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リミット24――死が見える男――  作者: 瀬ヶ原悠馬
第一章 誰か、中にいる。
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15.仲直り

 監視カメラの録画映像を入手するため、依頼したハッカーの場所に行く。浅霧と帆野、粗里の二手に分かれた。二人の向かう先は高速道路を使うため、少しばかりの遠出になる。


 高速に向かうために、車通りが多い道路を駆け抜けていく。窓越しに見慣れた町並みを助手席から見て、これからのことを復習した。


 本当であれば調べ終わるまで待機していてもいいのだが、制限時間ということ、一人で録画のデータを見続けるのもミスが増える可能性があり、浅霧と帆野を入れて三人で確認することになる。


 もし小萱の訪れがなんらかの揺さぶりであるならば、尾行をしてくるだろう。二手に分かれるということが、良い目くらましになるだろうかと予測はしていたが、どちらに行っても都合が悪い。もし、つけられているのであれば、巻くことも考えなければならない。


 東京から群馬への高速道路へ向かう途中、バックミラーを凝視していた帆野は浅霧に伝えて、同じ黒い車が後をつけているのを確認し、脇に停車させて過ぎていくことを待つ。

(あぁ、これで疑いが濃くなったな)

 もう後戻りはできない。再び発車させて、高速道路へと入っていった。


 直線距離が続いていく中、一息ついた帆野は大して変わらない景色を眺めていた。ふと、浅霧の様子が気になる。ここまで一切の会話がなく、じっと見るわけにもいかないので、意識だけを向けていた。


 粗里曰く”任せてください”と言ってはいたが、信用できるのだろうか。冷戦が続いている中でハッカーの元へ行けば、相手にも空気感が伝わってしまう。


 それでは失礼ではないか。しかし、努力してもなお浅霧は振り向くことはなかったため、こちらから話しても結果は変わらないだろう。


 ため息に似た鼻息をする。断続的に続く、ガタッという音が段々と心地よくなってきた。

「あの」

 と、思ってもいなかった浅霧から声をかけられた。

「はい?」

「嫌われたのかと思って」


「え? なんで?」

「あんまり、慣れてなくて」

「いや、あれは俺が悪かったので、気にしなくても」

「反射的にとは言え、怒鳴ってしまったから」

「なんで浅霧さんが落ち込むんですか?」


「それは、そうなんですけど。今までこうしたことがあるとそのままにして、話もしなくなったなんてことやってきて。わからなかったんです」

「は、はあ」

「”君の気持ちを率直に伝えればいいんだよ”って言われたので、言ってみたんですが」


「伝わってますよ。てっきり、怒ってるのかと思ってました」

「まぁ最初はなんで伝わらないんだろうって思ってましたけど」

「だから、別に謝らなくても」

「はい」


「そんなんで人を嫌いになったりしないので、考え過ぎですよ」

「ありがとうございます」

「お礼なんかいらないよ。っていうか、琳とよく続きましたね」

「喧嘩しなかったので」

「まぁ、あいつは話し上手だからな」

「そうですね」


 早海の話をして、反芻(はんすう)するたびに気持ちが沈んでいく。それと同時に、奥深くから湧き上がってくる怒りの感情。


 早海だけは返されない。何故なのか。他の人間とどう違うのか。ストーカーと言うのであるから、もしかしたら恋愛的な強い感情があって返さないとでもいうのだろうか。


「早海さんは、帆野さんのことを頼りにしていないわけじゃないですよ」

 突然、浅霧から予測もしていなかったことを言われて、思わず聞き返してしまった。


「”対等でいたい、一緒に頑張りたい”そんな風に言っていました」

 言葉も出ない。恐らく、過去に早海がいじめられていた時に助けたのが一番の要因だろう。


「でも、付き合ってはないんですね」

「そう、ですね」

 確かに早海から告白はされた。しかし、帆野がそれを拒んだ。決して嫌いでもなく、無関心というわけでもない。


「聞いてもいいですか? そこは話してくれなかったので」

「単純に、いじめから助けたことによって付き合う、なんだか下心があって助けたように感じてしまって、そんな風になるのが嫌だったんです。たぶん俺のことだから、ずっと気にするような気がして」


「そうなんですか。ずっと、気にしていたものですから。唯一無二になれた代わりに、自分のせいで彼女が出来ないんじゃないかって」

「そんなことは」

(だから、なのか)


 過去に、何度か”私のことは気にしないでね”と言っていたことがあった。早海からの愚痴は、少ししか聞かないために話しつつも悪い気持ちも抱いていた。


 その反面、距離を取ってしまっては相手に無駄な気遣いをさせてしまうため、気にしないよう普段通りを心がけて接していた。


「早く助けましょう」

「ですね」

 助けて、お互いに今まで話せなかったことを話そう。心にそう誓った。


「そうそう」

 浅霧が声を掛けてくる。

「はい?」

「さっき粗里さんから連絡があって、”上手く行った”って」

「それはよかった!」


 恐らく、帆野が景色を見ているときに連絡がきたのだろう。

(中々切り出せなかったんだな)


 これで監視カメラの映像と合わせて、死体の隠し場所がわかれば詰めることも可能だろう。移動が二時間と行きと帰りで掛かるが、四時間もあれば十分だろう。期待を膨らませて群馬県へと入った。

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