ある片思い
例えば一つの花が咲き
その可憐さに見とれることができるのは
どれだけの期間なのだろう
花が枯れる前に時間を巻き戻し
蕾が開き始めるところからやり直すとしたら
僕は幾度そのループを
繰り返して行くことだろう
僕が君を知ったのは
本当にたまたまのことで
そのとき胸がときめいて
思わず君に釘付けになったのだ
そして君と会って
言葉を交わしたいと願った時
僕は知ったのだ
君は既に過去の人だということを
僕は君を見ることも聞くこともできるのに
君の涙も息遣いも見聞きできるのに
言葉を交わしたり触れたりすることは
できない
君は1mmでも僕の為に
言動を変えることはできないのだ
何故なら君は既に
この世の人ではないのだから
ある夜 僕は目を覚ました
なぜか君が僕の夢に現れた
大きなホールのようなところで
君はたくさんの人に囲まれて
マイクを通して話をしていた
けれども君はどこか淋しそうだった
そのときふと首を動かして
ホールの片隅の壁際にいた
僕を見たような気がした
目を覚ました後
まるで僕の心臓が
見えない矢に射抜かれたように
激しく痛んだんだ
そう 例えるなら
僕は太い鎖で縛られ
猿轡をされて
マジックミラーの裏側から
君の立ち振る舞う姿を
見せられているようだった
片思いをした人は
こんな覚えはないだろうか
自分の視線やその何気ない素振りで
相手に勘づかれていることを
それだけ自分が不器用に
なっているということを
でも決して僕の片思いは
見破られることはない
別世界の人を想う者は
永遠に報われることはないからだ
僕は何十年も前の君のまぼろしを
見たり聞いたりしているけれど
その声はいつまでも年をとらず
こんなにも瑞々しいのに
君と僕の間の距離は
太平洋の対岸同士よりも遥かな
時の隔たりがあるんだ
宝くじ売り場ですぐ後に買った人が
一等の何億円も手にしたとしても
それは僕とは何の関係もない
凄く近くにいても
実は限りなく離れているって
そういうことなんだ
君は大当たりで輝いているけれど
僕にその光が届くことはない
僕は君という花を
繰り返し見るという
限りなく続くループの中に
閉じ込められて
そこから抜け出ようとは思わない
なんて哀れな囚われ人なんだろう
なんて愚かな想い人なんだろう




