5、帰宅と聞き耳
知木が去った数十分後、月凪とお母さんが病室に来てめちゃくちゃ心配されたし、お母さんには囮になった件でめちゃくちゃ怒られた。
因みにお父さんは海外に単身赴任をしているので来ることはない。
その後は医者に体を検査されて、驚くレベルで怪我1つない健康体と診断されて任意で退院、念の為に1日入院と選べたので、退院して、夜に家に帰ってくることが出来た。
「はあ、今日は散々な日だったな…」
自室のベッドに座り、一息つく…体はもう自由に動くが、確かに記憶にはしっかりと骨を砕かれる激痛の記憶が焼き付いている、あの記憶がまるで夢のように感じで、ちょっと気持ち悪い。
「……月凪に魔法少女に関して聞いてみるか、マフナの事も気になるし…」
お母さんから今日は部屋でゆっくりするように言われたがそんな気分ではない、自室から出て、妹の部屋の前に行く。
現状お母さんは夜のコンビニパートに行っていて、家に兄と妹しかいない。
「よし、これで貴女が魔法少女として変身出来る事を知らない人以外はこの部屋に入る気持ちもわかず、私達の声も聞こえない結界の展開完了」
ドアを開けようとしたら、そんな声が聞こえて体が硬直する。
「そんな大層な結界使わなくても壁牙お兄ちゃんになら明かしていいと思うけど…」
「駄目だよ月凪、魔法少女は正体を知られるのはタブー中のタブーなんだよ、知られてしまったら致命的な弱点になるし、下手したら守るべき兄にも悪の組織に狙われる等の危険が迫るんだよ…初回の変身も兄が気絶していたからあそこで変身したけど、本来は隠れて変身しないと行けないからね」
…あれ?もしかして俺かなりタブーに触れている?
「場合によっては貴女達の記憶を消して私は別の魔法少女候補を探さないと行けなくなるので気をつけてくださいね」
「それは困るよ!またあの悪いやつが来た時に壁牙お兄ちゃんを守れないのはいや!」
やばい、これ聞いたらダメなヤツでは?
「それなら隠すようにね、そしてあの時に渡した資料見た?」
「うん、悪の組織ネガゴッド…それを倒すのがマフナの目的なんだね」
「倒すというより本来は防衛なんだけど…まあ倒すのでも問題ないよ、最終的には悪の組織の根絶でもあるし…」
多分これ以上聞いたら駄目なんだけど、聞き耳をたててしまう、というかうちのドアて結構音通すんだな…。
「でも今は防衛に専念してね、魔法少女になったばかりじゃ強い悪の組織相手には勝ち目薄いし…そもそも悪の組織の本拠地知らないでしょ?」
「あ…そうか、本拠地を知らなければ乗り込めないもんね…他の魔法少女はどうやって悪の組織の本拠地を見つけたの?」
「悪の組織の幹部を追い詰めたりして撤退させた所を追いかけて見つけることが多いわね…まあ今の貴女は魔法少女としての力の使い方を知るのが最優先よ、まさか悪の組織がこの地区で暴れるとは思わなかったから、今の所ここらへんで戦える魔法少女は貴女しかいないの…だから無理は駄目だよ」
「わかった気をつける…」
そろそろここから離れよう…ガッツリ聞いてしまった事に罪悪感を感じつつ、離れようとすると気になることが聞こえた。
また聞いてしまう…。
「そういえばマフナは悪の組織と戦わない間はどうするの?」
「私はその間、貴女の側にいて悪の組織が現れた場合の探知役や学校をこっそり抜け出せるようにサポーターとして働く事になるわ、安心して魔法で貴女が魔法少女と知らない人には見えないようにする魔法を使うから貴女が魔法少女と知られることは無いわよ」
「学校の抜け出し…良いのかな?」
「本当は良くないけど、そのかわり勉強のサポートもしますからね?」
「魔法少女のサポートする妖精なのに今時勉強のサポートするの!?」
「過去に一部の魔法少女が魔法少女としての戦い集中しすぎて成績が落ちてトラブルが起きて以降、そういうサポートもする事になったのよ」
……少なくとも月凪の成績が落ちることはなさそうだ、そう思いつつ、これ以上は罪悪感が勝るので俺はそそくさと自室に戻るのだった。