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リミット24――死が見える男――  作者: 瀬ヶ原悠馬
第三章 ドッペル、かっこいい
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6.疑念

「お前ら!」

 突然、呉に呼び止められたので、振り返る。

「死神のこと、なんか知ってるんだろ?」

 浅霧と顔を見合わせる。

「一応……」


「どんなやつだ?」

「植物人間が大量に現れたって話、知ってますか?」

「当然だろ。あんなふざけた事件」

「あれに関わってた人です。何度か戦ったことがあります」


「ほぅ……話を聞きたい。話せる範囲で良い」

「たぶん、話しても信じてもらえない内容だと思います。なので、話せる内容がほとんど……」

「そうか。まぁ、なんかあった、と知れただけでも十分だ。厄介なやつなんだろ?」

「はい」


「なんかわかったら、教えてくれ」

「わかりました」

 こちらとしても、早く敵の正体を暴きたいところなので、頼まれなくても調べるつもりではいたが、呉に教えるというのは、彼のために動いたという気がして、あまり乗る気がしない。


 一度進めていた足を再び進め、三人は厨房の奥の方へと向かった。左に浅霧、右に粗里と立つ。

「なにがしたいんでしょうか……」

 ずっと疑問だった。あの議員から死神の言葉が出て以来。

「誰?」

 と、聞いたのは、粗里。


「死神です。議員に脅迫って……」

「お金が欲しくて罪を犯すようには思えなかったよね」

「はい」


「てっきり、魂が大好きで集めてたんだとばっかり……」

「俺も同じです」


「良く分からなくなってきた……早海さんだけ返さないのはなんで?」

「もしかして、誘拐みたいな形で……ってのは流石にないか」

 それに、口を開いたのは浅霧だった。


「それなら、私達に連絡が来てるし、早めにそういう話なってると思う。それに、魂を誘拐したなんて言っても、たぶん信じられない」


「確かに、無視されるだけだよな。変な思いつきを言った。ごめん」

「気にしないで。でも……変なことは変ですよね」

 と言い、粗里に向く。

「うん。今更お金ってねぇ……最初から言えばいい話だよ」


 最初から、と考えた時に、もう一度被害者に連絡するのは駄目だろうか、ということを思いつく。二人に話した。口を開いたのは、粗里だった。


「うーん……そういえば、以前に探偵として電話した時に、警察に相談されなかった?」

「た、確かに……」

「厳しいかもしれないよ」

「じゃあ、どうしましょうか……」


 しばらくの沈黙が続く。頭を巡らせた。

 脅されたかどうかの話を聞くのは、やはり顔が見えたほうがいいとも思える。なので、電話をして話が聞けるかどうか試してみたいが、当然ながら一度電話をしている上、誰が通報したかもわからないため、迂闊に電話は出来ない。


(確か……いたな)

 つっけんどな返答をされた被害者の名前を思い出してみようとする。その人かもしれない。


 頭を振る。

(駄目だ……それじゃあ)

 つっけんどな人が警察に相談しなかったにしろ、その人であるにせよ、また警察に相談しないとも限らない。


 逆上されたらと考えるのは自然だろう。どうすればいいか。

「一度、被害者に聞くことはやめましょう」

 浅霧がそういう。

「でも……」

 帆野が答えた。


「脅されたどうかは、保留ということで。今できることを考えない?」

「出来ること……」

 植物人間の被害者や誘拐ではなく、死神やストーカーの噂について、とかだろうか。むしろ、死神の正体という考えの方が近いだろう。


(……今でわかるのか?)

「……死神の正体とか?」

「正体か……」

 浅霧は、しばらく考えている様子だ。

「あっ……」

「なにかわかった?」


「ストーカーが現れたと言われた最初の被害者と、その直前の被害者ってわかる?」

「え? うーん……一番最初に俺に見せてくれた書類って、順番通り?」


「一番最初?」

「ほら、出会った時に見せたじゃん。事務所に案内されて……」

「ああ、あの時か。あれは、日付が書いてあるわけじゃないし、見つけた順からメモしただけだから……」


「そっか……」

「わかりませんか?」

 粗里に顔を向けた。

「調べないと難しいかも」

「わかりました」


 浅霧は、帆野に向く。

「じゃあ、二人で探そう」

「いいけど……なんで?」

「その服着た切り替わりって、霊感ある人に見られたからだと思うんだ」


 そこで察する。

「あぁ……なるほど。ただ、服着て警戒するほどって相当じゃない?」

「霊能者だったとしたら?」

「それなら……確かに。お祓いもできるような人だったらね」


 粗里は、「じゃあ」と口を開いた。

「その人がわかった次第、その人だけとりあえず電話してみる? じゃないと、どの霊能者が来たかわからないからね。一応、裏取ってからがいい」

「誰か、心当たりある人いるんですか?」

 と、浅霧が聞く。


「まぁ……いるにはいるけど……」

「もしかして、鮫島(さめじま)翔子(しょうこ)さん?」

「うん」


 聞いたことがない人の名前が出た。思わず聞き返してしまう。それに口を開いたのは、粗里だった。

「姉妹の事件あったじゃない?」

「あ、あぁ……」

 未来予知の動画を鑑定してくれた人、ということだろう。


「あの人、界隈じゃ結構有名な霊能者なんだよ。何気ない映像でも幽霊は見えるし、テレビ越しでも声が聞こえてしまうほどの能力を持ってる人でね。除霊もできる人」


「そうなんですね……あっ、だからか」

「そう。鮫島さんじゃない可能性もあるから……」

 浅霧が口を開いた。

「私、ロード交換してるので、聞いてもいいですか?」


「まぁ……慎重にならなくてもいいか。ごめんね……どうも職業病で。大したことなくても、ちゃんと確証取れてから聞きたいから」

 頭を触って、粗里はそう答える。

「大丈夫です」

「一応、そうじゃなかった時のことも考えようよ」


 そうじゃなかった時。つまり、鮫島ではない誰かに依頼した可能性という意味だろう。

「そうなった場合は″被害者に電話″が一番ですかね……」

「そうなるね」

「うーん……」


 もし、ストーカーの報告があった直前の被害者が、警察に相談した親だった場合、また厄介事になることは想像に難しくない。

「全員に電話かけるわけじゃないし、まだいいかなとは思う」

「そう、ですね……お願いできますか?」

「いいよ」


 電話して聞くだけ価値はあるだろうとは思いつつ、自宅ですでに霊障かなにかが発生してて、霊能者を呼んでいる人の魂をわざわざ盗むだろうか。


 たとえ、その霊障がわかり、問題が解決した数日後にまた訪れるということがあり得るのだろうか。誰でも良かったなら、その人に固執する必要はない。


「その後、どうするの?」

 粗里の言葉で、ふと我に返る。浅霧が口を開いた。

「もし霊能者の人が顔を見ていたら、似顔絵がかけるかもと思いまして」


「なるほどね……浅霧さん、描ける?」

 急な沈黙が訪れた。視線が帆野に集まったので、首をブンブン横に振って、全力で否定をした。

 浅霧は、粗里に向く。

「粗里さん。誰かいます?」

「ま、まぁ探してはみるけど……」


 現状、不確定要素があるものの、話がまとまった。被害者にもう一度話を聞いてもらうよう交渉するのは粗里に頼むとして、浅霧と帆野は、ディープフェイク完了の報告と、被害者の植物人間になった順番を調べること。


 帆野と浅霧は、事務所に戻り、早速パソコンで被害者の順を調べた。

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