王子(変態)登場
人は裏の顔が見えないほど恐ろしい
「どう?」
「おう、似合ってる」
「さっきのとどっちがいい?」
「ん~、今着てるやつかな」
「そう、じゃあこれにする!」
「おう」
このように、審査員役をやらされたり、パフェ食べる時にあーんされたり仕返したりして、財布の中身がピンチになった。
2日後
椅子に深く座り、文庫本を読む。空になったティーカップに執事が紅茶(午前の紅茶 ¥97+税)を注ぐ。そして俺は、紅茶を1口飲む。フランスらへんのお嬢様、いや、王子様か。そんな気分だ。
「悪くない」
パリン!!
窓ガラスが割れたと同時に人が入ってきた。
「シャロワさぐはァ!!」
入ってきた人物が何か言いかけたような気がするが、気のせいだろう。俺は構わず入ってきた人を思いっきり殴った。
「お前の国では入口でもないとこから入るのが常識なのか?」執事に念のため聞く。
「とんでもない」と笑いながら答える。お前が答える権利はないはずだが…
「ぐぬぬ…まさか王子を殴るような人間がいたとはね…」よろめきながらも立ち上がる。よく気絶しなかったなぁ。
「大丈夫か?顎の骨とか折れてない?」
「それは大丈夫、体の丈夫さには自信があるんだ」
そうか、よかった(な)。
「王子?」
このアホそうなのかが?
「いえ、違います」
「なんだよ、紛らわしい」やっぱ自称だったか。仮に王子だったら国が滅んだつじつまが合う。
「何を言っている、僕が王子じゃなかったら誰が王子だと言うんだい?」
「現王子などございません」
…
「なにを言っている!?王子がいなかったら国が成立しないだろう?」
「そんなことありません。実際、王子なしで1年間やり通しましたし」
「なん、だと!?」
王子がいなかったということは、その分王女にも仕事が加算されるわけか。大変だったな。
「待て、なんでそいつが王子になれなかったんだ?それを話せば自称王子も納得するだろ」
「自称には触れないでおこう…まあ、確かにそれを話してくれ」
異世界人のくせに自称という日本語もわかるのか。しかしこいつらの日本語に対しての適応力は凄まじいよな。これも魔法なのだろうか?あとで聞いておこう。
「確かにあなたは頭も良い、運動神経も優れていますし、魔法もなかなか良いものを持たれています」
「「じゃあ別に王子でもいいじゃないか」」
「いえ、問題が…」
俺はここ、リビングに1人減っていることに気づいた。
「あれ?肝心のお嬢様がいねーぞ」
コイツが来る前までは一生にお菓子を食っていたはずなんだが…
「隠れていても無駄だよ、シャロワさん!」
急に自称王子の姿が消えた。
「…どこいった」
すると、落下少女が「ひええぇー!」と泣きながらリビングから出てきて俺の方に
飛びついてきた。
「ど、どうした…っておい!」
すかさず自称王子が飛びついてくる。
ところを俺は飲みかけの紅茶を王子の顔にぶちかました。
「…正気に戻ったか?」
「何を…僕はいつでも正気であり平常心だ」
もはや変態だな。
「念のため聞くが、コイツが王子になれなかった理由は…」
「王女様の承諾が無かったからでございます」
王子、王女は互いに仲がよくないと国をうまくまとめることが難しくなる。
「以前、王女様のベットに待ち伏せをしていたことや、お風呂にまで待ち伏せしていたことが…」
「そりゃコイツも嫌になるわ」
俺は未だに俺の背中にすすり泣いている落下少女の頭を撫でた。
「ということで、出ていけ、今すぐに出ていけ」
「ちょ、これから僕はどうすればいいんだ!?ご飯は?寝る場所は?」
「そこらの草でも食ってろ」
強引にも自称王子をこの家から追い出した。
「ったく、どいつもこいつも…」
ガチンと厳重に二重ロックを掛け、リビングに戻る。が、玄関を厳重に警戒したところでそのことが無駄なことはリビングに戻って気づいた。窓ガラスが割れていた。幸い、王子はそこまで頭が回らなかったらしく、リビングにあいつの姿はなかった。俺はあいつが来る前に割れた窓ガラスを拾い集め、ダンボールで塞ぐ応急処置を行った。
「そういえば、あいつの魔法ってなんなんだ?」
ようやくソファにゆっくりできた俺は肝心なことを執事に聞いた。
「あの方は瞬間移動魔法使いですな」
なぜか気まずそうに話す。
「へー、その魔法は向こうでは便利なのか?さっきなかなか良いもの持ってるとか言ってたけど」
「あーあれは…いえ、そのことは忘れてくだされ」暗い顔をしながら執事が話す。
「気になるが、まあいいか」
改めて紅茶を飲む。
「しかし、彼の瞬間魔法には一つ欠点がございまして…」
「なんじゃそりゃ」
「移動先が王女様の近くでないとうまくいかない仕組みになったございまして…」
「なんじゃそりゃ…てか、その魔法持ってる時点で王子候補から外せよ」
「…他にあんなに優れている人材がいなかったんですよ」
「…本当に大丈夫なのか?お前の国」
ストクル(落下少女達が住んでいた星)には、落下少女の住んでいる国【木の国】以外にも【火の国】【水の国】【光の国】【闇の国】の計5つの国があることが判明。(今回はそれぞれの国の詳細な名前は略)。それぞれの国の強さを比べると、水は火に強く、火は木に強く、木は水に強い。光と闇は敵対関係に。らしい。
今回の騒動に関しては、火は木に対して有利だったため狙ったのだろうか。が、どの国も貿易関係にあり、多少の喧嘩はあっても常に仲が良かったらしい。
「らしい、だろ?表向きには仲良さそうに見えるけど、裏では『おい、あの国の取引屋の顔見たか?鼻毛出てたぜwww』とか言って挑発してたりしてるかもしれないぞ?」
「そ、そうなのでしょうか?」落ち込んでそう言う。
「例えだ例え。そういや、貿易関係て言ってたよな。主に何を輸送してんだ?」
「私の国では薬品を主に輸送源となっております」
「へーさすが木の国」
D市 路地裏
「な、何だお前!?」
「なんだって、仕掛けてきたのはそちらのほうでしょう」
そう言って王子はその男の首を切った。
「…もっと手応えのある奴はいないのかぁ?」
この日の路地裏の死体(11体)が見つかるのは次の日のことだった。