2 後編(第二王子目線)
「・・・グスッ・・グスッ・・・」
目の前で侯爵夫人が泣いていた
最愛の息子が死んだのだから当然だろう
ある日、侯爵令息は朝起きたら目が見えなくなっていた
両目を剣で一文字に切られていて明らかに人の手によるものであった
もっとも当の令息はなぜか傷付けられたにも関わらず意識がなかった
朝に懺状を見たメイドの悲鳴により目が覚めた
そして目が見えないことに絶望した
なぜ傷付けられても痛みがないのか?
だれも判らなかった
判るのは目が見えないことと
治癒魔法やポーションではここまで悪い状態は回復できないことだけだった
痛みはないとはいえ目が見えないことは貴族としては致命的である
なにせ何もなくても人の足を引っ張るのが貴族なのだ
明らかな欠陥がある令息は社交界だけでなく領主としても失格である
当然のことながら婚約者にも逃げられた
失意の侯爵家令息は自らの命を絶つことになった
かくして夫人の鳴き声をBGMに葬儀が行われることになった
犯人は第一王子派の誰かだろう
いやはっきり言って勇者が怪しい
もっとも勇者様は
「証拠を出せ」
と言っているらしい
多分、第一王子を暗殺しようとしてきたことへの仕返しだろう
今までは「証拠を出せ」と言われて泣き寝入りしてきた
しかしこれからは違うのだろう
多分やられたら手を出してくるだろう
文句を言いに行った人間が言い掛かりを付けたとして勇者にボコボコにされたから
いや第二王子派が何もしなくても手を出してくるかもしれない
今までされてきたのだから第一王子がやってもよいって考えで
そうでないならいきなり侯爵令息が自分の部屋で目を潰されてないからな
・・・そんなはずれて欲しいと思った予想が当たっていると判ったのは後日、伯爵家令息の腕が切り落とされていたからである




