99、月凪は強くなりたいお年頃?
「壁牙お兄ちゃん、トレーニングを見て欲しいの!」
ある日の土曜日、俺は月凪にトレーニングの協力をお願いされていた。
「どうした急に?」
「えっとそのー最近体が鈍ってしまって…ちょっと体を鍛えたいの!」
事情を聞くとなまったからと返ってきた…。
魔法少女のパワーアップに筋トレて意味あるのかな?
何とも言えないけど、妹がトレーニングしたいと言うのならば付き合うのが兄の役目だろう。
「じゃあ一緒にランニングでもするか?」
「うん、する!私だけだと長く続けられないからありがとう壁牙お兄ちゃん!」
こうして俺は月凪と一緒にトレーニングすることになった。
「しかし久しぶりだな、月凪と一緒にランニングするの」
「そうだね、お兄ちゃんが悪の組織に襲われて入院してから全然だったよね」
「それ以前は事あるごとについてこようとしていたよな」
街中を走りながら会話する、ランニングしながらの会話は体力消耗が激しくなるがトレーニングになるので続ける。
「前はすぐにはバテたけど、今はまだまだ行けるよ!」
「…そうなのか?30分後にはぐったりとした妹が居た…なんてことにはなるなよ?担いで帰るの大変なんだから」
「さすがにもうそんな事はならないよ!」
自信満々な月凪、魔法少女になって肉体的にも強くなったのかな?
そう思いつつ、ランニングを続ける。
「そう言えば壁牙お兄ちゃんは最近魔法少女の戦いによく首を突っ込むと聞くけど、何でもそんな事するの?」
「え、今聞くことなの?というか前も聞かれた記憶が…」
「そうだっけ?そうだとしても再度教えてよ、魔法少女の戦いに首を突っ込む理由教えてよ」
妹に魔法少女の戦いに首を突っ込む理由を聞かれる…何と答えたら良いんだろうか…マフナに惚れた為とは恥ずかしくて言いにくいし…下手したら月凪=スカイホップと知っていることがバレるかもしれないし…適当に答えるか。
「うーん、そう言う流れになったからとしか言えないな、破壊将軍に骨折られて、魔法少女スカイホップに助けられて、そして知木に戦う力を貰って…後は流れで…みたいな感じだ…今は戦う力があるし…悪の組織に目をつけられた以上、もう引くに引けない状況だな」
ふう、走りながら長い言葉を吐くのは中々疲れるな…。
「引くに引けないて…普通じゃないよ壁牙お兄ちゃん…心配だよ」
「まあ、普通じゃなくなったからな…大丈夫だ、月凪やお母さんに迷惑は掛けないよ」
「いや、家族なんだから迷惑をかけてもいいからね?」
「…まあ、これからも街から悪の組織が消えるまでは戦う予定だ」
というかネガゴッドを壊滅させない限りはスカイホップ…月凪も戦い続ける事になるだろうし…マフナも似たような物だ、協力したくなるのが家族という気持ちと恋心と言うやつだろう。
「でもずっとそんな事続けたら体変になるんじゃ…」
「まあ、否定はしないな、悪い方面じゃ無いけど、なんだかんだで不思議な力が使えるようにはなっているし」
精神力に関しては昔は使うには知木の道具頼りだったけど、今はアンチトリックの仕組んだ部屋から脱出する際に素手でも精神力使えたし…。
もしかしたらそろそろまたあの謎の爺さんに会えたりするかな?
「むー!壁牙お兄ちゃん、少しペースあげるよ!」
「おーいどうした急にペースあげて、バテるぞ?」
ペースを上げた5分後、月凪はスタミナ切れを起こし、立ち止まってしまった。
「うう、変身してないとこうも簡単にスタミナ切れになるなんて…」
「へくちへくち!」
アーアーキコエナイヘンシンというワードはキコエナイ。
「……壁牙お兄ちゃん風邪?」
「大丈夫、少しむせただけだ」
そんな誤魔化しをしつつ、ランニングを続けるのだった。




