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リミット24――死が見える男――  作者: 瀬ヶ原悠馬
第三章 ドッペル、かっこいい
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3.5 過去 後編

 しばらくの沈黙の後、浅霧が声を発した。

「帆野さんは? どういう人?」

「うーん……普通の人だよ。俺の前では、一切喧嘩しないで、俺のために金を貯めてた人。まぁ、喧嘩しないって言っても、俺が寝てる時に二人でよく話し合ってたところ、たまたま見たことあるんだけど」


「良い人なんだね」

「まぁ……大学まで進学できるように、金も貯めてたみたいだけど、俺はなんていうかね、無理してるようにも見えてさ。


 だからといってね……高卒ですぐに就職しても、親を安心させられないって思って、本を読むのが好きだったし、過去に職場体験でもしたことがある、図書館に就職したくて、短大にね。まぁ、めでたく就職は出来たけど、その先でいじめられてね……」


「そう、だったんだ」

「人の死が見えるって言ったじゃん? アレで、社員の女の子が、自殺するところをたまたま……」

「助けたの?」

「別に、全く話したことなかったわけじゃないし、様子が変だったところも感じてた。だから……なんとか、助けたくて……」


「うん」

「結局……」

「そっか……相手の人は、なにで悩んでたの?」

「わからない。なにかあった? とか聞いても、大丈夫って言うだけだし、向こうから避けてるような気がしたから、俺もそれ以上言えなくて。最後に、死ぬことだけはするなよって伝えたんだけど……」


「帆野さんがなにかした……とかじゃないよね?」

「あぁ、後になってそれも考えて、いろいろ思い返してみたけど、思い当たる節は……」


 と、答えては見たものの、そもそも帆野自身がなにかをした立場の人間だった場合、嘘を付いて当然だろう、と思ってしまった。


 以前にそう考えて、頭を悩ませたこともあったため、またその疑いが浮上して余計に不安になった。


 それがあって、人の死にはあまり関わらないようにしたのだ。とはいいつつ、無視し続けるのもまた、どこか罪悪感もあって、流されるようにbarでは能力を生かした仕事をしてしまった。


「そうなんだ」

「まぁ、辞めてよかったよ。俺、ずっと嫌われてたしな。全員じゃないけど」

「え?」


「悪口、言われてたんだよ。だからね……」

「ねぇ、それって……」

「なに?」

「帆野さんじゃなくて、自殺したその子なんじゃない?」

「……え?」


「その女の人がずっと言われてて、その中に帆野さんが入ってきたとしたら……」

「あ、あぁ……」


 帆野自身が作った弁当を持っていくときと、早海が作ってくれた時の弁当には、気にしている人間ならわかる差があったかもしれない。


 凝った昼食の弁当は、早海が余裕ある時に作ってくれていた。その弁当を見て、周りは″彼女がいるくせに″と、思っていたのだろう。


 それ以降、帆野は彼女にあまり関わること無く、過ごしていた。ただ、その矛先は帆野自身に向いていた。その態度を見て、相手は″聞いている″と察したのかもしれない。一度始まれば、収まることを知らない。


 そのことは、早海に相談できなかった。変に気を使わせてしまうと思って。


「ストレートに言うことになっちゃうけど、ごめんね。帆野さんが関わったから、その人が病んじゃったのか、言われてる中で助けてくれたと受け取ったのか……私はわからない。


 もしかしたら、帆野さんのせいでエスカレートしたのかもしれないし、その女の人は、帆野さんに向いたことで、申し訳ない気持ちがあったのかもしれない」


「どちらにしても、俺が引き金を引いたかもしれないな……」


 過去のはっきりしない不安の最中、barでは言葉に気をつけながら、前に進む意図でやってみたが、そんなときよりも、不謹慎ながらに気持ちが晴れていった。


 浅霧は口ごもってしまい、答えなかった。

「可能性はあるよな? 仕事上とは言え、俺が話したことでエスカレートしたのであれば、俺のせいだし、相手が助けてくれたと受け取っていたとしても、結局追い詰めたのは俺だ」


「……私は、わかってるから大丈夫だけど、早海さんと帆野さんの関係を普通の人が見たら……」

 と、途端に驚いたような表情をして、言葉が止まってしまう。

「どうした?」


「ううん……たぶん、付き合ってるって周りは思うよ。二股掛けてるみたいなこと、言われたことない?」

「ある」

「でしょ? 相手の人から、なにか聞かれたりした?」

「付き合ってるとか、確かに……」


「そういうことだと思う。相手の人は、素直に受け取ってないと思うけど……弁当まで作ってくれて、付き合ってないって言ってもって、なると思う」


「その辺もしっかり、話したけど……疑われるよな」

「だと思う。帆野さんが悪いとか、相手の人が悪いとは言えないけど……なんか、しょうがない感じがする」


「ありがとう。心の(つっか)えが取れた気がするよ」

「ううん、私も、話聞いてもらったし」


 話が終わったそんな時、浅霧のスマホが震える。電話があったようだ。画面に表示されたのは、吉田という名前。もう出来たのか、と思うほど早い仕事だ。


「わかりました」

 と、浅霧が答え、通話が切れる。

「なんて?」


「なんか、アプリ送るから、それをパソコンにインストールしてって。映像ファイル、そっちで送りたいみたい」

 そういって、奥の部屋へと進んでいった。

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