【第1話】南條春太は2年生
初めまして。遠名です。
私が青春を謳歌できなかったので、春太に代わりに青春を謳歌してもらおうと書きました。
よろしくお願いいたします。
【第1話】南條春太は2年生
ケータイのアラームが鳴り、俺、南篠春太は目を覚ます。時刻は6時45分。寝る前にかけていた布団は床に落ちている。冬は過ぎたものの、まだ朝は肌寒い。
「でっくしょんっ」
仰向けのままくしゃみをしたせいで、唾が顔にふりかかる。朝シャン。
誰かが階段を上がる足音が聞こえる。
「はるにい、ごはん?パン?」
制服の上から、エプロンを着ている妹の琴美が俺の部屋のドアを開けて聞いてきた。
「じゃあ…」
「パンしか準備してないよ」
「なんで聞いてきたの」
「朝から丁度いいツッコミだね」
琴美は少し微笑んで、早く着替えておいでよー、と言いながら階段を降りて行った。
朝から丁度いいツッコミをしたおかげで目を覚ました春太は、クリーニングに出したあとそのままにしていた与田高校の制服を見つめる。
「2年か」
制服に着替えた春太は琴美が準備してくれているであろう朝ごはんを食べるため下に降りる。テーブルに置かれていたのは豆腐とわかめの味噌汁と、鮭の塩焼き。そして食パン。
「こっちゃん」
「こっちゃんです」
「和食だね」
「うん。朝からお魚ってテンションあがるでしょ」
「うん、食パンなの?」
「食パンです」
「このメニューの感じで」
「文句があるなら、私より先に起きて準備をすればいいんじゃありませんこと」
「ごもっともです。いつもありがとうございます」
琴美のど正論に何も言い返せなくなった春太は椅子に座り、朝ごはんに手をつける。用意されていた箸で鮭をほぐし、味噌汁を飲み、箸を置いて手で食パンを持つ。ごはんだったら100点満点の朝ごはんだった。本当に。
琴美も自分の椅子に着き、朝ごはんを食べる。美味しそうに食べる琴美をみて春太も、残りのご飯を食べる。
「あ、はるにい」
口の中のご飯を飲み込んだ琴美が言った。
「今日だけ学校一緒に行ってよ」
「ごめん、今日は無理なんだ」
「え、誰かと待ち合わせ?」
「そうなんだよ」
嘘に決まっている。何故2年になって早々、妹と仲良く登校しなければいけないのだ。妹にロマンを求めている人達には理解し難い事なのだろうが、実際はこんなもんだ。現実から目をそらしちゃダメ!
「そっかぁ、じゃあ、こっちゃんは高校生活初日、独りぼっちで登校しなきゃいけないんだね。」
「大半の人はそうだろ。」
ふてくされている琴美を横目に洗面台に向かう。鏡の自分と目が合う。今日もおまえは幸が薄いなと鏡の中の俺が言ってきそうだ。どうやって寝たらそんな寝ぐせになるのか、不思議に思いながら、せっせと直していく。
「はるにい~」
リビングから琴美の呼ぶ声が聞こえた。
「んーん」
歯磨き中なんだ。
「こっちゃんの制服姿見とく?」
「んーん」
歯磨き中じゃなくても意味は変わらない返事をした。
「じゃあ、待ってるね」
どうやら、琴美には否定には聞こえなかったみたいだった。身支度をすべて終わらせ、リビングに戻ると、琴美がモデルさながらのポーズで構えていた。
「ピチピチ超きゃわ女子高生こっちゃんです!」
ポーズが古いのは置いといて、確かに制服姿の琴美は可愛く見えた。キューティクルのある長く綺麗な黒髪、ぱっちりとハイライトの入った瞳、それを映えさせるような白と紺の制服姿。
あれ、こっちゃんってこんなに可愛い女の子だったの?
「え?」
「え?」
思わず口に出してしまっていた。琴美が照れているのを見て、こちらも恥ずかしくなる。
続く
読んでいただきありがとうございました。
学校行きませんね。次は登校します。多分。
遠名