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不安定な想い 支える


「一緒にプレゼント探そうか、、」


数年前、同じ病室で過ごした、友達からの頼み。

昔の彼女を知るからこそ、協力してあげたい。でも、私が力になれるのだろうか、、


3年前、私は当時の流行り病にかかり、運悪く悪化し一時期入院いていた。

その時に知り合ったのが、秋月紅葉。

当時の彼女は、ひどくやつれて、か弱く、もうすぐに崩れてしまうような、、

そんなアンバランスな少女だった。


看護師さんに聞けば長い病院生活に、つらいリハビリ。学校にも行けず、画面越しで授業を受ける日々。

そのすべてが彼女の心を蝕み、ぼろぼろにしてしまっていたのだろう。


私はそんな彼女を見るのが辛かった。彼女は私のことを望んでいた。そう言い切ることもできないし、これは私のエゴだ。自己中心的な心。

それでも、その時の選択を私はこれから死ぬまで永遠に忘れることはないだろう。



「初めまして、、今日からしばらくここでお世話になります。結崎 渚(ゆいさき なぎさ)です。」


目の下のクマにぼさぼさに伸びた髪。荒れた肌。

見た感じ中学生か高校生ぐらい?

嫌な子と同室になったな、


「秋月紅葉です。よろしくお願いします。」


ずっと俯いて、声も震えている。人見知り?

いや、きっと違う。


窓から流れてくる風が外の熱を運んできてじめじめとした空気が熱を帯びる。

風が運んできたのは、不快感と、嫌悪感。それと、、


風によって揺らいだ彼女の髪。その隙間から覗くのはどす黒く、ドロドロとした虹彩。

光の一つも通さない妖しい瞳。


「紅葉っていったよね、君スイーツすき?」


気が付いたら、私は彼女に声をかけていた。

彼女の目を見たとき、彼女はもう限界なんだなと思った。

彼女はもう、何にも期待しない。そう思った。


「ショートケーキが好き、」


「おいしいよね、私も好き」


中身のない会話だけど、こんな話をしても何にもならない。

でも、、私には彼女をそのままにはできない。

これは身勝手な考えかもしれない。それでもいい。


彼女には、そこまで苦しむ義務も使命何にもない。

ただ、泣いて、笑って、毎日を過ごす。

ただ、それだけが彼女に与えられた権利なのだ。


「せっかく、一緒の部屋になったんだしこの後売店でスイーツ買ってちょっとした親睦会でも開こうよ」


彼女は、、、

紅葉は、私が笑顔にして見せる。



「紅葉、このアニメ知ってる?」


差し出したスマホには当時流行った恋愛系のアニメ。

リアルな世界観の中にある甘酸っぱいストーリー。


中高生を中心に爆発的な人気となり、社会現象を巻き起こした。


「知ってるよ、面白いよね」


紅葉は笑顔を向けてくる。その笑顔はすごく不格好だけど、

かわいくて、美しくて、それは、尊いものだった。


「でも、渚こういうのあんまり好きじゃないと思ってた」


「意外でしょ?」


「うん」


紅葉は初めて会った時からずいぶん変わった。

まだ知り合って一か月ほどだけど、見た目に気を付けるようになったし、

雰囲気も明るく楽しそうだ。


最初あった壁も無くなって、今は基本的にずっと二人で話している。


「そーだ、忘れないうちにさ、渚と友達になりたいんだよね」


「何言ってるん?私たち友達でしょ?」


「あー違う違う。私が言ってるのはこっち」


紅葉のスマホに移されていたのは、インスト。


「あー私やってないんだよね」


世間は今、インスト映えする食べ物だったり、場所だったりが人気でその写真をみんな

インストに投稿している。


でも私はあんまりそういうのが得意じゃなくてやっていなかった


「そっか、じゃあほかのやつでも、」


「いや、今からインスト入れるよ」


「え、いいの?」


「そりゃ、もちろん」


すこし、紅葉が寂しそうな顔をしていた。それを見たらい嫌でもやるだろう。

私は別に嫌というわけではないが。


「渚、もうすぐ退院するでしょ?で、退院した後もこれがあれば話せるからさ、」


「そういうことね、ならなおさら入れないと」


そのあと、すぐ私は病院を退院した。

それからは毎日インストで通話したり、メッセージを送りあって連絡していた。


たまに上がる、インストのストーリー。

それを見るたび、私がいなくても大丈夫なんだなと安心した。



「私でよければ、プレゼント探すの手伝うよ」


改めて、思う。

私は幸せ者なんだと、、

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