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儚い神話の再起

とある国の()()()の天使に協力している過激な宗教の教会…そこが1人の少女によって終わった


「はあ、いくら壊して殺して脅しても、なんでこの宗教は崩壊しないの~」


教会内は血生臭い匂いで充満していて、壁や床には血だまりがこびりついており。辺りには体に風穴が開けられている死体が数十人乱雑に散らばっていた


「服に血の匂いが付いちゃったかな…まあ、お気にいりの服じゃないし、別にいっか」

金色の短い髪の少女は教会を後にしようとした。しかし途中で内ポケットにしまっていたスマホが震えた、確認をすると仕事の依頼のメールだった


「へぇ…」

依頼の内容を見て彼女はすこし笑みを浮かべた…そして彼女が教会から出ようとしたその時、屋根を突き破って10人の鉱石型の天使が舞い降りてきた。しかし彼女の周りからいくつもの光の光線が放たれ、すべての天使の核を一瞬で貫いた


教会の外に出た彼女はマッチで火を放ち、証拠を隠滅した

(私は対天使局じゃないから、ちゃんと非合法な行為は自分で隠さないいけないんだよね。めんどくさいよ、本当。やっぱ大変だな「殺し屋」って)


そして、再度彼女は依頼のメールを確認した…

「でも、久しぶりだし楽しみ。待っててね天否」




----------------------------------------------------------------



ショッピングモールの件から4日が経ち、白姫も天否との生活に馴れてきた。情報屋から依頼と情報を貰い、情報を基に天使を殺して依頼料をもらう。そんな日々を過ごしていた2人は4日ぶりにリンナから呼び出されて、対天使局へとやって来た


「いや~、2人とも仲良くやってるみたいだね」


「何の用ですか?」


「いや、分かるでしょ~。今日は白姫ちゃんの運命の日なんだから」


「その件ですか。まだ判断してないけど、今のところ断る予定です。別に俺の家で面倒を見る意味ないし」


「本人が居るところでその事を話せるのは逆に流石だよね。まあ、今回失敗しても、完全にお別れをするわけでもないし。変に焦って嫌われちゃう方が怖いし」


今日は天否と白姫が出会ってから1週間。すなわち天否が白姫の居場所になるかを判断する日だった。しかし、天否が断ってもリンナが面倒を見るため、現状、別に断ってもいいと考えている


「それで、用ってそれだけじゃないですよね」


「ええ、もちろん。あなた達宛の依頼が合ってね。これなんだけど」

そう言って、リンナは1枚の紙を天否に渡した



最強の嫌われ者へ


今日の暮れ方にあなたを殺しに行きます。

周囲を巻き込みたくなければ人気のな居場所に居てください。            

                  最強の殺し屋より



紙にはそう書かれていた。天否はため息をつき、立ち上がった

「しょうがないですね。この依頼、引き受けます」


「うんうん。ありがとう、死なないように気をつけてね」


「難しい頼みですが…まあ頑張ってみますね。それじゃあ白姫、準備しに行くよ」

そう言って、天否は局長室を後にして、白姫は困惑しつつリンナにお辞儀をして天否を追って外に出た






天否と白姫はバイクで数時間かけて人気のない山奥にやって来た


「「最強の殺し屋」ね…やっぱり強いの?」

森の中の教会に罠を仕掛けながら白姫はそんなことを質問した


「天使なら知ってると思うけど、この世界に「最強」の称号を持っているのは5人だけ。1人を除いて全員、最上位の天使を容易に相手できるような人しかいない」


言葉の途中で白姫が「あまり自分を卑下しないでね「最強の嫌われ者」さん」と呆れながら口にしたが、天否は無視して話を続けた


「例としは「最強の天使殺し」のリンナさんは最上位天使を3人瞬殺してる。俺も…昔に2人の最上位天使を同時相手して倒してる。「最強の殺し屋」の彼女も2人の最上位天使を瞬殺してる…結構昔だから情報としては古いけどね」


「厳密にはどれぐらい昔なの?」


「たしか…彼女が7歳の時だったかな。ついでに今は19歳だよ」


「ほお…え?! 天否と同い年じゃん。というか知り合いなの?」


「うん、幼なじみ。名前は神東(しんとう)神喜(かき)で戦う時の注意点は予備動作なしで放つ光線。けど弱点が無いわけじゃないから今罠を張ってる」


「幼なじみって本当? 今、命狙われてるんだよ」


「真意は知らない、けど戦うことにはなると思うよ。そういう奴だから」


その後も白姫に神喜の性格、使える技、癖、エピソードなどを話しながら罠を設置していった。そして気づけば日が暮れていた



(相手は殺し屋だ、不意打ちは得意中の得意だから常に警戒しないと一瞬で終わる)


(了解、連携は相手に悟られないようにテレパシー。罠の位置も全部把握できてる、こっちの準備は万端、いつ来ても対応できる)

白姫がそう思った瞬間、空中から凄い天力を感じ2人はとっさに横に飛んだ。そしたらさっきまで2人のいた2ヶ所に空中から2人の2倍以上の大きさの光線が放たれた


(意地でも致命傷になる部位は動かし続けて!)


天否が白姫にそう指示した瞬間、教会の外から無数の光線が放たれた。大きさこそないが数が多く、致命傷は避けたものの白姫は腕に一発あたってしまった

「ぐうっ…」

(これが…話しに聞いていた『質量を無視して貫通する光線』…とっさに羽で盾を作ったのに簡単に撃ち抜かれた)

白姫がそんなことを考えている最中も攻撃が止むことはなく。白姫は痛みを堪えながらも、なんとか回避に成功していた


(白姫…外にでるよ。神喜相手に遮蔽物は意味ない)

白姫は天否の方を向いて軽く頷いて、近くの壁を破壊して外に出た。天否も攻撃を避けながら出入り口から外に出た


外に出ても誰の姿もなく、いくつもの光の塊が宙に浮いていた

(天否、これってなに?)


(神喜が使う天術の1つ。この光の塊を通して建物内の俺達の動きを見てたんだと思う)


(なら、いま相手は近くにいないの?)


(近くにはいる、天力を感じてから光が放たれるまでに0.03秒のラグがあった、おそらく300m内にはいると思うよ)

そして、白姫は光の塊を天術で破壊して。天否は煙幕を使って2人の動きを見れないようにした。その上、白姫達の天力を放射する矢を周囲に放ち、天力で場所を把握することも難しくした


しかし…その程度では足りなかった


(?! 全力で煙幕から出て!)

天否がそう指示したと同時に白姫は全速力で煙幕の外に出た。天否もワイヤーフックを使い煙幕の外に出た。すると天否が外に出た瞬間に空から放たれた巨大な光線が煙を全て消し去った


(相手は空にいる!)

天否からそう知らされると、白姫は羽を解放して、無数の光線を避けながら上空に飛び上がった


途中で何発か食らってしまったが、なんとか致命傷と羽は防いだ。そして雲の上から下を見渡していた少女を見つけて速攻で無数の矢を放った


放った矢は全て迎撃されてしまったが、白姫は「最強の殺し屋」と向かい合うことに成功した


「遠くから一方的に攻撃するなんて、卑怯ですよ殺し屋さん」


「ごめん、ごめん。真っ正面から天否に挑んだら、罠と策略で負けちゃうかもしれなかったからさ」


白姫が神喜と話して最初に感じた印象は「普通に明るい女の子」だった。しかし白姫は感じていた、彼女から感じる天使のような()のようなオーラは格が違うと


「さーて、そろそろ整地も終わったかな。天否に時間を与えるのは悪手だし。落ちてもらうよ」

次の瞬間、神喜は白姫に近づき腹部に一撃を与え、白姫はその勢いで下に吹き飛ばされた


白姫は姿勢をただして再度飛び上がろうとするが、上空から数発の光線が放たれると同時に下からも光線が放たれた

(まずい!)


しかし、光線は白姫に当たらなかった…

「え?」

白姫は困惑しつつ、そのまま地上に落下し天否にキャッチされた


「神喜はどうだった?」


「なんか…思っていたよりも普通の人だった」


それを聞いたら「そうだよね」と呟いて白姫をおろした


そして上空からゆっくりと神喜が降りてきた

「久しぶり天否、元気にしてた?」


「さあ? よくわからない」


「相変わらずだね~…それじゃ、いくよ」


そして神喜の周りからさっきの倍近くの大きさと数の光が放たれた。しかし、天否も白姫もこの攻撃には慣れてきていたため、全て避けれていた


「まだまだ!」

そう言うと地中からも光が放たれ始め、白姫は体勢を崩してしまって、それを天否が支えようとした時に足が滑り、白姫のことを押し倒してしまった…


「うっ…ごめん。滑った」


「大丈夫、私が転びそうになったのが悪かったんだし」


すると、なぜか止んでいた攻撃が急に再開して2人は再度分断された


「ん?」

そして神喜は天否に後ろから抱きつき、耳元で「浮気者」と囁き、天否を囲むように無数の光が放たれた


(避けられない、まずいかな)


そして無数の光線が天否のことを包む込み、白姫は心配そうに天否の名前を呼んだ。しかし光が収まると、そこに天否の姿はなく。何気ない顔をして白姫の後ろに立っていた


「今のはヤバかった。すこしでも遅れてたら怪我してたかも」


「え? どやってあそこから抜け出したの?」

そしたら天否は「これ」と言って手を見せた、そして人差し指に指輪を着けていることに気づいた


「なるほど、たしか瞬間移動もできるんだっけ?」


「うん、でも「右手の人差し指」の力はルミの時の「右手の薬指」と比べてあまり戦闘向きの力じゃないから」


「わかった、攻撃は任せて」


すると、神喜が歩いて近づいてきた

「作戦会議は終わった? なら再開するよ」


「ああ。白姫頑張って慣れて」

そう言って天否は白姫のことをお姫様抱っこで持ち上げた。白姫は最初は少し動揺したがすぐに天否の意図を理解し、神喜は「むーっ!」と頬を膨らませた


「もー、いいよ! そんなことしちゃうんなら、こっちもやってやりますよ! オラクルム!」

そう言うと、さっきまでとは比べ物にならない程の神々しい光線が今まで以上の数と速度で2人のことを囲んだ


「これは?」


「さっきまでのはただの光の天術、そしてこれが本来の神喜の力である、質量を無視して貫通する光 「オラクルム」だよ」


そう教えながら天否は瞬間移動でオラクルムを避け。白姫は穴を見つけては矢を放っていた。しかし矢が届く前にオラクルムに巻き込まれ神喜に届くことはなかった


「私じゃ、正面から打ち勝てない。なにか案ある?」


「…ためしに神喜の超至近距離に飛んでみようかな?」


「わかった、合わせて攻撃してみる」

そして、少し攻撃を避けてから天否は神喜の背後に瞬間移動し白姫は天力を集約させた矢を神喜に放った


しかし神喜はとっさに振り向き、光の槍を作り出し矢を弾いた。神喜の攻撃が一旦止まったため、天否は白姫をおろした

「危ない危ない」


「数で押そうとする癖は、まだ治ってないね」


「確かにね。でも、本調子じゃない天否からその子を引き離すことぐらいはできるんだよ」

次の瞬間、神喜は天否達に向かって手に持っている槍を投げた。天否は瞬間移動で用意に避けたが、神喜は移動した先にオラクルムを放った


(しまった…今の俺の瞬間移動の速度程度じゃ、神喜は見切れる)

そして、次の瞬間移動が間に合わずオラクルムが直撃した…



----------------------------------------------------------------


走馬灯なのだろうか…今でのことが頭の中でフラッシュバックする。私がまだ、この世界に来る前のこと、大事な家族がまだ生きていた頃の事を…


私の母は創生神の権能を受け継いだ、ほぼ神のような天使だった。私に弓の技術や細胞を創生する治療術などを教えてくれたのは母だった


だけど、私は父の事をよく知らなかった。どういう人なのかは知っている、優しくて人のために平和のために努力を惜しまない人だ。何をした人かも知っている、母と協力して堕天使達を殲滅した勇者だ。


だけど、父の使う力を私は知らなかった…


父の使う力は、珍しい力らしい。「教えるのは…まだ早いかな」何度もそう言われた。当時の私は母の創生術と弓術だけで手一杯だったので気にしていなかったが、両親達があの災厄に巻き込まれて消滅した後に、私は父の力の方を多く受け継いでいるとわかった


「…ここは?」


見渡す限りの海と夜空に浮かぶ無数の月、そんな不思議な空間で目を覚ました。混乱していると緑髪の小学生ぐらいの少女が近づいてきた

「はじめまして白姫。私はラジ、天否の契約天使だ」


返事をしようとしたが、ラジが喋り始めてしまった


「急ですまないな、天否の天力を通して君の精神に接続した。とりあえず、ここは君の精神界だ。いや、君には「天域」といった方がわかりやすいかな」


「天域ですか? でも」


「そう、君は自分の本質的な力がなんなのかを知らない。だが、別に天域が存在しないわけではないだよ。ただ認識できないだけだ」


それを聞いて私は周囲を見渡した。不気味なほど多いい月、その月の光に照らされ夜空とは思えない程明るい海

「まったく何の力なのかわからない」


「まあ仕方ないさ、天域は力よりも精神の在り方に影響される。私の契約者の精神界なんて真っ白なだけだ」


「そうですか、父の力の手がかりになると思ったんですけど…」


でも、初めて自分の天域を見れた。これで少しは進歩できたかな

「そういえば、なんで私は急に自分の天域に?」


「私が引きずり込んだからだ。これを渡すためにな」


すると、ラジさまは1枚の紙を渡してくれた。その紙を受けとると急に過去の記憶がフラッシュバックした。幼い頃に誘拐されかけて父が助けてくれた記憶、その記憶の中に父が戦ってる姿がぼんやりと映っていた


「今のは…」


「私からの慈悲だよ。授業を受けずにテストに挑まされてるような状況だったんだよ、君は。まあ、答えを教えるわけにはいかないがそれが何の力かは理解できただろ」


そう言って、ラジさまは私の手に目をやった


「確かに、これは扱いが難しい力ですね。けどなぜかうまく扱える気がします」


「そうか、そろそろ行くといい。目を覚ました瞬間が勝負だ、刹那の迷いも遅れも許されない」


「はい…ありがとうございました」

そして私は目を閉じて…そして目を開いた



----------------------------------------------------------------



オラクルムが2人にあたる直前に白姫が矢を生み出し、オラクルムを受け止めた


「なっ?!」


神喜は目を丸くして驚き。天否は自分の理解の追い付かない状況に困惑していた


「ううっ!」

(重い! 質量とかじゃない、概念や因果の格が違う…。けど関係ない!)


そして、次第に矢の先端の光が強く大きくなり…そして矢から溢れる光が剣の形となった


否定の剣(ネガティオ)!」


その剣の光を突き出すと、神喜のオラクルムが完全に打ち消された


(今しかない!)


オラクルムが消されて動揺していた神喜に向かって、白姫は手に持っていた矢を思いっきり投げた


しかしギリギリのところで神喜は槍を生み出しその矢を弾いた

(あぶなっ!)


そして神喜が白姫の方を向くと、矢先が白い光の剣を弓に装填して構えていた

「終わり!」


神喜は動揺していたため、槍を雑に扱い。そのせいで2発目の白姫の攻撃を防ぐことはできず。心臓を撃ち抜かれた

「いたぁ!」


最後にそう避けんで神喜は倒れた…


「やった…の?」

(勝った…勝てた! 最強相手に勝てたんだ!)


白姫は振り向き天否に抱き付こうとしたが、意識が遠ざかり倒れてそうになってしまったが天否が支えた


天否の体温に安心した白姫は、そのまま眠ってしまった


「お休み白姫。借りができちゃったね」



----------------------------------------------------------------


白姫が目を覚ますと、辺りは暗くなっており。山奥ということもあり星がよく見えた


「起きた?」


「う…ん」

白姫は少し寝ぼけながらも、状況を確認する

(体は倒れていて、横を向いたら天否の腹部が見える。頭にあたる感覚は地面ではなく、暖かさを感じる。これは…)


「膝枕…?」


「うん。地面に寝せたら、寝心地悪いでしょ?」


「そっか、ありがとう」

そう言って、白姫は星空に目をやる…


「白姫は使ったことのない力を使ったから、力の制御がうまくいかなくて、天力が底を尽きたんだ。今は俺の天力を与えたから意識は戻ってるけど、動くにはもう少し待たないといけない」


「そっか。ねえ、いま答えを聞いても…いい?」

白姫はそう言った。その声は小さかったが辺りが静なため天否にはよく聞こえていた


「…そうだね。白姫はなんて答えが欲しい?」


「私は…天否と別れなくて済むならなんでもいい」


「そっ。1つ聞いてもいい?」


「なに?」


「なんで俺なの?」


「…なんでだろう。私にもよくわからない。だけど、おかしいと思うかも知れないけど、初めて会った時に天否と…あなたと一緒に居たいと心から思ったの」


「運命」天否の脳裏にはその言葉が浮かんだ。なぜなら、天否も白姫と同じことをあの瞬間に感じたからだ。最初は癖で感情を殺していたが、白姫と過ごすうちに一緒に居ることが普通と思うようになっていた


天否は性格的に本能や直感というものには期待していない。だから、さっきまで客観的な結論を出そうと思っていた…。そして、それから何も変わっていない。だから天否の答えも変わっていない


「…天否、私は一緒に居たい」

そう言って白姫は手を上げた…


天否の心からの答えは変わっていない…最初から決めていた…


その手を…握った

「いいよ」


その答えを聞いた途端に白姫は体を上げて天否に抱きつき。天否も手を回して白姫を抱き締めた…


((こんなに人肌を心地よいと思ったのは…初めて))


2人とも心の中でそう思った…




その後、2人の時間を過ごしていると、リンナからメールが届いた。内容は「祝杯を上げたいからいつものファミレスに来て」というものだった


「まったく。あの人はどこから情報を手にいれているのだか」


「いつもみたいに部下に見張らせていたか、普通に隠れて見てたのかもね」


そんなことを話ながら、2人はリンナに指示された店に向かった



----------------------------------------------------------------

「おーい。2人ともここだよ~」

店に着くと、すでにリンナやルジが席に着いていて。天否と白姫も席に着いて飲み物を頼んだ


「それじゃあ、人も揃ったことだし。白姫ちゃんの思いが届いたことに…乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」


そして、全員用意した飲み物を飲んだ。リンナの隣に座っていた少女は炭酸をイッキ飲みをして苦しんでいた

「げほぉ…炭酸の一気は辛いな…ごほぉ」


「大丈夫? 俺達の祝杯で苦しんでほしくないんだけど」


「辛いよ! 辛いに決まってるよ! 負けて、心臓を撃ち抜かれて。そのまま放置だよ!? リンナさんに拾われるまで泣いてたんだよ!」


天否はそっぽを向いた…。そして、あまり触れていなかったが、白姫は我慢できずに聞いてしまった

「あの…神喜だよね? 最強の殺し屋の」


「白姫ちゃんは、さっきまで殺し会っていた相手の顔を忘れちゃったの? ああ! 自己紹介はしてなかったね」


「いや、天否から聞いてるから大丈夫」


「ガーン!?」


「というか、なんでここにいるの? なんで生きてるの?」


「いやいや、心臓が撃ち抜かれた程度じゃ人は死なないよ?」

神喜がそう言うと、天否とリンナも頷いた


「そう…だったの?」


白姫が信じそうになった時にルジが「安心して、多分白姫の常識の方が正しいから」と言って、白姫が間違った常識を覚えることは防がれた


「まあ、単に心臓の強度を強化しただけだよ。怪我は天術で治せるし。痛いのは慣れてるからね」


「それって凄くない?」


「普通に凄いよ。そこの最強3人の「簡単」とか「普通」は一般的には異常だからね」


「そうなんだ…ちなみに心臓を作り治すのって、この世界では普通?」

 

「白姫もそっち側か~」


そんなことを話していると、頼んでいた料理が届いた


天否はみんなで分けるような大きいサラダ

白姫は抹茶かき氷

ルジは唐揚げ5人前

神喜は季節限定のケーキ

リンナはライスのみ


それぞれの料理を受け取り自分の前に置いて、再度神喜が喋り始めた


「とりあえず、間違いで殺しちゃいそうになったのは謝るから2人とも許してね! ね! ね!」

そう言いながら正面に座っている白姫に顔を近づけた


「「間違い」って天否のことを殺そうとしてたんじゃ?」


「私が幼なじみを殺すわけないじゃん。まあ、ちょっっっと熱くなって殺しちゃいそうになったけど…」


「? じゃあ、あの予告は…?」


すると、リンナが小声で「飲み物取ってくるわ~」と言って抜け出そうとしたのを天否が引き留めた

「リンナさん。今日奢ってくれませんかね?」


「えぇ~」


「ね!」


「はい…わかりました」

それを聞いたら天否は白姫の方を向いて「犯人への罰はこれだけで許してあげて」と言った


「もしかして…」


「いや、ね。死線を越えたら天否の答えも変わるかなって、ね」


「…まあ、私も獲るものが会ったので奢りで許しますけど。天否は気づいてた?」


「まあ、手紙の筆跡が違ってたから」


「やっぱり知ってたんだ。教えてよ」


「忘れてた」

そう言った天否を軽く小突き「気をつけてよね」と笑いかけた


「ついでに私が勝ったら白姫ちゃんの変わりに私が天否と同棲していいことになってました!」


「あれ? そんなこと許可したっけ?」


「私が許可したのよ?」


「リンナさんが許可する権利ってあった? それに神喜って世界を飛び回ってるから、ほとんど日本にいないじゃ…」


「そんなの関係ない!」

神喜のその言葉で会話は終わらせられた


その後も会話は盛り上がり。話題は白姫の能力に関するものとなった

「あの力はヤバイわ。初めてだよオラクルムを打ち消されたのなんて」


「確かに。あの時は俺も動揺してた」


「私自身も驚いてた。天否、今度ラジさまに感謝を伝えてくれない?」


「ラジ様に? なんで?」


「ラジさまが私の昔の記憶を見つけてくれて。そのお陰で力の片鱗を掴めたんだ」

 

「そっか…わかった。でも、ラジさまは俺の中から見てると思うから、伝わってるよ」

 

「そうなんだ…じゃあ」

白姫は天否の方を向いて頭を下げ「ありがとうございました」とお礼を言った


「これで伝わった?」


「…「暇潰しだ。気にしなくていい」だって」


「そっか…でも、ありがとうございました」

白姫がそう言って笑顔で笑った。それを見て他のみんなもつられて笑顔になった


「そういえば…天否って眠ってなくてもラジ様と意志疎通できるぐらいには回復したんだね」

そう言いながら、神喜はドリンクバーの飲み物を組み合わせただけなのになぜかどす黒くなっている飲み物を「うん!よくわからん!」と言って飲み干した


「あぁ…白姫と抱き合った時に精神が結構回復したんだと思う」

それを聞いた途端に神喜は持っていたコップを握り割ろうとしたため、とっさにルジが神喜からコップを取り上げた

「…? 神喜、どしたの?」


「ず、ず、ず、ズルい!!」

そう叫んだ途端、テーブルを飛び越えて、天否に抱きついた

「私にも抱きついて!」


「わかった」

そう言って、天否は神喜を抱きしめた

「はぅぅぅ…幸せ~」


「もういい?」


「こんなの知ったら、天否なしでは生きられなくなるよ~」

まったく離れようとしないため、ルジが無理やり引き剥がして、さっきまで座っていた席に戻した。しかし彼女は自分の世界に入り、俺達は彼女を放置して解散することにした


----------------------------------------------------------------

みんなと解散した後に、白姫の提案で2人が初めて会った場所である湖に向かった


「懐かしいね。1週間前のことなのに」


「俺はあまり思い入れはないんだけど…でも、確かに懐かしく感じる」


すると、白姫は天否の手をとって湖の真ん中へと飛んだ。真ん中に到達すると天否は不思議な術を使い、2人は湖の上に立って星空を見上げた


「満月…」


「キレイだね」

月明かりが白姫に照らされる…白く美しい鶴のような姿に、月明かりはよく似合っていた


「ねえ、わがまま言ってもいい?」


「なに?」


「この戦いが終わったら、私の家族の墓を作ってほしいの。母と父…そして産まれるはずだった妹の…礼音(レーネ)


その名前に天否は不思議と懐かしさと無性な悲しみが溢れてきたが、根拠のない感情を抑え込むことは容易だった


「いいよ。すべてが終わったらね」

天否は深くは聞かなかった…それを聞くときは、自分の過去を話したあとにすることにした


互いに見せたくない部分は見せない…今はそれで十分…


満月を見ながら2人は自分の最悪の記憶を思い出していた。今なら乗り越えられる気がしたから



妹が産まれる瞬間に世界が滅び…感動が絶望に変わった記憶


家族のように愛してくれて、そして愛していた人達を自らの手で殺してしまった記憶


夜風にあたっているはずなのに寒いとは感じなかった



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