これからスタート
――――やはり学生にとって春という季節は、心を高ぶらせる季節である。
そしてそれは俺達も例外ではなくて……
「――――あ~あ、学校めんどくさ~」
「……つい一週間前まで楽しんでた人のセリフじゃないよ、それ」
「ま、それも仕方ないじゃん。入学式だし、春だし、スタートだしね」
「入学式はなんで入ってるかわからんけど」
「え~……じゃあ、みんなはめんどくさくないの?」
こんなどうでもいい話をして、だらだらと青春という高校生活を送るのが俺達の日常だ。
「まあまあだね」
俺の幼馴染の横谷千城。目にかからない程度の短髪で、成績は常に俺より上。運動神経もよくて、ルックスもそこそこいい、なんかいらつく奴。そして今時珍しい、一人称を『僕』と呼ぶ。ちなみに背はそんなに高くはない。
「私は楽しいけど」
クラスメイトの桜井遥香。肩を少し越えた長く綺麗な茶髪で、中学3年間はずっと同じクラスだった。男子の中では結構人気のある女子。らしい。成績は俺と同じくらいで運動はそこそこ。まあルックスは悪くないほう。なぜか常に俺達といたがるよくわからない奴。
「俺はふつーだけど」
千城のいとこの西城久司。目にかかってるほど長い髪で、……一言で言うとチャラい。成績はふつーに悪い。同じ学校に通うのは初めてだが、小中のときになんどか遊んだことがあり、仲はいいほう。あと馬鹿。
「みんなはいいよね。人付き合いが上手くてさ、俺なんかそーゆーの苦手だし」
そして俺――――狩野昂汰を含むこの4人で、後3年間の青春を躓き転びながら謳歌していく。
***
――――キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り終わると日直の合図で礼をし、この日の授業は全て終わりを告げた。
それと同時に、
「――――ねえねえ!来週のテスト、どうする?ま、こぉはど~っせ勉強しないんだろうけど」
「当たり前だろ。そんなのめんどい」
――――俺達の放課後が始まった。
「遥香、君は頑張って俺の点数を越しなさい。中2の初めから数点差で負けてるでしょ」
「なによ!そんなことないもん!今回はこぉより10点多くとってみせるから!」
と、遥香は頬を膨らませた。
ちなみに『こぉ』とは俺のあだ名みたいなものだ。そう呼んでるのは遥香だけだけど……
付け加えると、遥香は俺と同じA組。千城はC、久司はD組だ。
「っていうか、どうやったら勉強しないで私より点数とれるのよ」
「…………できの違いじゃね?」
「――――うっさいわ!」
「あっはははは!今日もオモシロトークしてるね、遥香たち」
「な!こ、琴美!!わざとじゃないんだからね!」
――――鈴原琴美。高校に入って初めて知り合った、そしてクラスメイトの一人。
セミロングの黒髪に垂れ目なので、おっとり癒し系に見えるが全然逆で、元気で活発な性格。
なぜか俺と遥香にいつもまとわりつく。
「あ~……知ってるよ?天然なんでしょ?」
「違うけど!?」
「え?わざとなの!?」
「それも違うけどっ!?」
「だ~~いじょーぶ。俺はわかってるって」
「こぉ……」
「――――徹夜で頑張って考えておいたんだもんな」
「全然違うよ!?」
クラスのみんなも笑っていて、実は俺も楽しく感じていた。
「お~い!帰ろうぜ!」
と、久司がドアから大声で叫んできた。
なぜそこまで大きな声なのかはわからないけど、とにかく久司のもとへ向かった。
当然、遥香も一緒に。
「んじゃ、帰りましょうか」
「そうだね」
「……あれ?千城は?」
「――――いるから!」
「ふふっ」
「ちょっと、遥香笑わないでよ」
「ごめんごめん!もう笑わないから」
と言いつつも、学校の敷地を出るまで遥香は笑っていた。
「――――なあ、ゲーセン寄ってかね?」
帰り道の途中、新しくできたゲームセンターの近くになると久司が俺達を誘ってきた。
「この後用事もないし、僕は大丈夫だよ」
「えと……私はあんまり……」
「ん、俺は大丈夫だけど」
「うん、大丈夫だよ!」
「?」
なぜかその時、頭の上に疑問符を浮かべていたのは俺だけだった。
「――――あ~、楽しかった!な!?」
「なんでそこで僕に振るの?」
「え~と…………なんとなく?」
「やめて!!」
店を出るや否や、久司と千城がおもしろトークをしていた。
「んん……まぁ、疲れたかな?」
「…………もう絶対にゲームセンター行かない……」
――――なにがあったかと言うと、それはまた別の話で。
「――――それよりさ、昂汰学校どう?」
と、いきなり千城が話題を変えた。
「どうって?」
「楽しい?サボりたい?」
……なぜか千城は軽く笑顔を作っていた。たぶん、俺の言う答えがわかっているのだろう。
「――――学校、たのしいよ」
「……そう」
――――学校に通って数週間だけど、クラスのみんなとも馴染めている。
明るく元気な雰囲気も、別に嫌いじゃなくて……
それは案外悪くないもので、俺は心地の良い気がした。
***
――――あれから一週間。テストが終わり、学生たちは歓喜に満ち溢れていた。
が、今日にはもう歓喜はなかった。
……そう、テストが返ってきた。
「――――ん、残念だったね。今回も劣ってるね」
「うるっさいわね!今回は勉強しなかったのよ!そう、勉強しなかったの!」
テストが返ってきた日の放課後のことだ。
それにしても遥香は言い訳なんだろうけど……
「いやいや、俺も勉強してないから」
「むむむむっ」
と遥香はほっぺを膨らませた。
「…………」
――――ポン。
「ふぁっ!?」
ふくれ顔になった遥香の頭に手を乗せた。
遥香はびっくりしたのか……いや、びっくりしてすっとんきょうな声をあげた。
「ま、遥香が俺を超えるまでは……ずっと遥香の前にいるから」
「――――っ」
そう言って俺は2、3回遥香の頭を撫でた。
……言ってから恥ずかしくなってきたー!!
「んっ!…………よ……」
「え?なに?」
遥香は一瞬目を細めて、何かを言っていた。が、それを聞きとることができなかった。
「――――えっと……お熱いところ失礼、俺達のこと忘れてない?」
「そうそう!お前らいつからそんな関係になったんだよ。まじリア銃爆発しろ!」
そう、俺達の放課後だったよな。
「忘れてないよ。それと久司はなんか間違ってるような気がする」
「?どゆことだ?普通にリア銃爆発しろ!って言っただけだけど……」
本人は気付いていないようだ。こいつに限っては当て字がたぶんあっていない。
いや、正確にはわからないがこれはあくまで予想だが……
これはほかの人はどうか知らないけど、俺は胸がざわつく時がだいたい間違っている時だ。
「うん、僕もそんな感じがしてきた」
「奇遇、私もそう思ったところ」
どうやら遥香と千城も気づいたようだ。
「?お前らどうした?頭が春か?」
「うん?なに?」
そっちに反応したか!
そーじゃないけど!……おもしろいな、この流れ。遥香もそっちの子か。
…………ん、しばらく放っておこう。
「――――だ・か・ら!なに?って言ってるの!」
「だからなんでお前が反応すんだよ!意味わかんねえよ!」
あれから20分が過ぎた。俺と千城はたのしく2人の喧嘩を見聞きしていた。
「呼んだのがあんたでしょうが!」
「はぁあ?別にお前なんか呼んでねーし!」
……はぁ、なんだろう。久司はわかっていたのだが、遥香も実は――――馬鹿なんじゃないか?
それに……そろそろ帰りたいな……
「はいはーい。そこまで。馬鹿ど……2人とも落ち着いて」
「「今絶対『馬鹿ども』って言おうとした!!」」
「ん、仲いいじゃん」
「そうだね、僕もそう思うよ」
どうやら千城も早く帰りたいそうだ。
「う~~ん、よく考えたことないからわかんない」
「俺もそんなの考えたことないな」
この2人の思考はどうなっているのだろう。
正直、理解不能だ。
「――――こぉ、それより帰ろうよ」
「ん、そうするか。じゃ、帰ろう」
「うん、そうだね」
「あ~あ、おやつあっかな~」
「なかったら上げるよ?」
「マジで!?さっすが昂汰!!で?なにくれんの?」
「――――生肉」
「なまにくッ!?」
――――こんなグダグダ感満載で、高校最初のテストは幕を閉じた。
初めまして相馬です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
内容的にはまだまだですが、これからも読んでいただけると嬉しいです。
なにかありましたらメッセージお願いします。




