98話 鉱山に戻って来たぞ、オイ
鉱山にはそれ程時間もかからず到着した。
飛空挺のスピードがとにかく速いのだ。
ネルに聞いたのだが、この世界には、個人的な魔法やスキルは別として、空を飛ぶ乗り物は存在しないらしい。
そう言えばホリーも空飛ぶ馬車に最初はめちゃくちゃ驚いてたよな。
て事は、空飛ぶ馬車よりも速いこの飛空挺なんて、完全なオーバーテクノロジーだよな。
そんな事を考えつつ・・・
・・・さて、帰ってきたか。
飛空挺は鉱山の入口付近に降り立った。
俺達は元奴隷の60人を連れて鉱山へ入って行った。
「遂に帰って来たか・・・」
・・・まあ、鉱山を出てから大した時間は経ってないんだけどさ。
しかしここには『遂に』と言いたくなるくらいに積もる恨みがあった。
個人的には、出来れば二度と来たくない場所だったのだ。
・・・まあ、ホリーと出会えたのだけは感謝するけどな。
だって労働は過酷だし、鞭打たれるし、飯はクソマズイわ少ないわで空腹も満たされず、冷たい岩盤に寝かされて体温は持っていかれるし、遂には後数分で死ぬ所まで追い詰められたのだ。
・・・アールのお陰で助かったけどな。
≪あの時はホントに酷い状態だったわよね≫
「今はそう悪い場所では無くなっておりますよ!」
出迎えた偽スパがそう言った。
・・・そりゃお前が責任者なんだし、そう言うよな?
しかし実際のところ、一見何も変わっていないが、実は偽スパの言う通り、とんでもない魔改造が施され超快適空間へと変貌していたのだ。
まず、入ってすぐの所に、隠し通路があった。
「こちらが関係者入口です」
隠し通路から先は、完全に地球の現代建築そのまんまだった。
通路の壁と床は総大理石で高級感が漂い、天井には埋め込み式の電灯が灯っていた。
そして100人以上収容出来そうな巨大なエレベーターは、天井からシャンデリアが吊り下がり、辺り一面キラキラとした、それはもう豪華な内装だった。
60人の元奴隷達は初めて見る光景に目をキョロキョロさせながらもエレベーターに乗り込んだ。
ミミも大きな目をまん丸にして興味津々の様子だ。
「ここが・・・カガリの秘密基地・・・驚いた」
「だろ?ははは・・・」
・・・まあ俺自身も驚いてるんだけどな。
エレベーターで降りたのは何と地下300階だった。
・・・どんだけ深いんだよ!
エレベーターを出るとそこには、驚く程綺麗な街並みが広がっていた。
しかもそれは現代日本の閑静な住宅街っぽい街並みだったのだ。
区画は綺麗に整備され、道はアスファルトで綺麗に舗装されている。
そして新築の庭付き一戸建てがズラッと並んでいた。
「ここは・・・?」
「ここは一般労働者の居住区です」
「マジかよ?!」
・・・アール、良いのかよ?この世界の人にここまで超科学を見せて、しかも住まわせるとか・・・
≪別に?街並みは日本だしね。超科学って言うよりはカガリの住んでいた世界の再現って感じだから特に問題無いわよ?≫
・・・そうなの?
まあアールが良いなら俺的には何の問題も無いけどさ。
偽スパは、近くの公園に俺達を案内した。
広くて綺麗に整備された公園だ。
・・・はあぁ。ここはやけに心が落ち着くな。やっぱり見慣れた日本の風景だからかな?
公園には俺がリクエストしておいた元鉱山奴隷達が集まっていた。
彼らは、鉱山に売られて来た段階で奴隷からは解放済みだ。
そして、この住宅街に家を与えられていたのだった。
彼らは互いに駆け寄って再会を喜び合った。
みんな嬉し泣きしていたな。
そりゃ生きて会えるとは思って無かっただろうし無理もない。
これで、ブラボンヌに攫われた人達はほぼ全て揃った。
残念ながら、鉱山に運ばれる途中で命を落とした人が数名いたらしく、彼らの身内達は泣き崩れていた。
可哀想だけど、こればかりは仕方ない。
みんなが落ち着くのを待って、俺はみんなに今後自分達がどうしたいか聞いた。
俺の中では、事前に大きく3つのグループを想定していた。
まずは、このまま鉱山に住んで、鉱山運営スタッフとして働くグループ。
採掘要員じゃないので過酷さは無い。
それに偽スパには、ホワイトな運営にするよう指示しているので、むしろ働きやすくて楽しい職場になっている筈だ。
住む所だって、さっきの庭付き一戸建てだぞ?待遇の良さが分かるだろう。
地上に行き場が無い人にとっては悪くない選択だと思う。
予想通り、元鉱山奴隷とその身内達は、ここで働く希望者が多かった。
次に、実家や故郷など、帰りたい場所がある人達のグループ。
彼らについては、これから、1人づつ飛空挺で送って行くつもりだった。
まあ、いくら飛行艇が速いと言っても、トータルで数日はかかるだろう。幸いホリーの方も姫の都合で数日は動けないみたいだし問題は無いだろう。
最後に、鉱山に残る気が無く、帰る場所も無い人のグループ。
彼らには支度金を多めに渡して、主要な街まで送ってあげようと思う。
金さえあれば、あとは自分達で何とかするだろう。
しかしもう一つ、想定外のグループが現れた。
俺の下に残りたい人達のグループだ。
60人中なんと30人もいた。
しかも全員が若い美人。
その中にはあの紅髪赤眼のダントツ美女、ミラもいた。
何でも、俺に命を救われたから恩返しをしたいらしい。
『そんなのは気にしなくて良いから!』
そう言ったけど、彼女たちの決意は揺るがなかった。
アールとミミは希望者を受け入れる事に賛成だったので、俺も渋々OKした。
渋々ってのは、なにも彼女たちの事が嫌だって訳じゃ無い。
なんとなく、彼女たちがアールの『大ハーレム帝国』構想の一員に組み込まれそうな気がしたのだ。
俺はアールに聞いてみた。
・・・それってつまり・・・そう言う事なのか?
≪当然!そう言う事よ。カガリについて行く子達は、全員、ハーレム要員に同意しているわ。別に無理やりじゃ無いわよ?みんな、奴隷から解放してくれたカガリの事を好きになっちゃったんだって!≫
・・・好きになっちゃったって・・・そりゃモテモテなのは嬉しいけどさ、俺ってば新婚さんだよ?ネルにぶっ殺されるわ!
≪ブルーネルもカガリを独り占めする気は無いって言ってたじゃない≫
・・・限度があるわっ!いきなり30人なんてやり過ぎだろ!
≪まあ、そう言うと思って、取り敢えずは別の仕事に就いてもらうわ≫
・・・別の仕事って?
≪ふふふ、カガリのだーい好きな・・・じゃじゃん!!メイドさんよ!≫
・・・別に好きでも何でも無い・・・や、やっぱ少しは興味あるかな?・・・少しだけだぞ!
≪ほーら来た!だから私に任せておけば楽しいハーレム生活をカガリに約束してあげるわよ!≫
・・・だああぁぁ!どんどんアールのペースになってる気がするううぅぅ!
≪あと、ミラはメイドじゃなくて、商売担当になりたいんですって≫
・・・商売担当?
≪ええ。ミラは商家の娘で、商売の勉強の為に一人旅をしていたのよ。だから、飛空挺で街を巡るついでに交易をして稼ぎたいらしいの≫
・・・稼ぐって、別にウチは金に困って無いだろ?
実は俺が支配しているスチル鉱山はとんでもない優良鉱山で、超科学の技術を駆使して様々な鉱物を採掘する事が出来たのだ。
そしてかなりの荒稼ぎに成功していた。
≪それはそうなんだけどね。ミラは恩返しのつもりで申し出てる訳だから無碍にするのもどうかと思って。勿論、カガリがハーレム専属にしたいって言うのなら、そう伝えるけど?≫
・・・だあぁ!そんな事、一言も言ってないからな!商売担当最高じゃん!大いにやってもらおうぜ!




