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神に攫われた男  作者: 平澤間宮
人間から創造主へ
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始まりの始まり

つい二ヶ月前に働き始めたばかりのバイトに遅刻しそうになった。

車の免許自体は高校三年の終わりころにとれたんだけど、如何せん車がないから中学の入学祝いに祖母が買ってくれた錆びた自転車を漕ぎまくる。電車を使うほどの距離じゃないならバスは?ってみんな思いそうだけど、なんと田舎町って1時間に一本しかないとか当たり前なんだぜ。ふざけてるよな。


まぁ俺の足が後日筋肉痛になろうが、到着と同時にチャリが真っ白な灰になろうがどうでもいい。どうでもいいからバイトにだけは間に合わなくてはならない。また無職にジョブチェンジなんてごめんだ。肩身が狭くてやってられん。


なのに、だ。


「……えっ」


ぎがががっ。とか聞いたこともないような鈍くて耳に突き刺さるような音が聞こえた。どうやら自転車のチェーンが外れたらしい。おい力尽きるのは今じゃないぞ!


頭の中では冷静……いや、ある意味テンパってるのかツッコミが出来るが、どうも日頃の運動不足か行いが祟ってブレーキまでボイコットを起こすという最悪なコンビネーション。ちなみに家を出る前にベルが落っこちた。大変遺憾である。


俺は緩やかな傾斜のせいでスピードの上がる自転車に恐れ、仕方なしに足をペダルから離した。コンクリートに触れるとそのまま踏ん張る。実は昨日買ったばかりの靴を履いてきちゃったから心の中では泣いてるんだけど背に腹は変えられない。無いとは思うが足が逆パカしたら怖いからタンッタンッてちょっとずつ減速をを図る。


「……ちょ、そこの人どいてください!」


このまま突っ走っちゃうと踏切があるなー危ないなーとか考えていると、なんと耳に手を当てた女の人が現れた。どうやらイヤホンをして音楽でも聞いているのか手元の機械にご執心らしい。俺の声なんて一瞬も聞こえていないだろう、近くを歩いていたスーツのサラリーマン風な男がぎょっとした目で俺を見る。


そうだ、そこの女の人に声をかけて!


しかし右側川、左側車道の俺の願い虚しくサラリーマンは一人でひょいっと身軽に道の端へよけた。ちくしょう!俯いたままの女の人と半泣きの俺の距離はもう5mもない。


こうなったら覚悟を決めるしかないか。元はと言えば寝坊して遅刻しそうになった俺が悪いんだ。


俺は男らしく腹を決めるとぐいっとハンドルを捻った。もちろん右にだ。いくら田舎とはいえ車通りはある。今の状態で後ろを確認する余裕はないから迷うことはなかった。ドン、というがズドンというか。とにかく強い衝撃が腕から肩へ、肩から頭へと伝わっていき、気づけば俺は空を見上げていた。


あぁ、やっぱり柵は乗り越えちゃったんだな。でも下は川だし、運が良ければ骨折も免れるんじゃないだろうか。もしかしたら無傷かも。


しかし俺は思い出すべきだったのだ。今朝からずっと不幸続きだった事を。


来るべきさらなる衝撃に耐えるため背筋を伸ばした俺の身体を雲を割って現れた巨人がそっと掴んだ。


……えっ?

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