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リミット24――死が見える男――  作者: 瀬ヶ原悠馬
第三章 ドッペル、かっこいい
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7.小萱秋華 前編

 帆野は浅霧のパソコンを借り、関東で起きた植物人間の怪奇事件を調べ、浅霧は鮫島にロードで連絡を入れた。その間に、ディープフェイク完了の報告が来る。


 待っている間、なにをしようかと考えている中、「あっ」と声を上げる。


「どうした?」

「既読ついた」

「早いね」

 一時的に作業をやめ、スマホを覗いた。

――急に連絡してごめんなさい。植物人間が関東で発生した事件、覚えていますか? 鮫島さんに依頼が来た人で、巻き込まれたっていう人、覚えていますか?


 画面に相手の返信が表示される。

――ご連絡ありがとうございます。その件なら、覚えておりますよ。私に依頼が来た方が、あのような事件に巻き込まれましたので。かなり驚きました。その人がどうかなさいました?


――聞きたいことがあるんですけど、その時、周りで変だなって思ったことはありますか? いつも来る心霊調査の中では、違うなと思ったとか。


――依頼は至って変わりありません。けど、異様な幽霊なら見たことがあります。その家で悪さをしている霊ではないのに、妙だなと。


 透けてはいるのに、普通の幽霊と違って存在感があるのです。重みがあるというか、悪意が強い、そんな感じにも思えました。ひどく不気味に感じた記憶があります。ですから、話でも聞こうかと思って声をかけたら、逃げるように何処かに行ってしまいました。


 幽霊にしては、消えるわけでもなく、浮くわけでもなく。一つ一つしっかりあるのです。手や足が。どこかに走って逃げてしまいました。


――その人の顔とかって、覚えてますか?

――どうでしょう。はっきりと覚えているかどうか。どうしてもお知りになりたいですか?

――はい。

 鮫島翔子ということが判明したので、調べることは止める。早速、粗里に報告しよう。似顔絵の件も気になる。


 スマホから応答があった。

――鮫島さんでした。

――そうだったんだ。じゃあ、大丈夫そうだね。

――似顔絵書ける人、見つかりました?

――ごめん、まだできてない。それより、上に上がらせていい? 聞きたいことがあるみたい。


――誰ですか?

――小萱さんです。

 浅霧をチラッと見ると、自然に反応する。

――小萱さんか……わかりました。

 電話を切り、ポケットにしまった。


 浅霧が立ち上がる。

「警察?」

「らしい。こっち来たいみたい」

「早いね……」

 感情の籠った、重い吐息を漏らす。


「優秀なんだろうな……」

「うん……まぁ、最初会った時、結構不気味だったもんね。妙に突っ込んでこないから……」

「俺も感じた、それ」

「でしょ?」


「実は、裏で画策してんのかと思ったよ」

「確かあの時、尾行してたよね」

 姉妹の事件の時、事務所に乗り込んできた小萱が帰った後の、吉田の家に向かう途中のことだろう。

「そうそう。今回もきっと、気を抜けないぞ……」


 インターホンが響く。お互いに顔を見合わせて、帆野が向かった。扉を開くと、以前と変わらない小萱の姿がある。


「入ってもよろしいですか?」

「どうぞ?」

 なにも言わず、中に入る。その後ろをついていき、行動を観察した。周囲を見渡しては、死角になってるキッチンに向かう。


 やがて、帆野に向く。

「他の部屋、ありますか?」

「一応、風呂とトイレがありますけど……」

「さっきの通りのところ?」

「そうです」

 小萱は、部屋から出る。帆野と浅霧は顔を見合わせ、俺に近づいて口を開けた。


「もうバレたのかな?」

 そう、声を潜めながらいう。

「たぶん」


 小萱が部屋に戻って来る。浅霧は、すっと自身が座っていたソファーに戻る。それを小萱は、じっと目で追いかけていた。


「やっぱり、お店ですか?」

 帆野を見ていう。

「なんのことですか?」

「匿ってるんでしょ?」

「誰を?」


「まぁ、いいです。知ってますか? あの放火事件」

「放火事件……あぁ、あの、今朝テレビでやってた」

「そうです。あなたがたが率先してやってるとは思いません。けど、下のお店に勤めている粗里という人は、裏の社会でも噂がある人です。何度か違法捜査に手を貸したことがあるとか」


「そ、そんな人を捕まえるんですか?」

 浅霧に苦笑いしながら一瞬だけ目を向けて、言った。

「さっき、裏口からノックして入ろうとしたんですけど、中々入れてくれなかったものですから。その後、あなたがたから電話が来た。試しに、こちらに伺ってみたんですが……やっぱり、いないようですね」


「さっきから、なんのこと……」

「呉さんです。ご存知ありませんか?」

「知りませんよ、そんな人」


「では、粗里さんが個人で動いてるんですかね……なにか知りませんか?」

「知りません」

 左右(ひだりみぎ)と、交互に顔を曲げる。帆野から見て左手のソファーに指を差した。


「こちらに座っても?」

「ど、どうぞ……」

 小萱は、ソファーに座る。一連の行動に不気味さを感じ、ひりついた空気と張りつめた感情の中、浅霧の隣に座った。帆野の視界には、小萱の座る姿が目に映っている。

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