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93話 いきなり決闘かよ!オイ!

俺はブルーネルにめちゃくちゃ好感をいだいた。


彼女がスピーリヒル城での俺の悲劇を知っていて、しかも凄く同情してくれていた事はすごく嬉しかったし、六条とケンカしてクビになった事だって、六条のせいで地獄に落とされた俺と重なる部分があるし、とにかく彼女には好感以外の感情は湧かなかった。


ブルーネルも俺の事を気に入ってくれたようで、


「よし、すぐに冒険者登録するようゴリ押ししてやるからな!」


と言ってくれた。

実に頼りになる存在だ。


こういう姉御系の女性って、周りにいないので新鮮だな。


そして冒険者登録の為、俺たちは再び受付に戻って来た。


ブルーネルがギルド職員に何やらまくし立てている。職員の厳ついおっさんは・・・顔を青くして直立不動だ。


・・・ブルーネルの奴、どれだけ恐れられてるんだよ?


程なくして、冒険者登録される事に決まった。

ようやく当初の目的が果たせるよ。


登録は簡単で、必要事項を記入して、仮の冒険者証に、自分の血を一滴落とすだけだ。

すると、自分だけの冒険者証が完成するのだ。


けどさ、血って、アールの体はナノマシン集合体で出来てるんだぞ?血なんてそもそも流れてないんじゃ・・・


心配して見ると、あれ?アールさんってば普通に血を一滴落としてるんですけど・・・それって誰の血かな?


≪私の血よ?ダミーだけどね。その程度の偽装くらい余裕よ!≫


・・・だよね、アールだし。心配して損した。


しかしここで思わぬ難敵が現れた。

ミミだ。


「嫌・・・血出すの・・・痛い」


血を出す為に指先を切るのが痛そうで怖いらしい。


魔将軍のヒットハイドを撃破した強者が一方でその程度の事を怖がるなんて、やっぱりお子様だな。

実に微笑ましいぞ!


「仕方ないなー」


俺は、お兄ちゃん気分で、魔法をかける素ぶりをした。


すると、

ミミの爪の間から、ポトリと一滴、血が落ちた。


「カガリ・・・すごい!・・・ありがとう!」


「どういたしまして!」


種を明かすと、ギルドに来る前の騒動の時に、ブラボンヌに飲まされた睡眠薬を無効化する目的でミミの体内に潜ませていたナノマシンを使ったのだ。


そして爪の間から血が出るように細工した。

当然、痛みは無いようにね。


これでミミの冒険者登録も完了し、俺たちは晴れて冒険者になった。


冒険者はランク制で、最上位がSS級で、1番下はH級になるらしい。


しかし、SS級ってのは3人登録されているのだが、全員が生きているのか死んでいるのかすら分からない状態らしい。


なのでブルーネルのS級が実質最高位なんだとか。


因みに俺は初心者なのでH級だった。


そしてアールは・・・F級だってさ。


・・・何で?!


≪ダミーの血に細工したのよ≫


・・・ズルじゃねえか!!


≪本来ならSS級以上の実力なのにF級で我慢してやったんだからズルとは言わないわね≫


・・・どんな理屈だよ全く!


で、ミミは・・・E級だった。


・・・ズル・・・じゃないよな?


職員に聞くと、何でも、血から本人の素質を判定して、最大でE級迄なら一足飛びに上がれるんだとか。


とはいえ、いきなりEとかF判定が出る人なんてほぼいないらしい。


ギルド職員や周りの冒険者も驚いていたよ。


それに比べて俺は・・・しょっぼ!


仮にも元SSS勇者なんだから、俺だってE級くらい行けそうなモンだけどな?不思議だ。


「ははは、普通はみんなカガリと同じH級スタートだ。私だってそうだったぜ?この2人が異常なんだよ。だから元気出せ!」


ブルーネルに慰められた。

しかも優しく頭を撫でられている。


うう、気持ち良い。


なんだかお姉ちゃんが出来たみたいだな。

こんな優しくて頼りになる超美女なお姉ちゃんがいたら、人生楽しいだろうな!


しかし、そのホンワカしたひとときはすぐに破られた。


「ブルーネルさん、このガキは何なんですか?」


いきなり男が俺とブルーネルの間に割り込んで来たのだ。

20代後半くらいの中々のイケメンだった。


はぁ。俺はつくづくイケメンとの相性が悪いみたいだな。


・・・お陰で頭なでなでタイムが終わっちまったじゃねえかこの野郎!


しかも男は俺を睨みつけて来た。


・・・むしろ俺が睨んでやりたい気分なんだけど?


俺はブルーネルに訪ねた。


「知り合いか?」


「A級冒険者のリーンズだ。知り合いって程じゃねえよ。只の同業者だ」


そのリーンズって奴は『只の同業者』って言葉にショックを受けた様子だった。


「そんな!あなたにプロポーズまでした男に『只の同業者』は無いでしょう?」


「それはとっくに断ったろうが?」


「僕はまだ諦めていませんから!あなたより強くなれば良いだけの話ですから、時間の問題です!」


・・・ははあ。これって『私より強い奴じゃないとお嫁に行かない』ってパターンだな?ブルーネルなら言いそうだ。なんとなく。


俺の予想は図星だったらしい。


「あー、なんだ、確かにお前には、『私より強い奴じゃなきゃそういう対象として見れねえ』って言ったけどな。一足遅かったな。実はもう『そういう対象』を見つけたんだ」


「そ、そんな・・・」


・・・へえ、S級冒険者のブルーネルより強い奴なんて中々見つからなさそうだけどな。どんな奴なんだろうな?・・・まあとにかく、俺のなでなでタイムを邪魔したコイツには『ざまぁみろ!』と言ってやりたいよ。


しかしリーンズは食い下がる。


「そんな・・・あなたより強い男がそんなすぐ見つかる筈がない。今のは嘘でしょう?安心して下さい!僕が必ずあなたより強くなってみせます!」


・・・ああコイツかなりウザい系だな。


ブルーネルは意外にもリーンズに同意した。


「お前の言う通り、私もそんな奴は見つからないと思ってたんだがな・・・しかし奇跡は起きた・・・ちょうどついさっき見つけたんだよ!」


・・・ん?ついさっき?


ブルーネルは手で俺を指すと、


「紹介しよう。私の想い人、ウミツキカガリだ!」


・・・はあああああ???


俺はめちゃくちゃ動揺した。


だって『想い人』だぞ?


それって、俺の事を好きって事じゃん?


そりゃ自分の事を好きって言ってくれる女性がいるなんて、めちゃくちゃ嬉しいよ!


けど、ブルーネルとはついさっき会ったばかりだぞ?

いくら何でも早すぎじゃないか?


もしかして俺に一目惚れとか?


・・・あり得んだろ。


だって俺だぞ?


一目惚れされるには外見的なスペックが圧倒的に足りてない。

強さだって、話ばっかで実際に見せた訳じゃないしさ。


しかし俺以上に動揺していた奴がいた。


リーンズだ。


奴は俺をギロリと睨みつけると、


「嘘でしょう?こんな今冒険者になったばかりの駆け出しがあなたより強い訳がない!きっとこの小僧に騙されているのです!」


「私は別に騙されている訳じゃねえよ。ウミツキは確実に私より強ぇえ。実際に見た訳じゃねえけど、雰囲気で分かる」


「まさか・・・いや、しかし・・・」


リーンズは少し考え込んだあと、ニヤリと何やら良からぬ笑みを浮かべた。


「ほう、そうですか・・・ならば、私がこの小僧を倒せば、あなたより強い証明になりますね・・・分かりました。この小僧があなたより強いと認めましょう!・・・その上で、私がこの小僧を倒したなら、ブルーネルさん、僕と結婚して下さい!」


・・・おいおい、ここで俺をダシに使ってプロポーズかよ?俺をややこしい話に巻き込むんじゃないよ全く。大体、ブルーネルがそんな下らない挑発に乗る訳…


「はぁ〜。仕方ねえな、分かった。その時は結婚してやるよ」


・・・乗ったああああ!安っすい挑発に乗っちゃったよおおおお!どうすんの?結婚とか言っちゃって・・・


そんな俺の驚きなんてどこ吹く風で、ブルーネルは俺を見てこう言った。


「て訳だ。ウミツキ、頼んだ」


「頼んだじゃねえよ!なに責任重大な約束してるんだよ?俺は戦う気なんか無いぞ?!」


「・・・それなら仕方ないな。私がウミツキの事を見誤ってたって事になる。私は泣く泣くこの男と結婚するしか無いな・・・」


そう言うと寂しそうな顔をするブルーネル。

なんという綱渡りな決断すんだよ全く。

覚悟決まりすぎかよ?


仕方ない、俺も覚悟を決めるか。


「・・・はぁ〜。分かったよ。戦えばいいんだろ?」


て事で、急遽、ブルーネルを賭けてリーンズと戦う事になってしまった。



ギルドに併設されている円形の闘技場。


その中心に俺はいた。


向かい合うは、A級冒険者のリーンズ。

客席には、大勢の冒険者やギルド職員が詰めかけていた。


・・・お前ら早くドバシェックの調査行けよ!


「カガリ・・・頑張れ!」


客席のミミが応援してくれていた。

健気だなー!


よし!こりゃ頑張るしか無いな。


とはいえ、こっちは冒険者になりたてのH級で、あっちはA級だ。


そこまでの格差なのに瞬殺しちゃったら、相手に恥をかかせる事になるだろう。


こういう奴に恨まれたら執念深そうだしな。


だから瞬殺は無しだ。


なら、適当に合わせて、ギリギリ勝った感じに見せるか?


でもそれだと、


『ギリギリだったから次こそは勝てる!』


とか言って何度でも挑戦して来そうだな。

それは面倒だし勘弁してほしい。


なら、圧倒的な強さを見せつつ、恥もかかせず、絶対勝てないと分からせつつ、二度とコイツと戦いたくない。と思わせる方法で倒すのがベストだな。


・・・よし、決めた!


試合開始の合図と共に、リーンズが突撃して来た。


模擬剣を抜き放ち、上段から俺の脳天めがけて振り下ろした。


バシッ!


リーンズの剣は、俺の脳天にヒットした。


しかし俺は微動だにしなかった。


実際には、バリアで守られているので全くダメージは無いのだが、観客には分かる筈もない。


大歓声が上がった。


リーンズも一本入ったと思ったのだろう。

勝ち誇った顔をしていたが、次の瞬間、驚きの表情に変化した。


俺がさも何事も無かったかの様に、首をコキコキ鳴らしたのだ。


「き、効いてないだと?!」


リーンズは再び俺を模擬剣で斬りつけて来た。

今度は横なぎの斬り払いだ。


俺はこれも微動だにせず体で受けた。


そして、またもや何事も無かったかの様に振る舞った。


ここに来て、大歓声の中に『あれ?』って感じの声も混ざり始めた。


リーンズも焦りの表情へと変化した。


そこからはリーンズ怒涛の攻撃が始まった。


流石はA級だけあって、凄まじい連撃を無数に放って来た。


俺はその全てをノーガードで受け止めた。


・・・30分後


バキッ!


という音と共に、リーンズの模擬剣が粉々に砕け散った。


俺は余裕綽々で言った。


「新しい模擬剣を貰ってきなよ?」


「・・・バケモノかお前?」


場内は既に静まり返っていた。

客はいたのだが、みんな唖然としていたのだ。


・・・1時間後


「はあ、はあ、」


リーンズはもはや、あと一太刀を撃ち込む力すら残っていなかった。


俺は最初と変わらず余裕な感じでリーンズに言った。


「降参する?」


「はあ、はあ・・・・・まだまだ」


・・・更に1時間後


「はあ、はあ・・・・・参った、僕の負けだ」


遂にリーンズが根をあげた。


・・・勝った!


俺は高々と両手を上げた。


俺は、自分からは一切攻撃せず、リーンズに圧勝したのだ。


ただ・・・


試合時間2時間半・・・



ウンザリする程に長かった。

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