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リミット24――死が見える男――  作者: 瀬ヶ原悠馬
第三章 ドッペル、かっこいい
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19.完

 粗里に頼んで、裸の高郷の体を風呂まで運んだ。帆野を持った浅霧は、亡骸さながら横たわる帆野の体の前で、正座になって座る。


 自分の体を見るというのは、中々不思議な感覚だった。あまり気持ちのいいものとは言えない。鏡で見るより存在感がある。


 対面にある、ゲームに出てくるようなモンスターのぬいぐるみに袖が伸び、その袖が引かれる。やがて、帆野視界が凄く低くなった。床にでも置かれたのだろう。


 今度は、こちらに袖が伸び、視界が暗闇に覆われた。やがて、五感が全て復活する。体が硬く、寝すぎた後のように鈍痛が広がっている。手を握ったり開いたりするが、やはり少し動かしにくい。


 生きる実感が、ようやく復活する。

 ゆっくりと上体を起こそうとしてる時、浅霧が肩を支えてくれた。

「ありがとう……」


 自分の声を、ようやく発せられる。

 口がまだうまく動かせなく、声も少しかすれていた。

「次は、早海ちゃんだな。約束は守るから安心しろ」

 高郷を睨みつけた。


「おぉ、怖い怖い」

 高郷は、歩き出す。粗里が後ろをついて歩いていき、しばらくして二人で戻って来る。縄をしっかり縛られた状態で戻ってきたので、少しばかりは信用できるだろう。


 恐らく、一度自分の体にでも戻ったのだろう。クマのぬいぐるみを持った。

「行くぞ」

 帆野は、浅霧と鮫島に肩を支えられて立ち上がる。外に止められていた、高郷の車に乗って、目的地の病院に向けて出発した。


   ・ ・ ・


 まだ明かりはついている。カーブ上の道路になった、膨らんだ近くに病院の入り口があり、地下駐車場に向かう右手にある通路を下り、開いているところに車を止めた。


 体を縛られた人間が一階受付を通るというのは、中々なリスクが高い。高郷に俯いてもらえれば、顔は見られる心配はないが、それはそれで怪しさはある。


 考えて末に、地下駐車場についているエレベーターから乗り込むことにして、入院している五階のボタンを押した。


 扉の上の数字が順に点灯していき、五階に近づくにつれてエレベーターの速度が緩やかになっていく。扉が開き、五人は出る。粗里と高郷は、エレベーター近くにある椅子に腰を掛け、浅霧と二人で受付に行く。


「こんばんは、面会ですか?」

「はい。早海さんの……」

「お名前よろしいですか?」


 それぞれが二人の名前を言う。

「また来てくださったのですね。どうぞー」

 看護師に頭を下げ、三人を呼んで、早海の病室に入る。看護師のおかげで、清潔に保たれていて、髪もしっかり切られている。


「早く戻せ」

 帆野は、高郷に命令した。寝たきりの早海に近づき、四人は距離をとる。袖が伸び、腕が下ろされた。


「これで目覚めるだろう。今すぐじゃないだろうがな……目覚めるまで、ここにいるか? そう時間は掛からないだろうが」

「当たり前だ」


 粗里に向き、帆野は言う。

「ありがとうございました。鮫島さんも」

「家まで送って、しっかり体に入ったことを見届けてから、離してくれますか? 一応念の為」


「おいおい、そんな事をしても意味ないだろう? いつでも能力は使える。いつでも出来る。ここで離れても変わらないだろ?」

「あんたは黙ってろ」


 粗里と鮫島は了承して、この場を去った。


   ・ ・ ・


 あれから、数十分が経過している。浅霧には事の詳細を伝えて、外で待ってもらうことにした。目が覚めることを期待して、帆野は中で待つことにする。


(頼む……目を覚ましてくれ!)

 そんな不安と期待の中、ゆっくりと目を覚ました。

「琳? 琳!」

 視界がこちらにずれた。

「しゅ……ん?」


 扉が勢いよく開かれる。反射的にそちらに目を向ける。

「浅霧さん! 駄目だ!」

「早海さん!」

 早海は、怯えた目をして、逃げるように後退し、ベッドから落ちる。全体に聞こえるほどの悲鳴を上げた。慌てた様子で、数人の看護師達が駆けつけていた。


 しかし、全員女性で拍車をかけた。

「すみません! 出ていってくれますか!」

 と、浅霧を睨みつけ、帆野と浅霧は半ば強引に押されながら部屋から出た。

「俊! 俊! 助けて! いやああああ! 来ないでえええ!」


「落ち着いてください? ゆっくり、深呼吸」

「助けてええええ! 俊!」

 帆野は病室に入り、早海に駆け寄った。

「大丈夫だ。な? やっと戻ったんだよ」

 胸に顔を埋め、服をがっちり掴んでいた。背中を優しく撫でる。


 なにがあったと言うのだろうか。鮫島は、女性からなにかされたのではないと言っていたが、そうなると、気になることがある。


(またあの女、叫んでる)

(あの女がなにかしたんじゃないか? くっくっく……弱ってる今なら、殺せそうだぞ?)

(あの男……私達を大事にしてくれるのは良いけど、変な女を連れ込んだよ)


 呪物たちの反応。この言葉が、誰を指しているのだろうか。もう一人いる。この事件には、まだ続きがある。まだ終わっていない。

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