炎の誓い
喉の奥が焼けつくように痛む。
息をするたびに肺が悲鳴を上げ、肩からは熱い血が流れ続けていた。
折れた槍を握る手も、もう感覚がなかった。
それでも、俺は立っていた。
「……まだ、終わらせない……」
赤い双眸が唸りを上げる。
魔物はなお健在で、爪を振るい、大地を抉る。
その巨体から放たれる威圧感は、恐怖そのものだった。
魔物が飛びかかる。
俺は木の根の陰に転がり込み、辛うじてかわした。
爪が地面を裂き、土と石が飛び散る。
その衝撃で腹を打ち、息が詰まった。
「ぐ……はぁ……っ!」
肺が焼ける。視界が滲む。
足がもつれ、木に背を打ちつける。
魔物は逃さない。
牙を剥き出し、血に濡れた口から唾を垂らす。
(勝てない……いや、勝つんだ……!)
頭の奥で両親の声が重なる。
――生きろ。前へ進め。
胸の奥で、黒い炎が脈打った。
俺は必死に走った。
森の奥、昼間に仕掛けておいた「最後の罠」へ。
木の幹を削り、石を吊り上げ、腱で固定した粗末な仕掛け。
正直、これで仕留められる保証はない。
けれど今の俺にできるのは、それだけだ。
息を切らし、崩れそうな体で走り続ける。
背後から迫る足音が、死神の鎌のように響いた。
魔物が背後に迫る。
牙が肩を掠め、肉が裂けた。
血が飛び散り、地面を赤く染める。
「ぐっ……!」
視界が揺れ、膝が折れそうになる。
だが、歯を食いしばって踏みとどまる。
(ここで倒れるなら……全部無駄だ!)
ついに辿り着いた。
木々の間、仕掛けの前。
俺は振り返り、血に濡れた顔で笑った。
「かかれ……!」
魔物が突進してきた瞬間――縄を切った。
轟音。
巨石が落下し、魔物の背を直撃した。
巨体がぐらつき、木の根元に叩きつけられる。
「今だあああああ!」
全身の力を振り絞り、折れた槍を突き立てた。
肉を裂く感触。黒い血が噴き出す。
魔物は絶叫し、爪を振るった。
鋭い刃が頬を裂き、胸を掠める。
「うっ……!」
痛みで視界が白くなる。
だが槍を離さない。
歯を食いしばり、叫びながらさらに押し込む。
その瞬間、胸の奥で炎が爆発した。
魔物の体から黒い靄が溢れ出し、渦を巻いて俺に流れ込む。
視界が白に焼け、骨が軋み、血が沸き立つ。
「ぐああああああッ!」
頭に流れ込む記憶。
森を駆ける影。牙を振るう狩りの感覚。
飢え、怒り、血の匂い。
魔物が生きた全てが、俺の中に流れ込んだ。
そして――脳の奥で、声が響いた。
――奪還者スキル【リクレイマー】が発動しました。
次いで、別の声が告げる。
――【スキル《獣化の爪》を奪還しました】
「……っ、ああああああ!」
骨が軋み、血が沸騰するように全身が痺れる。
頭の中に流れ込むのは、獣の本能。森を駆け、牙を振るい、獲物を狩る記憶。
それが俺の中に刻まれていく。
誰の声でもない。だが確かに理解できる。
俺は今、この魔物の力を奪ったのだ。
槍を押し込み続ける。
魔物の赤い目が揺れ、やがて光を失った。
巨体が崩れ落ち、土煙が舞う。
静寂。
ただ俺の荒い息と、鼓動だけが響いていた。
膝をつく。
全身が震え、血と汗に塗れていた。
けれど、胸の奥には確かに力が宿っていた。
「……これが、リクレイマー……」
涙と血が混ざり合い、頬を伝った。
恐怖も痛みも、もう関係なかった。
これが、最初の勝利。
そして――冷酷に奪い尽くす者としての始まりだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
この物語は、ただの投稿で終わらせるつもりはありません。
いつか必ず大きな形にして、アニメ化までたどり着きたいと思っています。
そのためにも、皆さんと一緒に夢を追いかけ、成り上がっていけたら嬉しいです。
「一緒にアニメ化を目指しましょう!」
感想やブクマ、評価の一つひとつが僕の力になります。
どうか一緒に、この作品を大きく育ててください!




