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夢 叶え 涙


 病院から、車で1時間ほど。

 山梨県の富士山の麓の紅葉スポットで有名な観光地来ていた。


「やっと、来れたね……」


 ここまでは、海斗が車で連れてきてくれた。

 話を聞くに、施設の子を遊びにつれていくために免許を取っていたのだという。さすが、優しいお兄ちゃん。って感じだ。


 車に乗っている時から、見えていたが、車を降りてから私たちは三人で、「綺麗」と、そうこぼすことしかできなかった。


 目の前には、油絵で塗ったかのような、重厚感のある紅い紅葉に、

 黄金色に輝く銀杏の葉。

 鮮やかな色彩の世界の遠くには、淡く彩られた富士山が見える。


 私が、夢見たあの景色。それ以上の景色が広がっていた。

 

「すごい……」


 いつの間にか、瞳の中は涙でいっぱいになって、視界はもうぐちゃぐちゃになっていた。


「まだ、ついただけだよ……ここで感動して泣いてたら帰るときにはミイラになっちゃうよ」


「あはは!確かに、紅葉ちゃん。今は我慢だよ‼」


 時間をかけたメイクを崩さないように、涙を拭いて、高揚する感情を抑えた。


「そうだね、これから、もっといい景色見れるわけだしね」


「まずは、予約してたお店に行かない?」


 海斗の先導で、まずご飯を食べることになった。



 訪れたのは、日本食のレストラン。

 木目調の建物に和風シックな内装。建物の中にある、一本の紅葉の木。

 見るからに高級店だ。


「ここって、結構高いところじゃない?」


「まぁ、僕の奢りだから気にしないでよ」


「そうは言ってもさ?」


「僕のわがままに予定合わせてもらったし……このぐらいはね?」


 外食経験も乏しいし、こんな高級店なんか来たこともない。

 テーブルマナーだって正しい所作でできる自信もないのに……不安だ


「お待ちしておりました、西園寺様。案内いたします。こちらへ」


 店員さんの案内に従い店の奥に進むと、さっきから見えていた紅葉の木の下の個室に案内された。


「ありがとうございます」


 さわやかに対応しているけど、海斗は本当はかなりすごい人なの?


「個室なら、周り気にしなくていいでしょ?」


「それは、そうだけど絶対いい部屋じゃんここ……」


 レイちゃんもずっと困惑気味じゃん……


「そうだね、部屋の指定はしてなかったから運がよかったよ」


「そっか、私たち海斗がすごい大金を使う気なんじゃないかって、心配だったよ……」


「食事代だけでもかなり高そうだもんね……」


「さっきから言おうと思ったけど、ここそんなに高くないよ?」


「嘘だ、こんないいお店なのに?」


「嘘じゃないよー……ほら」


 タブレットに写し出されたメニューは、どれも800円台。

 普通なら1000円超えてもおかしくないのに、すごく安い……


「聞いた話によると、地元の食材を使っているから安く、新鮮らしい。で、この安さでこの店の綺麗な外観だから結構人気らしい」


「よく、予約出来たね」


「紅葉見たい!って話になった時からずっと調べていたんだよね」


「今日がいいって言ってたのもこれのためだったのか……」


「そう!二人にサプライズ!」


 全く、本当に私の友達は敵わないな……


 それぞれ、昼ごはんを注文し、10分もしたらどんどんと、料理が提供されてきた。


 プルプルで、カラフルな食材がちりばめられた茶碗蒸しに、弾力のある卵焼き、出汁の香りが広がる鴨そばと、山梨のほうとう。

 そのどれもが、食欲をそそり、息をのむ。


「おいしそう……」


 もう、まともな感想なんて出ない。おいしそう、本当にその一言に尽きる。


「冷めないうちに食べちゃおうか」


「そうだね」


「「「いただきます」」」


 まず、手を伸ばしたのは茶碗蒸し。今までの人生の中で一度も食べたことがなかったから、どんな味なのか、どんな食感なのかとても楽しみだ。


 ハムッ


 口の中に入れた瞬間。涙が出そうになった。

 おいしい。本当においしい。  

 魚介の出汁と茶碗蒸しの中にある食材が濃厚なのにくどくなくて、銀杏も椎茸も食感が面白い。


「おいしいよ!海斗!」


「うん!本当だね、卵焼きもいいよ」


 その調子で、30分ほど、私たちはごはんを堪能した。

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