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神に攫われた男  作者: 平澤間宮
人間から創造主へ
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……懐かしい夢を見た。確かあの後手の主はニカっていう異世界の神様だって判明してギャン泣きした気がする。脳みそキャパオーバーだった。異世界なにそれ怖い。創造主なにそれ面倒くさい。


簡単に言ってしまうとニカの管理する世界を代わりに作ってくれって話だったんだけど、まぁとりあえず断るよな。詐欺とか振り切るレベルで怪しいし、得がなんにもないし。

でもなんだかんだ色々理由付けられて結局この世界に来て1000年位がたった。こっちとあっちとでは時間の流れが違うらしくて俺がギャン泣きしている間に100年位たってたんだったかな。それなら帰っても居場所がないし文明にもついていけないし、って渋々納得した気がする。


それで創造主様なんて呼ばれるようになったわけだけど、元々最低限の動植物に、感情、建物や料理の知識はあったから俺はその暮らしを少しずつ豊かにしていっただけで別に難しいことをしたわけではない。とはいえ向こうの世界の歴史と同じような流れで進んでいったわけではなくて、多分に俺の知識が織り込まれた随分と偏った世界だ。今じゃ住民は犬も飼うし食卓には寿司が並ぶ。


「あ、おはようございます創造主様」


もそっと起き上がりあくびをしつつ回想しているとドアを無言で開けてクリーム色の髪に金色の目を持つ女魔術師が挨拶にやってきた。手には綺麗に畳まれた服。多分俺の着替えだろう。


そうだこの世界と向こうの世界とでは大きく違う点が三つある。

まずは魔術の存在。創造主になるにあたって俺にも使えるように改良されたらしいが、簡単に言えばファイアとかそういう戦闘魔法だ。回復も出来るが、間違っても某魔法学園みたいに放棄を動かしたり編み物をするものではない。


それから魔物の存在。魔術師がいるくらいだから創造出来るかもしれないが、でかすぎる熊とか強面の小人とかでろんとしたスライムとかだ。倒しても経験値は溜まらない。溜まるのは経験と皮などを剥ぎ取ったりした場合の荷物だ。

ちなみに創造主の権限で魔物を殲滅とかは出来ない。物理的には可能かもしれないが、そんなことしたら世界が終わるらしい。なんでもこの世界は魔物や人間、または獣や植物などの生き物が死んだ時に弾けるエネルギーで支えているんだとか。なにそれどこの可哀想な魔法少女だよ。契約はしないぞ。


そして最後に神様の存在。いくら1000年たっても見た目が変わらないからって俺は違う。この世界の神はニカっていう金髪金目の中世的な男だ。向こうの世界みたいに不確かで抽象的な存在ではない。コンタクトを取らなくちゃいけない俺以外の人でも会って話ができる位にはフランクな存在だ。とはいえ暇人ではないらしいからアポは取らないといけないが……。


「……おはよう。皆の様子は?」

「はい、大体の人は畑に。子供達は湖で遊んでいます」


俺は受け取ったロングTシャツみたいな服に着替えると、彼女を連れて部屋を出た。この衣服類の知識は俺が与えたものだ。とはいえ俺が想像したものをニカに伝えて実装してもらっただけだけど。

さすがに現代日本を生きた俺に麻袋を切り貼りしただけのものはきつかった。向こうの世界の事をほとんど知らないニカと二人だけだからジャージを作るのに100年近くかかったが、まだまだチュニックみたいなよくあるRPG風な服が主流らしい。俺の数歩後を着いてくる彼女も腰のあたりでふんわりさせたシャツに飾りっぽく紐を一巻きしただけの簡単なものを着ている。


洗面所でぱぱっと顔と口をすっきりさせると一応反りのない木刀みたいな武器を持ってすぐ裏の畑に向かった。森周辺には魔物だけに反応するバリアが貼ってあるから大丈夫だろうけど、備えあれば憂いなしとはよく言うし。まさかクワとか鎌で爺さん婆さんを戦わせるわけにもいかない。ここ50年位居座ってるこの村は相変わらず若者がいない。


「おーい爺さん達ー」


いつも通り汗水垂らして働く皆に挨拶をして回る。実の所世界を安定させるために医者で言うところの健康診断をしているだけなんだけど、日課にしているせいでこの村で俺はすっかりマメな人好き創造主だ。


「おんやー創造主様。今日はいつもより早いですのー」

「うん。今日は神様に会いに行かないといけないから」

「あぁそういうことなら芋を持って行きなされ。家内が弁当に余分につけてよこしましての」


そういうと爺さんの一人は曲がった腰を少し伸ばしてから布に包まったふかし芋を5つくれた。お供え物扱いなのか、手伝いにきていた女性数人が野花をくれる。一気に墓参り臭がしてきたぞ。


「行きながら1つ食べなされ。そうすれば到着してから二人で分けられるじゃろう」

「あぁそうだね、ありがとう。神様には豊作を頼んでおくから」


芋と束になった花を抱えて畑を後にする。


「それじゃ、行ってくるから村は頼んだよ」


数年前に自ら俺の身の周りの世話を買って出た女魔術師にそう言い残すと俺は近くの森の獣道を駆け足で進んでいく。あんまり走る必要に迫られないから忘れてたけど、創造主になるにあたって俺の身体能力は軽くチートレベルになった。今のところ勝てない敵はいないし、不老不死でもあるらしい。まだためしたことはないけど、姿形が20歳のままで小さな怪我なら一瞬で治ることから嘘ではないと思っている。


ちなみにメインの能力はクリエイト。ジャージみたいな「存在は知ってるけど作り方は知らない」ものなんかはどうにかしてニカにイメージを伝えて作ってもらうわけだが、俺が「材料も作り方も知ってる」ものは欲しいと願えばぽんっと出てくる。知ってるといえるレベルがちょっと細かいけど、まぁ仕方ない。今のところ最高傑作と呼べるのは鉛筆だ。材料はおそらく向こうの世界より少なくて簡素なものだろうが書き心地はなかなか良い。


「……あれ、聡太だー久しぶりー」


森の奥にある岩肌むき出しの祠のような所にたどり着くと霧が集まってきて次第にそれが人の形になった。現れたのはこの世界で唯一俺の名前を呼ぶニカだ。神だけあってうるさい位に金髪が眩しい。


「久しぶり。爺さんからふかし芋、女の人達からは花を預かってきたよ」

「わっ、ありがとう!食べ物も久しぶりだーいただきまーす!」


ニカは俺から受け取った花を適当に地面に突き刺すとさっさと芋も奪って大きく開いた口に押し込んでいく。別に花が嫌いな訳でも無類の芋好きって訳でもない。ただ生きるために食事を必要としないぶん食べることがレアであるのと、生け花のセンスが皆無であるだけだ。

俺は自分の分の芋をささっと3個奪ったがニカは何も言わない。


「……むぐっ!」


文句をつけられる前に食べようと口いっぱいに押し込んだのが悪かったのかふかし芋を喉に詰まらせてしまった。ぐえ、苦しい。

しかし幸か不幸か俺はその芋を詰まらせる自分に覚えがあることに気がついた。……デジャヴか? どうやら向こうの世界での体験ではないらしい。


……あぁそうだ。100年位前にも詰まらせたんだ。あの頃は何してたっけな……あっ、村の見回りしてたな。今と同じだ。違うのは多少生活水準が上がったということくらいか。


「……あのさ、ニカ」


俺はなんとか水分を奪って行くふかし芋を飲み込むと、残りの芋を渡しつつピンと背筋を伸ばした。さっきの一瞬のデジャヴで俺の心は決まった。腹を決めるのは遅すぎるくらいだろう。


「俺を、殺してくれないか」



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