96話 ドッキドキの初夜だな、オイ!
誓いの決闘が終了して、結婚式は終了した。
そして飲めや歌えの大宴会に突入したのだった。
・・・お前ら、ドバシェックの調査はマジでほっといて良いのかよ?
なんて言いながら、俺ってば虫以外の食事や酒を提供しちゃってる訳だが・・・
だって現地の虫料理や虫酒はイヤなんだもん!
「何じゃい?このとんでもなく美味え食いモンは?!」
「ウメえ!酒ってこんなにウマいモンだったのかよ!」
めちゃくちゃ盛況だった。
そりゃそうか。
みんな美味しい食事するのって生まれて初めてだもんな。
こりゃコイツら余計にドバシェックなんかに行ってる場合じゃないよな。
ブルーネルが言うには、ランクの高い冒険者は既に調査に向かっているらしい。
因みにブルーネルは別の依頼が入っていたのでドバシェックには行かず残っていたのだそうだ。
けれどそのおかげで彼女と出会い、そして結婚まで出来たのだから、巡り合わせって分からないものだと思ったよ。
今、宴会している冒険者達は、ドバシェックの調査に加わっても『追加要員』としての参加になるので、正直、仕事的には美味しくないんだって。
まあ、ドバシェックは今やもぬけの殻で危険も無い訳だし、特に俺が騒ぎ立てる必要も無いだろう。
それに、
・・・みんな楽しそうだしな。
冒険者達は勿論、ブルーネルも俺の隣で楽しそうにしている。
ミミもそうだ。
美味しそうに俺が提供した肉串を頬張っていた。
アールはというと・・・リーンズと酒の飲み比べ対決をやっていた。
・・・何やってんの?
≪だって仕方ないでしょ?リーンズがプロポーズして来たんだから。だから飲み比べで私に勝ったら結婚してあげるって言っちゃったのよ。ノリで!≫
リーンズは最早、顔を真っ赤してフラッフラだ。
一方、アールはと言うと、相変わらずの完璧なる無表情だった。
顔色ひとつ変わっていない。
そりゃそうだ。
アールの体はナノマシン集合体で出来てるんだからな。
酔う訳ないよな。
・・・それってズルじゃないか?
≪ブルーネルからあっさり私に乗り換える程度の奴なんだから問題ないわ。むしろ良い薬でしょ?≫
・・・それなら俺だって、ブルーネルと結婚しながらホリーを想ってるんだぞ?二人同時に好きなんて、リーンズよりヒドくないか?
≪カガリは大ハーレム帝国の皇帝を目指してるんだから、その程度当たり前よ。むしろもっと沢山の女の子を同時に愛さないといけないんだからね!≫
・・・いやだから、それは別に目指しちゃいないんだが・・・
そしてリーンズは、ぶっ倒れたのであった・・・
宴会は夜更けまで続いた。
ホリーには事前に音声通話で今日中には合流できない旨を伝えておいたのだが特に問題は無かった。
ホリーの方は無事、姫と再会できたらしい。
けれど、姫は今、重要な職に就いているらしく、ワインブルーを離れるのに最低でも数日はかかるそうなのだ。
だから、合流はそれ程急がないでも良いらしい。
それは俺としても有り難かった。
ブラボンヌから奴隷を助けたけど、助けっぱなしで放り出す訳には行かないからな。
少なくとも、彼女達を希望の場所へ送り届けるくらいの事はしてあげたい。
ブルーネルは既に受けている依頼を片付ける為、明日旅立つらしい。
一緒に行ってやりたくもあるけど、1人で問題無いと言われてしまった。
『私はS級冒険者だぜ?カガリには負けちまったが、それでもこの世界じゃ最強に近いんだし心配要らねえよ!』
だってさ。
まあそりゃそうか。
勝ちはしたけど、あの攻撃力は凄かったしな。
て事で、ブルーネルとは今夜、初夜を迎えた後、一旦お別れなのだ。
初夜か・・・
・・・どうしよう。
俺は・・・ビビっていた。
夜も更けて、宴会はお開きとなった。
アールとミミは、ブラボンヌの家で泊まるってさ。
そして俺はブルーネルと、この街の最高級宿屋のスイートルームで1泊する事になった。
2人で宿屋に向かう間、2人共、無言だった。
俺は緊張し過ぎで話す余裕が無かっただけなのだが、ブルーネルは何で?
「・・・旦那様、なんか巻き込んじまって、ゴメンな?」
謝って来た。
何でいきなり?
「何で謝るんだ?」
「だってよ、今更だけど、私達って今日出会ったばかりだぜ?私は自分の気持ちに従って突き進んだ結果だから幸せで一杯だけどよ・・・旦那様は迷惑じゃ無かったか?」
「今さらそれ言うかよ?」
「・・・悪い」
「全然悪く無いよ。確かにあの場の雰囲気とか勢いに流されたのは否定しないけどさ。でも決断したのは俺自身だし、嫌だったらどんな状況でだって絶対にOKなんかしないしな。逆に背中を押されたからこそ一歩踏み出せたんだ。それに、俺はブルーネルに運命的なものを感じてるんだよ」
「運命的なもの?」
「うん。俺は別の世界からこの国に召喚されて、右も左も分からないまま、仲間である筈の奴らに裏切られて、勇者の称号を剥奪された。そしてこの世界で唯一、頼りに出来る筈のこの国からも捨てられてしまった。あの時はホントに心の底から絶望していたんだよ・・・まさかあの時、そんな境遇の俺に同情してくれて、しかも勇者達に直接非難までしてくれた人が居たなんて、当時の俺は想像すらしてなかったんだ・・・だからブルーネルの話を聞いた時、心の底から嬉しかったんだよ。あの頃の俺の心が救われた気がしたんだ・・・今、強くなった俺を見た上でなら同情してくれる人は多いと思う。でも、あの時、ただ落ち目の存在でしか無かった俺に同情してくれる人がどれだけいるか?・・・今の仲間たちの事は信じてるけど、それでも、もし出会い方が違っていたら・・・ただ弱いだけの、死に行くだけの俺と出会っていたなら、果たしてどうなってたんだろうって考えると、怖くなる時があるんだよ」
ブルーネルは俺の手を握って来た。
「大丈夫だ。旦那様はそりゃ強いかもしれないけどさ。心はそうじゃないだろ?だから私が守ってやるよ。あの時、私がクビ覚悟で勇者に噛み付いたのは、弱いものイジメってのが大っ嫌いだからさ。騎士団長たる者『弱きを助ける』っていう騎士道精神を遵守しないとな。まあ今はそんなの守りもしないロクデナシのクソ騎士ばっかだけどよ。けど私は不器用だからさ、上とぶつかってでも信じる道を曲げたくねえんだ」
「ブルーネルはホント、凄いヤツだよ。益々好きになった」
次の瞬間、俺はブルーネルに顔を両手で掴まれた。
グイッ!
そして、強引に・・・
チュッ!
ブルーネルに唇を奪われたのだった。
・・・ああこれ、俺がやりたかったやつだったのに・・・
チューーー
キスは続く。
柔らかい感触が口全体を包む。
そして甘い感覚が俺の体全体を包み込んだ。
・・・でも、されるのだって悪く無い。
突然始まった甘い時間は一向に終わる気配が無かった。
・・・ヤバい、脳が蕩ける・・・ずっとこうしていたい・・・
いつまでそうしていただろうか?
とにかくずっとキスしていた。
最初は向こうからされたけど、俺からもやり返した。
ブルーネルは俺の拙いキスも優しく受け入れてくれた。
ずっと永遠に続けたい気もしたけど、俺はだんだん我慢出来なくなって来た。
「ブルーネル、宿へ行こうか」
「あ、ああ」
しっかりと手を繋いで再び歩き出した。
ブルーネルの手は震えていた。
俺だって震えているさ。
しかし、少し違和感を感じた。
ブルーネルが少しフラついたのだ。
「大丈夫か?!」
「ああ、大丈夫だ。旦那様とたっぷり愛し合えるだけの体力は残ってるぜ?」
どうやら、俺との戦いで思ったより激しく消耗していたらしい。
確かにあの時、かなりの大技をこれでもかと繰り出していたからな。
今まではずっと痩せ我慢していたのだろう。
「ごめん、気づかなくて・・・」
「大丈夫だって!明日からしばらく離れちまうんだ。初夜くらい、旦那様と思う存分愛し合いたいんだよ!」
「そうだな。じゃあ部屋に行こう」
宿に着き、部屋に入った。
どんな部屋か?どんな事はどうでも良かった。
俺達は愛し合った。
とは言っても、キス以上の事はしなかった。
俺は超科学でブルーネルの体力回復に努めたのだ。
超科学は傷を治す事は簡単に出来るのだが、体力や魔力を補充するのは簡単では無かった。
なぜならこの世界の人々の体力や魔力などの仕組みは、アールの国や地球人とは全く違っていて、この世界独自のモノだったからだ。
それでも、俺の治療によって少しずつは良くなって行ったようで、ブルーネルは徐々に元気になっていった。
俺はブルーネルとキスして、治療して、またキスしてを繰り返しながら朝まで愛し合ったのであった。
外の時は暗くて見えなかったけど、部屋では回復治療の必要から部屋の明かりをつけていた。
なので治療中もキスの最中もブルーネルの顔や姿がハッキリと見えていた。
ブルーネルは・・・ホントに心から綺麗だった。
まさに俺にとって女神そのものだ。
俺達は見つめ合ってキスをした。
ブルーネルの目から『炎脈』の姿は消えていた。
「ファルはそんな野暮じゃねえよ」
・・・だってさ。
≪私も口は出してないでしょ?≫
・・・けど覗いてはいるんだよな?
≪覗くなんて失礼ね?観察よ観察!≫
・・・はいはい、じゃあ存分に観察させてやるよ!
俺は女神と再びキスを繰り返した。
それは俺とブルーネルにとって最高の初夜になった。




