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神に攫われた男  作者: 平澤間宮
人間から創造主へ
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2

そんな訳で俺は10年間子供達を借りるため、山の上に家を立てた。木造で、大体六畳の部屋が4つある位の家だ。一人一部屋に、あとは風呂場と台所と居間。外には小屋と井戸がある。


「ほら、ルブ、カーラ、サラマン並べ」


俺が新築の家をバックに促せば子供たちは緊張しつつも言われた通り素早く横に並んだ。右から呼ばれた順番に並び、期待、興奮値も順番通りらしい。



「えーっと、とりあえず、これがお前達……ていうか俺達の新居だ。最低限の衣食住は保証するから心配するな。月に一回か二回は家に帰ってもいいし」


向こうの世界で言うとまだ三人とも小学生だ。村が見下ろせる場所に建てたとはいえ知らない場所で他人と暮らすなんて淋しくないわけがない。


「あー……そうだな、まずは部屋割りをするか。着いてきてくれ、荷物を持ってな」


俺は三人を気にしているのがばれないようにさっさと家に上がった。森にバリアを貼る前の時代にすぐ逃げられるよう靴を履いたまま過ごしていた名残で家にはそのまま入る。


「この一番入り口に近いのは俺の部屋だ。札がついてるだろ? 他に3箇所白紙の札がかかってる部屋があるから話し合って決めてくれ」

「あの、創造主様」


その前に居間を見せるか、と思い俺が足を進めると、村長の孫のルブが興奮冷めやらぬという顔で声をかけてきた。手には布袋が一つ。まだまだ縫製工場が小さい為貴重である着替えだけを持ってくるように言っていたが、些か荷物が少な過ぎやしないか? 他の二人…特に紅一点のカーラなんて袋が三つにリュックを一つ背負っている。


「そこに書かれているのは創造主様のお名前ですか?」

「あぁ、そうだけど」


村雨聡太。漢字も広めてたけど、この世界の人間は皆名前がカタカナだからなんとな浮くな。もしかしたら読めなかっただろうか。聡太の聡は少し難しいしな。


「むらさめそうた、って読むんだ。聡太が名前」

「では、聡太様とお呼びしてよろしいですか?」


んん?


「ルブ、こういう場合は師匠って呼ぶんじゃないのか?」

「あぁ、それも捨てがたいなぁ!」

「いいわね、私は創造主様の事お師匠様って呼ぶ!」


……なんと言うか、まぁ仲が良いのはいい事だよな。小さな村だし皆顔見知りなのは当たり前か。


「まぁ呼び名は何でもいいけど、とりあえず今日中に荷物は片付けるように。タンスとかベッドはそろえてあるから」

「「「はーい!」」」


俺は元気のいいちびっ子を廊下に置いて、逃げるように居間へ駆け込んだ。さっきまで殊勝な感じだったのにこの変わり様はなんなんだ。特にカーラ。お前ぬいぐるみ抱っこして俯いてたじゃんか!


「お師匠?」


いつの間に来てたのかサラマンが垂れ目をさらに垂らして俺の顔を覗き込んだ。この子の荷物はリュックと袋が一つずつ。八百屋の息子だが野菜が大嫌いらしい。たまに売り物のかぼちゃやキャベツなんかをくすねては弓の練習のため的にしたんだとか。それを村長がたまに見てたわけだ。止めろよ。


「あぁ、えっと、ここが居間だ。すぐ隣の台所で作ったものはここで食べる」


家具は流し台に、魔石使用の冷蔵庫、それから食器棚が一つあるだけの小さな台所だ。魔石はこの世界での電気みたいなもので、専用のランタンにいれれば明かりとして使えるが、電源がないから消すにはこれまた専用の蓋をするか、厚手の布で覆ったり箱か何かに仕舞うしかない。

冷蔵庫に至ってはただ木をくり抜いただけの箱だ。中に冷気の魔石……水とか氷属性といった感じの物を入れてある。


今のところニカしか作れないが案を出したのは俺だからそのうち生み出せるんじゃないだろうか。


「あの、誰かがご飯、作るんですか? お師匠様なら一瞬で生み出せるんじゃ……?」


俺はカーラの質問に答えるためにも三人に椅子を勧めた。2席ずつテーブルを挟む形で向かい合う。俺の隣にはルブが座った。


「皆がここに来た理由は英雄になるためだ。それも一発屋とか言われるような生半可なものじゃなく、後世まで語り継がれるようなすごい英雄だ」


俺の言葉に三人は真面目な顔でこくりと頷いた。大体ルブは剣士、カーラは魔術師、サラマンは狩人になるのだと漠然と思っていることだろう。確かにそれは間違っていないが、しかしそれでは完璧な答えになっていない。


「これからの訓練の内容は、ルブが剣技と武器作り、カーラは魔術と料理、サラマンは弓と森の生態調べだ。まずは家にある本で各自自学して、質問があったら俺の部屋に来い」


最後に微笑んでやると三人はぽかんとちょっと間抜けな顔をした。質問はと聞けばおずおずとカーラが手を上げる。


「料理とかは英雄になるのに必要ですか……?」

「いい質問だな、答えはイエスだ。お前達には三人いれば一国を築けるレベルになってもらうつもりだから、教本の中にはそういう類のものも混ざってる。あぁそうだ、魔術とかに関してはもちろん実技もやるから安心してくれ」


むしろそっちがメインだからな。とりあえず明日は三人まとめて実践だ。

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