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Just the Two of Us

数日後。

ニューヨークから帰国した悠斗は、静かな墓地に足を運んだ。

周囲に誰もいない。霧が薄く立ち込め、鳥の声さえ遠い。

黒岩の墓の前に立つと、悠斗はサックスを取り出す。

風が木々を揺らし、葉の擦れる音だけが響く。

悠斗は深く息を吸い、静かに吹き始めた。

「――Just the Two of Us…」

音は小さくても、確かに空間を満たした。

誰の目もない。聞いているのは、黒岩だけ。

悠斗の指が動くたび、胸の奥で黒岩が微笑んでいる気がした。

一音ごとに、あのジャズバーでの夜、教室での孤独、そしてオーディションの光景がよみがえる。

涙が頬を伝うが、音は止まらない。

悠斗は一人、墓の前で音を届け続ける。

まるで、師匠と二人だけのステージだ。

演奏が終わると、悠斗はサックスを胸に抱き、静かに頭を下げた。

「ありがとう、黒岩さん。俺の音は、ここまで来たよ。」

風が吹き、墓の周りの木々がささやく。

音は、誰にも届かなくても、確かにそこに残った。

悠斗の胸の中で、黒岩の教えは永遠に生き続ける。

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