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神に攫われた男  作者: 平澤間宮
人間から創造主へ
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3

もちろんすぐにはいそうですか、なんて言う訳もなかった。ニカは食べかけの芋を放り出して俺の肩を鷲掴みにするとがくがくと揺さぶりながら半泣きで訳のわからない言葉を叫んだ。


「pjdw@mt”magwu,”d27!?」

「な、なんだよ、何て言ってるんだ」

「;&"|>*tvhusEd5(6@、/:}%>^tgっj!!」


何か必死なのは分かるけど意味は少しも伝わってこない。この世界の言語は俺に合わせて日本語に設定してあるけど、これはなんなんだろう。英語とかフランス語ではないな。別の異世界の言語かあるいは神の言葉なのか。


とにかく泡でも吹くんじゃないかって位取り乱しているニカに引きつつも何とか腕を振りほどき、ついでに地面に転がっているふかし芋も拾い上げ埋葬した。泥まみれだったからさすがにあれば食べられない。森の植物達の栄養分になっておくれ。


「……ごめん、取り乱した」


しばらくするとニカが疲れた様子で呟いた。俺が適当に生み出した椅子にどっこいしょと座ると盛大にため息をつく。


「いや、びっくりはしたけど別にいいよ。ほらお茶」

「あぁありがとう……ん、と。なに? 何で急に死にたいなんて言うの?」


ぽんっと生み出したカモミールティーを飲みつつやっと本題に入る。

まず俺は如何にこの世界が素晴らしいかを説明した。


とりあえず下地が森だったから疑い様もない位自然は豊かだし、そこに1000年位前に海とか川とか湖とか、後は簡単なダンジョン風な洞窟とかも作ったから暇つぶしのアウトドアには事欠かない。

それにニカが元々作ってた魔物と気候に天災で人生のマンネリ化を解消!そこに俺が人語を解するドラゴンとかユニコーンを生み出したので間違っても人間が絶滅することはない。

さらに俺の向こうの世界の知識を総動員したから衣食住は限りなく豊かだ。識字率も高めで20歳までには皆一人で本を読むレベルではある。


もう無いのはテレビとか車とかネット位だろう。


「で? そんな素敵な世界を作っておいて何で死にたいの」

「分んないのかニカ。もうこの世界で俺がやることはないんだよ。ゲームクリアなの。完結。ハッピーエンド。後は緩やかに進歩してくだけだから俺は必要ないんだよ」


実際今だって畑の様子チラ見した後は子供たちと遊んだりしてるだけだ。食事を必要としないから金を稼ぐ必要もないし、村は2、3個作ってあるから後は自然に増えるだろう。


「まぁ最後にでかい町一つと俺の後継者みたいな奴は育てようと思ってるけど」

「後継者?」

「うん、強そうな子供に戦い方を教えるんだ。言わば英雄だな。魔物が森から出てきちゃったりした時に指揮を取れる奴がいた方がいいだろ」


ニカはなるほどと頷きつつもやはり気乗りはしないらしい。神なんだから人一人殺す位じゃ動じないはずだけど、まぁ世界の云々とかを話せる奴がいなくなるのは寂しいんだろう。俺はお茶菓子にクッキーを生み出してやった。ニカはこういう娯楽的なものに疎いからいつも喜喜として食べる。


「うーんいや、君の後継者がいるなら世界は安心だろうけど…んーまぁ、良しとしようかな? 自殺になるけど」

「え、自殺?」


神様なんだからこう、手を翳したら眠るように体が重くなって魂が抜けるとかないのか。何だ自殺って。急に生々しいな。


「ほら、君って不老不死でしょ。他人からは殺されないんだよ」

「まじか」

「しかも回復が早いから一発で仕留めなきゃだめ」


仕留めるって……。

まぁ一瞬で死ぬなら痛みとかもあんまりなさそうだし、ギロチンで生み出せば大丈夫だろう。……さらに生々しくなったが。


「じゃあそうだな、後継者は三人位かな。剣士に魔術師に狩人か? うん、10年あればある程度育つだろ」

「そう、分かった。決めたら見せに来て、才能をあげるから」

「あぁ、じゃあ明日か明後日にはまた来るよ」


まぁ10年なんてあっという間だろう。俺は最後にお茶のお代わりなんかを生み出すと意気揚々と祠を後にした。


「あ、豊作頼み忘れた」

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