三人の子供
村に帰った俺はまず村長の家に向かった。さすがにマメで人好きな創造主でも住人一人一人に説明して歩く訳にはいかない。
「かくかくしかじかなんだけど、この村には孤児とかいないよね」
祠でのニカとの話を大分端折りながら単刀直入にそう話すが、さすが付き合いが長いだけあって動じない。俺は村長の奥さんが入れてくれたお茶を飲みながらゆっくり言葉を待った。
「うーむ、我が村は創造主殿がいらっしゃってからは安泰ですからのぅ」
この80歳近い村長も俺が来た当初は甘やかされて育ったおっさんだった。それが今じゃこんなにも丸い。俺はこの人といる時が一番時の流れを感じる。
「あるいはやる気溢れる子供でもいいんだけど、さすがに居ないかな。平和な世界だし、好き好んで教育されたい子なんて」
文字がある程度読めて足し算引き算出来る所までを義務としているけど、体育とかはしていないからこの世界の人は総じて運動力がない。何というか、単純な力とかはあるんだけど、回避力がないんだよ。まぁ農作業してる分忍耐力はあると思うけど。
「おや、選ばれるのは才ある子ではないのですかな?」
「あーうん。あるに越したことはないけど、それよりやる気が大事なんだよ。10年で英雄レベルに育てたいから」
すっごいドンくさくて運もなくてあり得ないくらい怖がりじゃなけりゃ、有る程度はニカに調整してもらえる気がするし。
「ならば我が孫はいかがですかな? 先程のジョブでなら、剣士が向いてると思うのですが」
「え、いいの?」
村長の孫って言えば、確か今10歳だったかな。そういえばよくチャンバラしてるのを見かける。
「……うん、俺としては申し分ないけど、いいの? その子の親は?」
「5年前に父母共に病であっさり逝ってしまいまして……孫のルブ自身もどうやら剣が好きみたいでの」
あー、インフルエンザが流行った時な……。あれは大変だった。向こうの世界でしがないバイト店員だった俺にウイルスだとかワクチンだとかの知識があるわけもなく、元々体の弱い人とかは家族の必死の看病の甲斐なく死んでしまったのだ。
「んーじゃあ本人に聞いて大丈夫そうならね。後は魔術師と狩人なんだけど」
「魔術師なら教会の娘のカーラが良いかと。根も真面目ですしなによりあの年で既に回復魔法をレベル3まで使えますからな」
へー、そりゃすごい。全5段階ある魔術を3までとか相当だ。
ついでに言うと一段階目はかすり傷程度、二段階目なら大人が慌てる程度、三段階目なら骨折あるいは出血がやばい程度を治せる。
レベル4と5に至っては瀕死の奴を回復させる事が出来るが、まぁ平和な世界じゃあんまり出番がないから使ったことある人はいないんじゃないだろうか。呪文も一応あるけど俺は使わないし忘れた。
「んじゃ魔術師はカーラで…狩人に相応しい子供にも心当たりある?」
思った以上に眈々と話が進むから思わず全て村長に一任してしまいたくなる。
「そうですのう……あまり子供に弓は触らせませんから……」
「いないならいいよ、そりゃまだ狩とかさせられないだろうしな」
「いえ儂は八百屋のサラマンが良いと思いますが」
いるのかよ。