想い 想われ
「最近、海斗来ないな、」
梅雨も終わり、すっかり空模様も変わったことが病室の窓から覗く世界が知らせてくれる。
少し前に知り合った私の大切な友達の、
西園寺海斗。
海斗はまた会う約束をしたのにその約束を破って
1週間ほど顔を見ていない。
私、なにかしたのかな。なんてことを考えていたら病室の前の廊下を歩く足音が聞こえた。
この病室の前を通る人は余りいないから足音が聞こえる度に海斗じゃないかと期待してしまう。
しかし、訪れたのはやはり海人じゃない。
「秋月さん。あなた宛の手紙が届きましたよ。」
「ありがとうございます。はじめましてですね」
私に手紙を届いてくれたのは今まで見たことの無い看護師さんだった。
「先日からここで働くことになった、渋谷 レイです。紅葉さんの担当なのでこれからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
渋谷レイさんは白っぽい金髪、白金色とでも言うのかな。そんな綺麗な髪に蒼い瞳。
それに体型も脚が長く、すらっとしているのに胸がちゃんと大きい。
モデルさんかと思うような容姿だ。
年齢は20代半ばぐらいかな?
「髪きれいですね」
「あ〜これですか?私クォーターで祖母の遺伝らしいんですよね」
「そうなんですね。素敵ですよ」
「ありがとうございます。ではこの後診察があるので行きましょう」
「はい。あっ、もしかしたら聞いてるかもしれないんですけど私診察の時は1人で行くので先行っててもらって大丈夫ですよ」
「せっかくならお話しながら行きましょうよ」
今まで看護師さんがここまで親しくなろうとしてくれたことはあまりなかったから少し新鮮で嬉しい気持ちになった。
「いいですね、偶には。」
だから、彼女の誘いに乗ることにした。
彼女から渡された手紙は一旦机の上に置いて、診察が終わったら読ませてもらおう。
そう思い、私はベットから立ち上がった。
*
「手紙、読んでくれたかな、」
僕は少し前病院で知り合った秋月紅葉。
彼女に手紙を送った。ラブレターなどではなく、普通の手紙だ。
本当は会いに行って直接話したい。そう思うのだが、彼女の両親に言われた言葉。あれがどうしても頭から離れない。
「もう娘に近づかないで欲しい、、か、」
紅葉にとって僕は友人の中の1人。
ただ、親というのはたった1人の大切な人達。
僕は幼い頃両親を失った。そして、親戚からも引き取って貰えず施設で育った。
だからこそ、彼らの言葉は僕の心に深く残ったのだろう。
でも、せめて手紙ぐらい送ることは許して欲しい。紅葉は僕と話す時すごい綺麗な笑顔を向けてくれるんです。
だから、僕の手紙を読んで笑顔になって貰えたらって。
「そろそろ、晩御飯の時間だね」
僕は今施設に住み込みで働かせてもらっているんだ。ちゃんと仕事はしないとね
「みんな!今日は何食べたい?」
*
「紅葉ちゃん。可愛かったな。」
私は、渋谷レイ。
今日から正式に桜木病院で、働くことになって、担当の子も決まったので日記をつけることにしました。
担当の子は秋月紅葉ちゃん。赤茶色のサラサラの髪と白い絹みたいな柔らかい肌がとっても綺麗で可愛くて、初対面の私にも優しく話してくれた可愛い子だった。
仕事はやることがいっぱいで大変だし、
患者さんには医者が金髪なんて非常識とか言う人もいて疲れたけど、紅葉ちゃんと話しているととっても気が楽だったな。
歳が5歳ぐらい違うのにね。
明日も早いので今日の日記はここまでにします。
明日以降の私も頑張って!
「日記書くのなんか少し恥ずかしい感じがするな、今まで書いてこなかったからかな」
机の上に置かれた日記。今はまだ1ページしか埋まっていないけれどこれが全て埋まった時私はどうなっているのだろう。
今と全然違う人間になっていたり、はたまた何も変わっていなかったり。
未来のことは何一つ分からない。
未来、過去、現在。どんなときも辛いことはあるけれど、それを乗り越えればその辛さよりも楽しいことがいっぱいある。
お父さんが教えてくれたこの言葉、今なら少し意味がわかるよ。
実際私が看護師になるなんて想像もしてなかったしね。
さて、明日の私は一体どんなことをするんだろうね。
私はベットの上に横になって目を閉じる。
拾うの溜まった私が眠りに入るまでそう時間はかからなかった。




