…説明するにもどう説明すれば…」
落下少女がフォローする。
「へぇ…」
クロネがやや目を輝かせてこちらに近づき、俺の腕にしがみつく。
「私、この方に興味が湧きました」
うぜぇ…
「で、シャロワさん。例の件はどうなりました?」
「あ、あの…」
そう言いて俺を指さす。え、何?
「この方にはまだ話されてなかったのですか」
「え、何?例の件ってなんだよ?」
話についていけないんですけど~
「この星を征服する事ですが?」
さらっとクロネがそう言う。言われた落下少女は顔を下に向ける。
「…本当のことなのか?」
執事にそう聞く。
「本当でございます」
うわーまんまと騙されたってわけか。馬鹿だなー俺。
「亮介さん」
落下少女が深刻そうな顔をしながら俺を呼ぶ。
「…」
無視する。
「え、ちょ、返事してください!」焦った顔になる。あ、これはドッキリだな。
「なんだよ」
「…あなたが最初の犠牲者です」
焦った顔から真剣な顔になる。さて、こっからどんな仕掛けを繰り出すんだろうな、楽しみだわ。
「クロネ」
「はい」
そういったクロネは俺の首筋を噛み付いた。結構深く。
「イテエエエエ!!!」
俺は3人と距離をおく。
「逃げても無駄ですよ?」
「はあ?」
急にめまいが襲いかかった。
「私の歯には毒がありまして、10秒あれば全身に毒が回ります」
「嘘…だ…」
他に何か言い残すことがあっただろう。が、あまりにも急すぎて頭が追いつけていなかったため、その言葉しか出なっかった。そして俺は息を引き取った。
薄い意識の中、どこからか笑い声が響いていた。なんだろうと目を開けるとそこには落下少女と執事とクロネが楽しそうにしゃべっている姿があった。あれ?
「あ、気づきましたか」
落下少女が気づく。「せーの」と2人につぶやき、
「「「ドッキリ大成功ー!!」」」
と3人揃ってそう言ったのだ。ああ、良かった、ドッキリで。
「でもクロネ、やりすぎではないですか?」
落下少女の言うとおり、こんな手の込んだドッキリは初めてだ。
「ああ、彼の魔法なら私の毒を焼却するかなと思ったんですが…そこまで頭は回らなかったようですね」
俺がバカみたいな言い方しやがって…元々魔法使いじゃないんだよ、てめえらと違ってなあ!
「お詫びに、コリほぐしの毒も入れておいた」
「便利な毒だな」
そう言って首を触る。…あれ?傷跡がない。ああ、治してくれたのか。
その夜
明日も学校だし、そろそろ寝るか…
朝
「…んあ?」
目が覚めると、目の前にはクロネがいた。
「な!?」
「…んん?ああ、おはよう」
「何がおはようだ!早くこっから出ろ!」
「…この星の朝には弱いんだぁ」
そう言って布団に潜り込む。ああ、闇の国の女王とか言ってたな。
「それでも、ここから出ろ!」
「…へえ、私に命令するんだ。女王だよ?私、女王様だよ?」
「この星では一般市民に変わりないだろうが」
「ぐっ…」
ああ、こいつらといると疲れる。
「まあ、話は変わるけど、私は君にとても興味がある」
「なんだいきなり」
「君のこと、もっと知りたいんだ」
そう右耳に囁かれ、ビクッとなる。右耳は弱いんですー。
さらに、上半身を服の下からいやらしく触ってくる。こいつ…
「!?」
体が、動かない!?
「気づいた?君が寝ている間に神経毒を入れさせてもらったよ。私の思うように体を動かせるんだ」
くそ、いつの間に…
「君の体…結構たくましい…」
まだ右耳に囁く。うう、もうだめだぁ。
その時、あることを思い出した。
「彼の魔法なら私の毒を焼却するかなと思ったんですが…そこまで頭は回らなかったようですね」
血液中に高温の熱を全身に伝えると、体が楽になった。
未だに上半身を触って興奮しているクロネにげんこつをし、布団から出た。
「そういや、昨日とは違って敬語やめたな」
「あ、はい、あなたと慣れ親しむには堅苦しいことはやめようと」
「へえ、まあ、どっちかというとそっちのほうが接しやすいな」
今朝はクロネの朝食抜きの刑をクロネに言い下し、家を出た。が、どうせ落下少女がクロネに朝食を分け与えるであろうと家を出て気づいた。まあ、いっか。
しかし、最近はイライラすることばかりだ。
そういえば皆さん、「いらいら」漢字で書けますか?
正解は「苛々」。
最近、このような漢字がひらがなやカタカナで簡略されてきた時代にある。このままいけば「俺の妹は漢字が読める」 だっけかの世界になるのではないかと心配になる。ああ、恐ろしい恐ろしい。
「おはよう!」
「ういっす」