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第3話 白い巨人

白い地平の向こう。最初は目の錯覚かと思った。

「何か」が立っていた。


「見えるよな?」自分の声が妙に乾いて聞こえる

「うん...」雪乃の返事も小さい

彼女の視線は完全に固定されていた。


距離がわからない。遠くのはずなのに、妙に存在感が強い。

あれは巨大だ...

それだけは直感で理解できた。


「デカくないか...?」

「デカ...大きい...」

語彙が死ぬ。他に言いようがない。


目を凝らす。輪郭が揺らぐ。

空気の屈折のようにも見えるし、ただの錯覚のようにも見える。


だが一つだけ確かなこと。

ゆっくりと...近づいている。

背筋が粟立つ。


雪原は相変わらず無音なのに、妙な圧迫感だけが増していく。

音の無い接近。

それがかえって不気味だった。


雪乃の指がマフラーの端を強く握りしめていた。

横目で様子を見る。

顔色が明らかに変わっている。

唇がわずかに引き結ばれていた。

怖いのだ。当然だ。

俺だって怖い。


「と、とりあえず...離れるか?」

「離れるって、どこへ...」

「だよな...」


見渡す限り白。逃げ場という概念が存在しない。


影はさらに近づく。

あり得ないサイズ感。人型。

その異様な比率を認識した瞬間、心臓が跳ねた。


「巨人か...?」思わず漏れる

「え...?」雪乃が息を呑む


巨大な腕のようなものが揺れる。遅い動き。

だが距離感が信用できない。

遅いはずなのに、接近速度の実感が異様に速い。


「ちょっと、あれ...近いだろ...?!」思わず後退る

雪を踏む。軽い。妙に頼りない。踏ん張っている感覚が薄い。


雪乃が肩をすくめて立ちつくす。

「一条くん...」

「え?」


「あれ...絶対ヤバい...」真顔だった


妙な説得力。完全同意である。

「...だよな!」反射的に同意する

いや他に選択肢が無い。


影がさらに迫る。

巨大さが現実感を侵食する。

輪郭が明確になっていく。

白い肌。

人間の姿をした巨大過ぎる化け物。


雪乃が一歩、後ろへ下がった。

だがその動きはすぐ止まる。

足元が不安定なのか、逃げる方向に迷ったのか。

ほんの一瞬の硬直。


考えるより先に身体が動いた。

彼女の腕を掴む。

「っ!?」

雪乃が驚いた顔をする。


自分でも驚いていた。

女子の腕なんて掴んだことないぞ俺。

しかし...

「走るぞ!」

「え!? ちょっ...!」

言葉を待たずに駆け出す。


雪を蹴る。感触はある。だが軽い。

進んでいる実感が妙に希薄。

地面を踏んでいる感覚が安定しない。


「ちょっ...速...っ...!」

雪乃の引きつった叫び。

だが手を離す気にはなれなかった。

振り返る余裕はない。

ただ必死に足を動かす。


なのに...景色がほとんど変わらない。


「...はぁ!?」思わず声が出る。

走っているのに距離が縮んでいる感覚が薄い。

雪原のスケール感が崩壊している。


「...なにこれ!」

雪乃の声にも焦りがにじむ。

背後に圧。


振り返る。

巨人が、もうそこにいた!


「え!?」

さっきまで遥か彼方だったはずなのに。

さっきまで遥か彼方だったはずなのに。


巨大な影が覆いかぶさる。逃げ場は無い。

終わった...


そう思った瞬間...

空気が裂けた。乾いた破裂音。視界を焼き尽くす光。


「ぐあっ!」

爆発のような雷鳴。視界が閃光に塗り潰される。

空気が弾ける。腹の底に響く轟音。


次の瞬間。

巨人の横面に、光の塊が激突した。

巨人が倒れていく。雪煙を巻き上げながら。

スローモーションのようにゆっくりと傾いて崩れ落ちていく。


数秒遅れて吹雪の衝撃波が押し寄せて、自分の周囲を通り抜けた。

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