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92話 衝撃の事実じゃん!オイ!

・・・・・は?


≪存在ごと消滅するのよ≫


アールが同じ言葉を繰り返した。

それは、秒速で俺の中を駆け巡り、体中を衝撃と疑問で包み込んだ。


・・・ちょっと待て、ならどうして俺は生きてる?クラスメイトのみんなだってそうだよ。誰も欠けずにこの世界に召喚されてるだろ?成功率100%だぞ?


≪違うのよ、召喚されたのはカガリのクラスだけじゃないの。学校全体、412名が召喚されたのよ。そしてこの世界へ無事たどり着けたのが、カガリ達40名だけだったって訳なの≫


・・・え?俺の学校って元々うちの1クラスだけだろ?


≪それはカガリの記憶から正しい情報が削除されているからなのよ。他のクラスメイトだってそう。みんな学校全体で生徒が40人しかいないと思い込んでる。けど、実際には先生も含めて400人以上いるのよ≫


・・・先生って、野田か?


≪野田以外よ。野田は召喚されたあの日、風邪で休んでたの。だから召喚から免れてまだ日本にいるわ。だからみんなの記憶にも野田は残っていたでしょ?問題は野田以外の先生よ。全員、学校召喚に巻き込まれて、生き残れなかったの。存在ごと消滅したから、誰の記憶にも残ってないのよ。勿論、350人近い他の生徒もね≫


・・・記憶に残らないって、じゃあ何でアールはその事を知ってんだよ?


≪私が知ってたって言うより、カガリの脳内チップのおかげよ。脳内チップには『(ことわり)の修正力』をガードするコーティングを施してあったから≫


・・・『理の修正力』?


≪世界にはね、色々な力が働いているのよ。例えば、タイムスリップ系のアニメや映画だと『過去を変える事で起きる矛盾を修正するために大いなる力が働く』みたいなシーンがあるでしょ?それと似たようなものなの。ある人間の存在が消滅すると、他の人からその人の記憶がごっそりと抜け落ちる。でもそれだけじゃ色々辻褄が合わなくなるから『理の修正力』が働いて無理やり世の中からその人の痕跡を全て消しちゃうのよ。写真や映像に写っている姿も全部消去されるしね。この世界にはそういった『理の修正力』が働く事象が結構あるのよ・・・でも我々の超科学はその影響を受けないようにガードする技術を持っているのよ。だから、カガリの脳内チップの記録にだけは、修正される前の事実が映像や音声記録として残っていたのよ。そこには存在を消される前の先生や生徒達も写っていたわ≫


・・・確かに修正力みたいな力はアニメか何かで見た事あるけどさ、まさか本当にあるとはな・・・じゃあ日本では、俺達が消えた事件って、どういう扱いになってるんだ?


≪先生1人、生徒40人しかいない学校の生徒全員が忽然と消えた。って扱いでそりゃもう大事件になってるわよ?≫


・・・そうだったのか・・・じゃあ俺ってば、そんな低い生存率の中、生き残ったって事?何で?


≪それは完全に偶然ね。ヘタするとカガリは消えていたかもしれない。そう考えるとゾッとするわね。本当に運が良かったわ≫


・・・自分でもゾッとするよ!て事はクラスメイトだと思ってたあいつらは、本当は別のクラスの奴らなのか?


≪どうしてなのかは謎だけど、カガリのクラスの子は殆ど生き残っているのよね。そこに他のクラスの子が少し混じっている感じなの。三津島沙彩も別クラスね。というか一学年下の一年生よ≫


・・・三津島が?・・・そう言われると確かに日本にいた時のあいつの印象って殆ど無いんだよな。あれだけ可愛ければ、普通はもっと印象に残る筈だから不思議には思ってたんだ。


≪カガリ、あなた『何でそんな大事な事を黙ってたんだ!』って私を責めないのね?≫


・・・そりゃまあ、早く知りたかったのはあるけど、アールを信頼してるからさ、言わなかったのは理由があるんだろ?


≪・・・ええ。この事実はずっと機密事項だったのよ。それが評議会の決定によって情報解禁されたの≫


・・・評議会って、俺のハーレムについて話し合ってたっていうアレか?


≪ええ・・・今後、クラスメイトからもハーレム要員を確保する事になるから情報解禁は必要だ!って私が後付けで評議会を説得したのよ。だって滝座瀬麻耶と三津島沙彩も、生きて日本に戻れる可能性が10%しか無いって知れば、戻るのを諦めるだろうし、カガリだって戻らせたくないって思うでしょ?≫


・・・そりゃ、みすみす死なせたくないよ?でも、これって超科学の情報だろ?2人に話しちまって良いのか?


≪そこはバグの力だって事でごり押すしか無いわね≫


・・・信じて貰えるかな?既に日本に戻れない俺にとっては、みんなを道連れに出来るちょうど良い話だしな。都合良すぎるって疑われないか?


≪あの2人は単純だから疑わないと思うわよ?第一、信じなきゃ自分が消滅するだけなんだし?≫


・・・まあそうだけどさ。でも信じたとしてどうやってあの2人を助けるんだ?・・・勇者は魔王が死んだら自動的に日本に戻るって契約なんだよな?それをあの2人だけ解除する事って出来るのか?しかも勇者の称号は残したままでさ。それって契約を修正するって事だから、下手すると『落勇者』に変わっちまうんじゃないか?


≪契約の修正が可能かは分からないわ。一度、麻耶と沙彩の体を探らせて貰わないと何とも言えないわね。でも他にも方法はあるわよ?魔王が勇者や残党派に倒されないように、私達が守ってあげるとか。それなら契約が果たされる事は無いから、勇者は戻れないし、麻耶と沙彩も消滅する事は無くなるわ≫


・・・そりゃまあそうだけど・・・魔王を守るって、俺たちが人類を敵に回すって事にならないか?


≪そんなの別にどうって事無いじゃない?≫


まあ、滝座瀬と三津島の為なら仕方ないか。

それに他にも消滅させたくない奴はいるしな。

委員長とか片山とか。


けど・・・


魔王を守るって事は、俺を虐げていた奴らまで助ける事になるんだよな?

それってかなり複雑だ。


正直、


『何で奴らまで助けてやらないといけないんだ?』


そう思ってしまう。


そう考えた瞬間、俺の頭に悪魔の声が聞こえた気がした。


『もし、俺を虐げていた奴らが全員消滅したら、俺の頭から奴らの記憶がゴッソリ抜け落ちる。そうなれば、アイツらに虐められた最悪の記憶の数々も全て無かった事になるんじゃないか?』


それは俺にとってこの上なく都合の良い話に思えた。


ただし、知ってて見殺しにするという事は、俺が殺したも同然って事になる。

少なくとも俺はそう考えてしまう。


・・・それで俺は満足なのか?


とても今すぐに結論は出そうになかった。



「おいどうした?!何とか言え!」


俺はブルーネルに思いっきり肩を揺さぶられていた。


「だ、大丈夫だ、ごめん」


「本当に大丈夫なのか?とんでもなく深刻そうな顔で、呼んでも返事をしねえから心配してたぜ?」


「悪い、ちょっと考えに耽りすぎた」


「・・・そうかよ、まあヤバイ話ってのは伝わったみてえだな。3000年前に起きた勇者不在かつ魔王無双の100年は『暗黒時代』って呼ばれてるんだが、今回は本気でそれと同じ事が起きる危険があるからな」


・・・そうだ、その話だった。アールがとんでもない話をぶっ込んで来たからすっかり忘れてたよ。


「ブルーネルはどうするんだ?」


「私1人じゃどうにもならねえからな。ギルドへは話すとして、気は進まねえが、スピーリヒル城へ行って王女や勇者共にも話さねえとな・・・アイツらには会いたくねえんだが仕方ない」


「王女や勇者と面識あるのか?」


「少し前まであの城で働いてたんだ。それで勇者共の訓練を任される筈だったんだが、六条って奴と言い争いになってな。『勇者様のご機嫌を損ねた』って事で即クビだ。まあ見所のある奴は数名いたが、あとはダメだな。あんな奴らの訓練なんてこっちから願い下げだっての!・・・それに私は、アイツらが仲間を犠牲にしてのうのうとしていやがるその性根が何より気に入らねえ!魔族に奪われたSSSの力だって、元はと言えばそいつらが1人の憐れな仲間を生贄にして奪い取ったものだ。可哀想なのはソイツさ。仲間に裏切られて背中からいきなり剣をぶっ刺された様なモンだからな。心から同情するぜ」


ブルーネルは抑えていた気持ちが爆発したのか、再び目から炎を燃えたぎらせながら、一気に勇者への文句を吐き出した。


・・・なあ、アール、こんな偶然あるか?ブルーネルがスピーリヒル城にいて、しかも、俺の事を憐れんでくれていたなんてさ!


≪そうね。ひょっとして運命かもよ?≫


・・・ああ。確かに運命的なものを感じるな。


「ブルーネル、その『勇者に裏切られた憐れな生贄』ってさ、俺の事なんだ」


「は?んな訳ねえだろ?そいつは称号を奪い取られて何の力も無くなってるんだぜ?魔将軍を狩りまくってる様なとんでもねえ強さのオメェとは似ても似つかねえ。そいつの名前は確か、ウミなんたら・・・だった筈だ。オメェはカガリだろ?」


「俺のフルネームは、ウミツキカガリって言うんだ」


「・・・ウミツキカガリ?・・・ウミツキ?・・・て事は、ウミなんたらぁ?!」


俺は、称号を剥ぎ取られてから今までの事をかいつまんで話した。


ブルーネルは、俺の境遇を熱心に聞いてくれた。


そして話し終わるやいなや、


ガバッ!


いきなりブルーネルは机の上に乗っかると、俺を勢い良くハグしてきた。


「大変だったなあ!辛かっただろ?もう大丈夫だからな!お姉さんがついてる。もうオメェを虐めたりなんざさせねえからな!」


そう言いながら俺の顔を自分の胸にグリグリ押し付けてくる。


「うぐぐ・・・」


強く抱きしめられる俺。


ブルーネルの武骨な甲冑が体に突き刺さって痛いのなんの!


同時に俺の顔はむんにゅりとした双丘へぐにぐにと突き刺さって、最高に柔らかいのなんの!


そんなこんなで、さっき出会ったばかりのブルーネルとの距離は、超特急で縮まったのであった。

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