第五話 大舞台、最高のサックス
3年後
照明がまぶしかった。
ステージの床が少しだけ震えている。
目の前に、カメラが三台。
その向こうには、全国に放送される「MUSIC HEROES」の審査員たちが並んでいた。
照明が落ちた。
ステージの中央、悠斗はサックスを抱えて立つ。
ボディの傷がライトを受けて、銀色に静かに輝く。
司会者が笑う。
「それじゃあ次の挑戦者、高校生の悠斗くん! 趣味は“ラノベとサックス”だそうです!」
客席からクスッと笑いが漏れる。
――懐かしい、教室で聞いたあの笑い声。
胸の奥が震える。
悠斗はマイクを握り、低く静かに語る。
「……僕、中学のとき、ずっとバカにされていました。
サックスを吹く僕を見て、『キモい』『またオタクか』って笑うやつらばかりでした。
でも、音楽を好きでいる気持ちは、誰にも奪えませんでした」
観客が静まり返る。
悠斗は深呼吸し、サックスを唇に当てた。
ライトが金と青に交錯し、指先やサックスのボディが光を反射する。
第一音。低く、濃厚な響きが空気を切り裂き、観客の胸を揺さぶる。
旋律は柔らかく、それでいて鋭く力強い。
孤独と痛みが音に変わり、全身を駆け巡る。
指が鍵を叩くたびに光が跳ね返り、汗の粒までもがステージに煌めく。
観客の息づかい、目の輝きが一つ一つ映像のように浮かぶ。
後半、旋律が高まる。悠斗の体がリズムに乗り、音は空間を揺らす波となる。
息の全てを吹き込み、サックスはまるで彼自身の声のように響く。
最後のフレーズ。悠斗の指が滑らかに駆け抜け、音が消えた瞬間、会場は一瞬の静寂。
そして、爆発的な拍手。観客が立ち上がり、歓声が渦巻く。
汗に光を反射させた悠斗は、胸を押さえ、息を整える。
真田響が立ち上がり、ゆっくりと手を上げ、マイクを取った。




