9 うちの勇者の暴走が止まらないんだが・・・(第一王子目線)
「勇者は暗殺なんてしていないし?」
勇者がそう言っているのを聞いて第一王子は思った
嘘つき!
第一王子の食事に毒が盛られたせいで毒見役が死んだことがあった
また死ななくても目が見えないだとか身体が動かなくなった人もいた
それを聞いた勇者は激怒した
「ここまでやられてやり返さないとは!」
・・・主人である第一王子が怒られた
権力というのは上の者が下の者を守るためにあるもの、だそうだ
異世界の常識というのは王国とは合わないと感じたね
その場は第一王子が怒られただけですんだ
だが数日たつと第二王子の派閥の貴族の息子がベッドの中で死んでいた
それが複数回あった
もちろん犯人は勇者だろう
それ以外に考えられない
勇者曰く
「証拠もないのに犯人扱いするなんて酷い!」
・・・酷いのは勇者だよ!、と内心ツッコんだね
という訳で証拠がないという理由で犯人が野放しになった結果、被害者はどんどん増えていった
そこでとうとう第二王子の派閥の貴族のから裏切り者が出た
「第一王子の派閥に入れてください」
そう言ってきた貴族がいた
第一王子の派閥は少数派なので入れるのはある意味歓迎なのだが勇者がゴネた
「毒殺しようとしたせいで死んだ人間がいるのに謝っただけで許されるなんてこの勇者が許さない!」
そう言う事らしい
でも裏切ってくる人間なんだ
ここで拒絶すると本当に貴族としての立ち場がなくなる
だから許してやってくれ
そう言って勇者をなんとか宥めた
「まあ第一王子が言うなら・・・」
といって納得してくれた
もっとも顔は全然納得していなかった
ひょっとしてこれはほとぼりが冷めてから暗殺するルートか?
ちょっと心配になった
勇者なら
「悪党相手に紳士のスポーツするなんて馬鹿のすることだ」
とか言って暗殺しそうで怖い
いやホントに怖いからね
殺したくせに証拠がないって言って自分は潔白だって言っているからね?
口約束したけど、晴れた日の傘くらいの価値しかなさそうなんだ
この先に何が起こるか心配でならない




