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リミット24――死が見える男――  作者: 瀬ヶ原悠馬
第三章 ドッペル、かっこいい
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14.脅迫

 頭がはっきりしない、微睡の中、体を起こした。頭が冴えわたらない。隙間があるカーテンから漏れる陽光は、煌々(こうこう)としているものの、それによって勇気づけられるということもなかった。


 零時を周って布団の中で寝転がっていたが、結局寝入ることが出来ず、何度もスマホの時間を確認してしまった。その時に、小萱からの連絡があったことに気が付き、浅霧から確認が取れたそう。


 小萱は完全にそのことを信じたようで、心配したメッセージを送ったのだが、それに対する返事は来なかった。


 何時に寝れたのか、わからない。あれから一度も目が覚めてないが、ぐっすり寝れたとは言えない。体中に鈍痛が響いている。


 スタンドテーブルのスマホを見る。もう少しで十時になるかならないかの間。SMSの返事はきていないが、手の中でスマホが震える。高郷広明からの四件のメッセージが入っていた。どうやらスタンプのようだ。


 ロックを解除して、メッセージを覗く。

――許さない。許さない。許さない。許さない。

 今ので、一気に目が冴えた。鎌を持った可愛い死神のイラストだが、血を模した赤い文字でそれが書かれている。


(どこで気が付かれた!)

 全く心当たりがない。しかし、その詮索よりも先に、浅霧の事が気になった。

 ″あの予言が実現されてしまう″


 結界も意味がなかった。

 ロードで急いで連絡を掛ける。スマホの向こう側からは、保留音がずっと鳴り響いている。思わず、電話の主を確認してしまった。相手は、浅霧になっている。もう一度、耳にあてた。


 未だに保留音が鳴っている。切るボタンをスライドして、かけ直す。全く応答がない。危険アラームが体中に轟く中、慌てて粗里に電話を掛けた。ツーコールで応答がある。


――粗里さん? 浅霧さんは?

――浅霧? どうしたの、急に。

――高郷から連絡が来て……早く駆けつけて!


――わかった。

 電話を切り、歯磨きも細かい身支度もせず、そのまま洋服に着替えて、事務所に向かった。


   ・ ・ ・


 電車で事務所へと向かい、鉄の階段を乱暴に掛けあがる。何度もピンポンした後、扉を拳でノックをした。

「浅霧さん? 浅霧さん!」

 扉が開かれる。粗里が姿を現した。

「浅霧なら大丈夫だよ。入って」


 中に入り、一切の配慮をせずに靴を脱ぎ、左に折れた通路を突き進んだ。突き当り、右手にある扉を開き、入って右手にあるソファーに座っている浅霧の元へ行った。


「おはよう。心配かけちゃったみたいだね。ごめんね。単純に寝てて……」

 あまりの安堵感に、膝からがっくりと落ちた。

「よかった……」


「連絡したけど、見てないの?」

 と、粗里が言う。両ポケットを弄ったが、スマホの存在がない。

「家に、忘れてきちゃった……」

 粗里は微笑む。

「まぁ、とりあえず無事だってことだから、よかったよね」

「そうですね」


「見たよ、メッセージ」

「こっちにも来てたんですか?」

「うん」

 右側の視界の端に写る浅霧に動きがあったので、そちらを向くと、ポケットからスマホを取り出して、画面をこちらに見せた。


 帆野と同じように送られてきている。

「頼むから、ここにいてくれ。頼む」

「う、うん……わかったから、そんなに焦らないで?」

「俺一人でなんとかするから、な? 今日は、大人しくここにいてくれ」


「きゅ、急にそんなこ……」

 目を見開いて、その先の言葉を止めてしまった。流石に察したのだろう。

「……わかった」

 

 相手が見えない不安が、再び襲ってくる。死の予言もある。間違いない。鮫島に助けを求めたいが、やってもらいたいことが他にある。


 ここはリスクを承知で突き進むしかないだろう。考えをまとめたい。

「外の空気、吸ってくる」

 浅霧に向かって言った。

「うん……ありがとね」

「大丈夫」


 浅霧の事務所を出てすぐのところで、深呼吸をした。ドアノブを覆うようにして、扉に背中を預ける。


 人気の少ない雲が、意気揚々とする浮遊する。青天に恵まれながらも、不安と緊張が心を埋めていった。浅霧を助けるために言い出したものの、そもそも一人でなにが出来るというのだろうか。


 半ばやけになってはみたが、漠然とした不安が急に侵食するばかりで、案の一つも思いつかない。次第に、酷く醜悪な、そんな嫌な予感が心を覆っていく。


 そもそも、一人でどうにかするとは言ったが、その時は来るのだろうか。窮地ながらも、この先に一筋の希望すらないのではないのではないか。


 眼前が一切の明かりを失う。その直感はまさしく、当たってしまった。なにもない。なにもわからない。どちらかをさらえるなら、それでよかったのかもしれない。


 それが、浅霧でなくても。未来など、確定はしていない、常に状況変化があるものだということを、この身で実感してしまった。

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