21、知木と壁牙の休日
あのハートの化け物との戦いから数日後、俺達が住む陽時街は比較的平和な時間が過ぎていた。
マフナは時折月凪の肩に乗り、マフナの勉強を手伝っている、それは良いことなんだが…。
「うーん、待ち遠しいな…」
「また手の甲見ているね壁牙、まるで連絡を待ちわびる乙女みたい」
本日は学校が土日ということで休みで今の自分は知木の家に遊びに来ている、時間は午後一時、お昼御飯を食べてから合流といった感じだ。
今は知木の家にある本を読ませてもらっている、漫画でわかる〇〇シリーズが多い。
そういった漫画を持っている理由は色々と知っている事を面白おかしく描写されているのが好きらしい。
「あ、ああ…魔法少女のサポーターしているからそんなすぐに連絡貰えないと思っているけど…」
「難しいものね、そもそも要注意人物としてマークされただけかもよ?」
「要注意人物としてのマークとか出来れば思いたくないな…」
知木はソファでダラダラしながら会話してくれている、今日は出かける予定は無いのか完全に寝巻きで無防備だ…。
普通の男性ならドギマギするだろうが、俺と知木はそういう恋愛関係ではないのでそういう気持ちは湧かない。
「次の戦いで足を引っ張らないように特訓するべきかな?」
漫画でわかる超高効率の筋トレというのを手にして読み始める。
「筋トレ程度で悪の組織相手にどうにか出来れば、魔法少女なんて要らないわよ?」
「確かにそうだけどさ…」
人間がトレーニングで得られる力は決してバカには出来ないが、それでもトテモネガティブダーみたいに素手でコンクリとかの床に大きな穴を開ける事は不可能に近い…ごく一部の人類なら出来るかもだが、基本的に不可能だ。
そうなる以上やはり武器が必要不可欠だが…知木に頼り切りになるわけには行かない。
「筋トレするなら私の肩をマッサージしてほしいなー、研究のしすぎでカチカチなんだよ」
「そのくらいなら別に構わないよ」
知木の要望に答える、ここ最近借りが溜まり気味だから返さないとな。
「やったー最近あれこれ頭使って肩がカチカチなんだよね」
「頭使って、肩こる理屈がイマイチわからん…」
そう言いながらも、ソファーに座り直した知木の肩を揉む…。
良く知木に頼まれて揉む事があるが、相変わらず硬い。
「集中すると頭を固定したくなって、首も固定される、そしてそのまま時間が経てば首を固定する負担は肩に行くのよ」
「あーそう言えばそう言ってたな…」
「あー、そこそこ、そこの硬さの塊を揉み砕いてー」
知木は完全にゆるゆる状態だが、肩の硬さが柔らかくなることはない。
「釘打てそうな硬さだな」
「硬くなるなら肩より手のほうがいいよ、殴る際のダメージ向上になるし、シェルダータックルより使い勝手がいい」
「お前が殴りたくなるほどの相手て相当性格悪そうだな」
「………まあ、そうだね」
と、これ以上この会話はよろしくないな、子どもの頃の事件を思い出している。
「なあ、この後出かけないか?何を研究してるかは分からないけど、1日中引きこもっているとまた肩が凝るよ」
「そうね、半身からの誘いだし、行きましょうか」
肩を揉み終わった知木が立ち上がり着替えを始める。
「一応男子の俺が居るんだが」
「ここで欲情する半身では無いでしょ?」
「そうだが、一応言っておかないとな」
背中を向けて見ないようにする、エチケットと言うやつだな…まあ、知木は俺に対してはエチケットなんて持ち合わせてないが…まあ、それくらい信頼関係があるということだな…。
数分待つと、寝間着から黒色のワンピースに着替えた知木に話しかけられる。
「準備オッケーどこ行く?半身?悪の組織の本拠地にカチコミにでも行く?」
「はは、仮に行けたとしても知木を連れては行きたくないな、嫌な空気こもってそうだし…喫茶店で季節限定品のフラペチーノ飲みにいくか?」
「行く!」
こうしてお互いに冗談を言いながらも喫茶店に向かうのだった。




