第2章:もふもふ魔獣との出会い
辺境の村での生活にも慣れてきたある日、アレックスは薬草採取のため、村はずれの森へと足を踏み入れた。王都を追放されてから、錬金術の研究は滞っていたが、それでも細々とポーションを作り、村人に分け与えていた。おかげで、村人からの信頼も少しずつ得られるようになってきた。
森の中を歩いていると、ふと足元に小さな白い花を見つけた。
「これは…もしかして、幻の薬草『ムーンライトハーブ』ではないか?」
ムーンライトハーブは、満月の夜にしか咲かないと言われる貴重な薬草だ。興奮を抑えきれず、アレックスは周囲を見渡すと、月の光を浴びて白く輝くムーンライトハーブが群生している場所を見つけた。
「これはすごい…!」
夢中でムーンライトハーブを採取していると、背後から何やら気配を感じた。振り返ると、そこには見たこともない不思議な生物が立っていた。
全身がふわふわの毛で覆われた、大きな瞳を持つ獣。まるでぬいぐるみのような愛らしい姿だが、その体からは微かに魔力が感じられる。
「これは…魔獣か?」
アレックスは警戒したが、魔獣は敵意を見せるどころか、むしろ好奇心に満ちた瞳でこちらを見つめている。恐る恐る手を差し伸べると、魔獣は警戒することなく、その小さな鼻をアレックスの手のひらにこすりつけた。
「怖くないのか?私は人間だぞ?」
アレックスが問いかけると、魔獣は嬉しそうに尻尾を振った。その愛らしい姿に、アレックスの心は和み、警戒心はすっかり消えていた。
「よしよし、いい子だ。君もムーンライトハーブを探しに来たのか?」
アレックスは、魔獣の頭を優しく撫でた。魔獣は気持ちよさそうに目を閉じ、アレックスにすっかり懐いている様子だった。
「君には、名前がないのか?そうだ、今日から君の名前は『ポム』だ。いいかい、ポム?」
アレックスは、魔獣に「ポム」と名付けた。ポムは、嬉しそうに鳴き声を上げ、アレックスの足元にじゃれついた。
こうして、アレックスとポムの不思議な出会いは始まった。この出会いが、後にアレックスの人生を大きく変えることになるとは、この時はまだ知る由もなかった。