ロケット
5 ロケット
「なんやと?!チロがおらん?!」
「ついでにR研究所のやつらも!!」
ルーとバナナが叫び合っている。
「どうしますか?本部に報告しますか?」
「だめ!報告しないで!僕が怒られちゃう!」
「フーが怒られんのは自業自得や!!」
そのころチロは、病院にいた。
『長山病院』という名前をつけられたこの病院は、その名のとおり、長い山のてっぺんに建っていた。
「よりによって病院……。」
「輪田から大見屋まで……丁度5キロぐらいかな?」
なにやら計算をし始めた。どうやらR研究所には辿り着かなかったようだ。
「ソンナコトハアトカラデモデキル。ニゲルゾ!ソルドニミツカッタラタイヘンダ!」
キールが小さめの声で叫んだ。
「でもさ、ここ、薬品庫だよ?へたに動いたら見つかっちゃう。しかもソルドの病院だし。」
チロが久しぶりにまともなことを言った。
「ああっ!場所が悪すぎるじゃねーか!俺らが呪文唱えたほうがよかったんじゃないのか?」
「あんたバカじゃないの!?10回を越して使ったらどうなるか散々試してきたじゃない!」
「アノトキハシヌカトオモッタゾ!!」
リールたちは言い合いを始めた。
そのうち見つかっちゃうような気が……するのはチロだけ?
ガチャン
薬品庫の鍵が開いた!誰か入ってくる!かくれなきゃ!やばいよ!ここ確かルワノが入っちゃいけない病院だったはず!
カツ、カツ、カツ
靴の音が聞こえてきた。ソルドって、なんで靴はくんだろ……靴の音ってなんかこわいな。
そのとき、リールが
『にんぽうR研究所へのじゅつ!』
チロたち三人の手に触れながら言った。
薬品庫に入ってきたソルドの男がにやりと笑った。
☆ ☆ ☆
ルルルル ルルルル
フールーけいさつに、1本の電話が入った。
「はい。」
ルーが電話を取る。
「大坂ソルド警察だ。そこにゴールデンしば犬の警察官はいるか?」
「今出かけております。」
なんでソルド警察から電話がかかってくるんや?
「そうか、なら、帰ってきたら至急報告するように。」
「わかりました。」
「なんだったの?」
「わからん……。ソルド警察からやった。」
「ソルド警察!?関係ないやん!」
ルーたちの知らないところでは、何かが動き出そうとしていた。
♪ ♪ ♪
11月2日 午後2時30分 東共ソルドワールドタワー
コンコン
ルワノ総合研究員、早川の部屋にノックの音が響いた。
「早川様、緊急報告がございます。」
広い部屋の奥に、早川が座っている。
「入れ。」
若い男が部屋に入ってきた。
「報告せよ。」
「大坂府、線何郡久真鳥町にて、にんぽうが使われました。」
「なんだと?!」
早川は昔、『にんぽう抹消プロジェクト』に参加していた。つまり、例の薬の開発をしたうちの一人だ。
そして、今は『ルワノ抹殺計画チーム』の、一員だ。
「正確な場所を教えてくれ!」
「はっ!大坂府線何郡久真鳥町大見屋3丁目です!」
「ヘリを用意しろ。すぐ行く。」
「しつれいします!」
若い男は急いで部屋を出て行った。
☆ ☆ ☆
そのころチロたちは、R研究所にいた。
「……なんで成功したのかしら……。」
「何か規則性があるんじゃないか?」
「マダオレタチガシラナイヒミツガアルンダロウ。」
リールの本日11回目のにんぽうは、見事に成功した。だが、一番肝心な問題が残っていた。
「でもさ、絶対あのソルドににんぽう聞かれてるよね?」
「そうなんだよ、そこなんだよな~。」
「R研究所へのじゅつ!とか言っちゃってたからじきにばれるかもよ?」
「……重要な資料だけもって、ここから出よう。」
え~!せっかくだから見学してみたかったのに~!
チロは言葉を心におしとどめた。
「ツイニアレガトブノカー。」
「やっと飛ばせるのねー。」
三人は大きなガレージに、チロを連れて行った。
「わあ~!」
そこにあったのは、大きなロケットだった。
「これ、三人で作ったの?」
「ホボオレヒトリデツクッタンダケドナ。」
「一応俺も手伝ったぞ。」
「すごい~~!!」
チロは感動していた。
「さあ、早く飛ばさないと役人来ちゃうわよ!」
「これ着て乗れ。」
灰色の分厚い服を手渡された。宇宙服だ!!
苦労しながらコールお手製の宇宙服を着て、発射準備を終えた。
「思ったんだけどさ、発射したら逃げたって分かっちゃうんじゃない?」
「ま……、まあ、そうなんだけどな、ここにいるよりは安全だろ?」
「そもそも何のためにロケット作ったの?」
「いざというときに逃げるため。」
【発射準備完了 発射します】
アナウンスが鳴り響いた。
【10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0...】
ドーーーーン!!!
ロケットが発射した。