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リミット24――死が見える男――  作者: 瀬ヶ原悠馬
第二章 蝿、付きまとう。
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14.焦り

 これからどうしようかとも思ったが、結局のところ相手が誰であるか焦って行動したことによって被る害があるため、保守的な行動をせざるを得なかった。各々がじっと座っている。


 無理もない。やみくもに探してなにも得られなく、ゾンビや犯人に迫られる状況であるというなら、この安全な空間を少しでも保つ方が合理的ではある。口に出すこともなく、皆がじっとしているだけのところを見ると、この考えなのだろう。


 しかし、そうは言ってもこうしているだけでじれったくなっていった。解決しなければならない問題がある中、残酷にも時間は刻々と過ぎていく。


(これで本当にいいのか?)

 心の中で葛藤がせめぎ合っている中、衝動的な気持ちを抑えることが難しくなっていく。


「こうしたってなにもかわらなくないですか? なにか行動しないと」

「そう言われてもなぁ」

 正平が言う。


「わかってます。でも、ここにいたってゾンビに襲われないとは限らない」

「私はまだ、信じているわけではありません」

 景子が言った。無理もないことだ。ましてやこの旅館に協力者がいる。


「とりあえず、わかっている人だけを捕まえませんか?」

「何人いるかもわからない状況で、一人だけを捕まえてなにになる」


 焦燥感が募っていく。湧き上がる衝動の行く先は、貧乏ゆすりに昇華された。そんなとき、外から突然悲鳴が聞こえる。一同がこの玄関の扉に向く。抑えきれない衝動は、それをきっかけにして体が反射的に動いた。


「どこに行く!」

「正平さん、そうはいったって助けなければ」

 動機や行動、全てはこの部屋から出ることで一致した。

「おい!」


 聞こえた先は右側。受付側といったところだろうか。そこへと駆け足で急ぐ。受付の隣の扉を開いて、厨房へ入った。


 暗くなった部屋には人影が一つもない。歩き回って倒れている人がいるかどうか確かめてみたが、ゴミ一つ見当たらない。


 整理整頓された理想の厨房がそこにある限り。あとに入ってきた正平とは目が一切合わない物の、こちらを向いているのがわかる。


 中央のテーブルを乗り越えるようにして、急いでいる姿を見て背後を振り返ると、そこには包丁を掲げた女将がそこに立っていた。


 思わず女将に対面したまま後退するも、躓いて尻もちをついてしまった。しかし、おかげでもったナイフの腕を掴むことでき、包丁を捨てさせて羽交い絞めにした。

「こんな時なんだから、助ける人を選ばないと。いい人を見せるときじゃない」


 言葉が出なかった。そもそも待機している間、この先の展開を考えた時に本当にこのままでいいのかという疑問が、足を動かせた元凶。その葛藤に耐えきれなかった未熟さが原因。一歩間違えていたら死んでいたかもしれない。


 眉間にしわを寄せ、鼻息を荒くして羽交い絞めにされている女将に問い詰めた。

「お前か? 睡眠薬を盛ったの」

「だからなに?」

「なんの目的だ。言ってみろ」

「言うわけないじゃない」

「儀式のことだろ」


 目をそらす。その行動を見逃さなかった。

「心当たりあるのか? さすがに言えないか?」

「一応確認しておきたいんだけど、外でゾンビがうろついてることは知ってるか?」


 驚いた様子もない。鍵を閉めたのは、もしかするとそういった理由も含まれているのかもしれない。一石二鳥だったのだろう。そういって鍵を閉めさせたのかもしれない。


「知ってそうだな。じゃあ、なんで儀式のことで俺を襲わなくちゃならない?」

 再び視線を逸らす。少しばかり、暴れる様子もあった。

「離してよ!」

「そうはいかないのわかるだろ?」

「まぁ、話さないなら話さないでいい」


 正平が入ってきたところにいる、浅霧に顔を向けた。

「縄みたいなものって確か、ありましたよね?」

「はい」


 と言って景子と浅霧、殻屋三人で厨房を後にした。女将を羽交い絞めにしたまま、正平と一緒にその後へと続いた。玄関から扉を叩く音が聞こえる。


「なんだ?」

 そちらの方へと目を遣ると、高郷が立っていた。玄関から入って階段側の通路ではなく、曲がって左にある通路から高郷は出てきたようだ。


「ああ、高郷さん」

「どうした? それ」

 羽交い絞めになってる女将を見て、ギョッとしている様子だ。


「包丁で襲われましてね」

「はあ、怪我はないようだね」

「で、玄関にいるのはゾンビです」


「ゾンビ?」

 反応からして驚いているようだ。

「逃げないとまずくないか?」

 呪物マニアなのか、ゾンビという存在もすぐに飲み込んだようだ。

「ついて来てください。人数が多い方が良いですから」

「お、おう」


 帆野と浅霧が泊まった、部屋へ着実に一歩一歩向かった。

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