無色の天使殺しと白色の「■」
彼女を見て最初に頭に浮かんだ動物は「美しい白い鶴」だ、短く切り揃えられた白い髪に白色の巫女衣装、そして本当に鶴のように美しい羽が背中から生えている
そんな彼女は、湖の中央に浮きながら美しい羽を開いて月を見上げている
そして俺は今から彼女を…殺さなければならない…
大丈夫。俺に感情は無い...無色の心なのだ
そして俺は彼女に銃口を向けた…
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神魔天否はとある人物から情報を入手し、その情報をもとにある場所に電車で向かっていた
変わり続ける外の景色を眺めながら天否は1ヶ所に目を向けた、そこの空は歪な程に神々しかった
(次で降りよう)
そして天否は次の電車の駅で降りて歪な空の地点に向かった、バスを使ったら案外早く着くことができた、歩きなら日が暮れていただろう
(…気配はするけど小さい、下級の天使なのかな)
歪な空の地点には放棄された小さなビルが建っていた。看板を見るなり老化が原因で撤去するらしいがそんな様子はまるで無く、ほとんど作業は進んでいなかった
「それじゃあ入るか」
天否は柵を乗り越えてビルの中に入ったが柵を越えた瞬間にまるで現実では無いような空間に変化した
「天域が張られているってことは、間違いないかな」
持っていた鞄の中に手を突っ込み銃と銃弾を取り出して銃弾の数を数えた
「装填してる銃弾が16発でそれ以外の銃弾が100発、この先のことを考えて使う銃弾は40発以内にしたいな」
そう独り言を言いながら天否は銃を構えて、警戒しながらビルの中に入っていく…
ビルの中は撤去予定の建物ということもあり廃れていた
(人の気配はしないな、まあ俺の気配察知はザルなんだが)
天否は1階を隙間無く捜索したが2階に繋がる階段以外は何もなく、何も起こらなかった
(これ罠だよね、多分、というか確実に…)
「はぁ」とため息を吐きながら階段を上り始めた
2階に着くといきなり何かが飛び掛かってきたが天否は事前に何かあると踏んでいたので慌てること無く回避した、そして周囲を見渡すと羽の生えた白い狼が数匹こちらに威嚇をしていた
聖獣、悪魔の眷属の天使版みたいなもので姿形は様々、生み出した天使の力量や時間によって強さも変わる
「7匹か、見た感じこのビルは3階建てだからこの先に天使がいるので間違い無さそう」
聖獣達が天否に飛び掛かるが天否は後ろに飛んで回避し、飛んだ際に銃を構えて1体の聖獣の頭に弾を撃ち込んで殺した
「急所とはいえ普通の銃弾で1撃で倒せるってことは、やっぱり下級の天使だった」
そう天否が独り言を言っている間にも6匹の聖獣が天否に攻撃をし続けているが天否は焦らずに避け続けていた
「…そうだ時間がないんだった、情報通りの時間までに到着しないといけないからな、少し急ご」
そして飛び掛かってきた3匹の聖獣を蹴り飛ばし壁に激突させて、それぞれの聖獣の頭に弾を撃ち放った
「あと3匹…一気に終わらせるとしよう」
天否はバックの中からあれを取り出し、残りの聖獣の方向の天井に向かって思い向きり投げた、そして聖獣が天否の方に飛び掛かろうとした瞬間…
ドーン!!!
天否の投げた手榴弾が爆発し崩れた天井が聖獣を押し潰した、そして天否は空いた天井から3階に上がった
「よいしょっと!」
3階に上がると本来のビルの階層よりも遥かに大きい教会のような空間に出た、そして階段の方を見ると天術による罠が張り巡らせていた
「やっぱり罠を仕掛けてたね、天井を壊しての登ってきて正解だったよ」
すると神聖な気配を近くに感じた…
「daレダkisaマ?」
「言語能力が低い、やっぱり下級だったね」
声の方を向くと人の形のクリスタルで顔部分の内部には黄色い球体があり背中と腕と足から羽が生えていて宙を浮いている「天使」が天否の事を見ていた
「通りすがりの天使殺しだ、ということで…殺すとしますか」
次の瞬間、天否は天使に向かって手榴弾を投げたが天使はどこからかクリスタルを放ち迎撃して空中で爆発した、煙が立ち込めるなか天使は天否に向かいクリスタルを放ったが手榴弾を投げたあとにすぐに動いていたので当たることはなかった
「doコダ?」
「ここだよ」
そう言った天否は天使の宙を浮いている天使の少し上の上空に現れて銃を向ける、そして天使が反応するより早く天否は引き金を引いたて顔部分の内部の球体を撃ち抜いた
頭の球体を撃ち抜かれた天使は地面に落下して砕け散り、天否はかなりの高さだったが難なく着した、すると周囲の空間が歪み少し経ったら廃れたビルに戻った
「さてと、駅に戻るか、9時に間に合うかな、まあ3時だし間に合うかな」
そして天否はビルを出て駅に向かった、そして1時間かけて目的地の山に到着し、5時間かけてその山を登った
そしてある湖についた、そして湖の中心に月明かりを浴びている少女が月を見上げていた。天否は彼女に銃口を向けて迷わず引き金を引いた…
しかし銃弾が天使の近くに到達すると天使は振り向き、そして一瞬で湖に大量の鶴の羽根が現れた。そして銃弾はそのまま勢いを失い湖に落ちた
「…相当ヤバい相手だ、少しやる気を…」
天否が鞄の中から道具を取り出そうとしたら、いきなり目の前に湖の中心にいた天使が現れた。天否は驚いて動くことができなかった
「あなたは私の居場所になって…」
その天使の声は透き通っていて静かだけど存在感があるそんな印象に残る声だった
そして気づいた時には辺りには誰もいなかった、すると空から1枚の鶴の羽根が落ちてきた、天否はそれを手に取り鞄の中にしまった
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あの後、天否は住んでいるアパートに帰ったのだが、早速不思議なことが起きた
「???」
「?」
なぜか湖にいた筈の天使が天否のアパートの中で羽根を隠(体の中に収納)して正座で座っている
最初は困惑したが天否は我に戻って銃を取り出そうとした
しかし、天使が「まって」と言って天否は手を止めた。いつもの天否なら天使に何を言われようが気にせず撃つのだが今回は不思議と撃つ気が無くなってしまった
「天使の君が天使殺しである俺に何のよう?」
「さっきも言った「居場所になって」って、だから今日からここに住む」
「…うん、ダメ」
「何で? こんな美少女と暮らせるんだよ? 見た感じ一人暮らしだよね? それに家事も全部できるよ…多分」
「それでもダメ。色々とめんどくさくなる」
「…ヘタレ?」
「ちがう」
「じゃあ何で?」
「天使を匿っているって、対天使局にバレたら俺の人生が死んじゃうから」
「でも君って個人で天使殺しをしてるんでしょ? ならいいじゃん…」
そしたら天使は悲しそうに下を向いて悲しんでいる、天使のあまりにも人間らしい言動や雰囲気に天否も少し心が傷んだ
(お人好し…お天使好しだな、俺って)
「…仕方ない、1週間以内に俺の心を動かせたらこれからも住ませてあげる」
それを聞いた天使はゆっくりと顔をあげて天否のことを見つめた、その目元には少し涙が浮かんでいた
「本当…?」
「本当だ、俺の心を動かせたら君の居場所を提供してあげる。心を動かせたらだけどね」
「対天使局は? バレたら君も世界の嫌われ者になっちゃうんだよ」
「俺はすでに嫌われ者だし。対天使局は割と優しいから君次第だけど何とかするよ」
「ありがとう、1週間君の心を動かせるように頑張ってみるよ」
「うんうん。そういえば名前は?」
「私は白姫。君は?」
「俺は天否、神魔天否だ、よろしく白姫」
「うん、よろしくね、天否」
そしてお互いに手を握った、その後天否は荷物を置こうとした時にキッチンにいろいろな材料が入ったビニール袋が置かれていることに気がついた
「これって白姫の?」
「ああ、それは今日の夜ご飯ようの材料、安心して、お金は私が持つから」
「それは流石に悪いよ…えっ、まって白姫ってお金持ってるの?」
「うん、お金無しでは生きていけないから頑張ってバイトで稼いでるの」
「書類とか国籍とかはどうしたの?」
「なんかよくわからない人が用意してくれたんだ。本当にあの2人には感謝してる」
「あー、そうなんだ…へー、まあいいかな、今まで大丈夫だったんだし」
「まっ、とりあえず天否に私の料理の腕前を見せてあげる、ささっ、君は座って待ってて」
そう言われたため天否は荷物をおいてリビングで銃弾を補給したりして数十分時間を潰していたらキッチンの方からいい匂いが漂ってきた
「天否、ご飯の準備できたよ」
そう言って白姫はご飯とお味噌汁、そして焼き鮭を2人分持ってテーブルに並べた。そして2人で「いただきます」をして箸で焼き鮭を口に入れる
「おお、普通に美味しい。凄いね」
「ありがとう、この世界に来て試しに料理をしてみたら意外と楽しかったんだ。それでバイトも料理関連のにしたし、将来は料理人になるのが夢なの」
天否はその言葉に驚いて箸を止め、白姫の方を向いた
「白姫って天使なんだよね? なのに人間みたいに生活したいって思ってるの?」
「うん、私の目標は今のこの世界で人間として生きることなんだよね。だから他の天使とは普通に敵対してるの、他の天使は世界を天使達に有利になるように改変しようとしてるからね」
「そうなんだ…白姫は何でそう思ったの?」
「何でって? なにが」
「何で白姫は、この世界の人間になりたいと思ったの?」
「そうだね…強いて言えばこの世界を…この世界の人々が綺麗だと思ったからかな…」
そう言って白姫は天否の顔を見て微笑んだ。そしてその後も2人で親睦を深めるためにいろいろと話ながらご飯を食べた、実際友達ぐらいの仲にはなることができた
「それじゃあそろそろお風呂にしよっか、天否、先に入る? それとも一緒に入る?」
白姫は声のトーンを変えること無く「一緒に入る?」と言ったが、天否は「1人で先に入る、お湯も張り替えとく」と言って風呂場に向かった
「…私って可愛いと思うんだけど、何でだろう?」
そう言って白姫は自分の胸に目を向ける、小さくはないが大きくもない普通の大きさだ、次に腰回りに目を向ける、細いがちゃんと肉はついている
「…よくわからない」
天否がお風呂から出てお湯を張り替えてる間も2人で話していた、そして自然と話の内容が「天使について」になった
「天否達が言ってる天使ってね、この世界の下位世界の最高位の存在達なんだよね」
「下位世界?」
「やっぱり知らないよね、本来は知れない情報だもんね」
「知らないから今から教えてくれるんだよね?」
「うん、天否は「ヒエラルキー」って知ってる? ピラミッド型の上下関係の構成。実は世界にも上下関係があるんだ、明確には生まれた順番だけど。例えば私達天使の生きていた世界って今いるこの世界に生まれた者によって作られた世界…だから私達の世界は必然的にこの世界よりも下の存在になるってことなの。これを「階層世界」や「連想世界」って言うらしい」
「へえ…話の規模が大きすぎてあまり理解できてないけど、なんとなくは理解できた…かな」
「まあ、この世界の下に私達の世界があったってことを理解してくれたらいいから」
「うん、それならわかった」
「それで私達の世界は結構発展していて、本来超越者にしか出来ない上位世界への超越を1部の存在は1つ上に限定して可能にしたんだ。それが今この世界にいる天使達ってこと私達の世界では天使上りって呼ばれていたよ、下級の天使でも私達の世界では相当凄い存在だったんだよ」
「そうだったんだ、まあ後は何となく予想できるよ」
「うん…天使達は自分達の生きやすい世界に改変しようとした、そして今に至ると言うこと、まあある程度の情報は1部の対天使局の人も知ってるとは思うよ」
「そうだよね、個人だったし良くしてもらっている対天使局の人ともほとんど話さないんだよね」
するとお風呂のアナウンスがお風呂が沸いたことを知らせた、それを聞いた白姫は立ち上がり「それじゃあ入ってくるね」と言ってお風呂場に向かった
(白姫のことを信用…していいのかな…この1週間で見極めよう)
そしてお風呂から出た白姫はパジャマを持っていないということで天否のパーカーを貸してあげた、その後天否の部屋にベッドが1つしかないことに気づいて白姫は「一緒に寝る」と言ったが天否は「逆に眠れなくなりそう」と言って、結局のところ天否が床で寝ることにした。