19 治癒魔法が効かないってなんなんだよと言いたい(第一王子目線)
「え~、不思議~」
目の前の勇者がソファーに寝ころびながらおちゃらけて言ってるのを見て殴りたくなるのは間違っていないと思う
いえね第二王子の派閥の貴族の息子が襲撃されたんだよ
目や腕や足を失った
当然のことながら治癒魔法が掛けられた
大抵の傷ならば魔法でどうにかなる
それがこの世界の常識
・・・なにせ勇者を召喚する魔法があるのだ
どんな魔法だってあって当然である
なのに今、異常事態が発生している
襲撃された息子たちには治癒魔法が使えないのだ
まあ第二王子の派閥の貴族の息子なのでほかっておいても問題がない
第一王子の立場としては何もできないと思っていた
この場合は派閥が違うのでやらせて貰えないが正解である
ところが治癒魔法が使えないってところで色々な所からクレームが来た
もしも自分に治癒魔法が使えない魔法が使われたらたまったものではない
そういうことである
・・・襲撃したのが第一王子の派閥の勇者なのは公然の秘密になっているようだった
という訳で勇者に聞いてみたのだがのらりくらりと躱された
小説やお芝居じゃあるまいし手の内をベラベラ喋るバカはいない
御貴族様は聞けばなんでもすぐに教えてくれるなんておめでたい頭をしているんだね~
以前似たような事態で勇者がそう言ってバカにしていたことがあった
多分今回も教えないんだろうな
そう思う
だが苦情が来ているのだ
一体どうするべきか
いっそのこと苦情を言ってきた奴全員を勇者に押し付けてみようか?
悪魔の囁きが聞こえたような気がした
勇者は常識だとかがすっぽり抜けている
というか勇者がいた世界の常識というのはちょっと考えられないくらい歪である
やったら大変なことになるだろうなとは思う
だが勇者のだらけた態度を見ていると『混ぜるな危険』と判っていてもやりたくなってしまう
この苦労を誰かに押し付けたいというか、一緒に苦労して判って貰いたいってう感じだ
・・・やるべきか、やらざるべきか
悩むところである




