91話 新事実だらけで訳分からんぞ、オイ!
「それにしても・・・」
ブルーネルは俺達へ興味津々の瞳を向けてきた。
瞳の炎も再び燃え上がり始めている。
でもさっきまでのメラメラとした燃え方じゃなくて『自分の事お星様と間違えてんじゃないの?』ってくらいにキラキラした感じで燃えていた。
ブルーネルは話を続ける。
「魔将軍のガージャック、ヒットハイド、ネフェクティプラゾーマって言やあ、長年に渡って人間に仇なし続けた『人類の敵』だぜ?しかも実力は魔王に迫るって噂もあるくらい高い。そんな奴らを3人纏めてぶっ倒したなんざ、英雄級の快挙だぜ!別に秘密にする必要ねえと思うんだがな?」
「3人纏めてじゃなくて各個撃破だけどな。あと、別に英雄になりたい訳じゃない。むしろ目立ちたくないんだ。だから俺達の事は上手く隠して報告してくれるとありがたい」
「なんだよ勿体ねえな!人類の英雄として魔王軍と戦う気はねえのかよ?」
「人類に使われる気は無いな。けど、魔族はさっき言ったみたいに途轍もなくパワーアップしてるし、それにドバシェックの惨劇だって見てるからな。個人的に危機感は持ってる。だから状況によってはこれからも魔族とは戦うと思うぞ?」
「ほう!そりゃ人類の1人としちゃありがてえな」
せっかくの機会だし俺はブルーネルに魔族について聞いてみる事にした。
「ブルーネルは、コンコルディアスって奴の事は知ってるのか?」
「そいつの名前は聞いた事ねえな。だけどそいつがヒットハイド達の親玉で、しかも魔王の座を狙ってるってんなら、そいつが残党派なのは間違いねえ」
「残党派?」
「ああ。過去に討伐された歴代魔王に付き従っていた魔族の事だ。過去、勇者によって魔王や側近達が討伐される際、討ち漏らしで生き残っちまう奴らがいるんだよ。大抵は息を潜めて次代の魔王が誕生すればそいつに従うんだが、ごく稀に従わねえ奴らが存在する。そいつらは、てめえらで勝手に勢力を築いて、独自の野望をいだく。そんな魔族の事を『残党派』って呼ぶんだ」
「でも『魔将軍』って魔王軍の将軍って意味じゃないのか?」
「その通りだ。けど、代々、魔王が率いる軍は『魔王軍』だし、側近達は『魔将軍』って呼び名なんだ。だから残党派の奴らだってみんな自分達の事を魔王軍だと言うし魔将軍だって名乗る。そいつらがどの代の生き残りかは、文献に名前が残ってる奴ら以外は知る術がねえ」
「さっき、ガージャック、ヒットハイド、ネフェクティプラゾーマは有名だとか言ってたよな?て事は文献が残ってるんだろ?そいつらはどの代の生き残りなんだ?」
「分からねえ。そいつらの名前が初めて文献に出てくるのはかなり古いからな。資料が少ないんだ。しかも出てくる年代もバラバラだしな」
「古いってどの位?」
「ネフェクティプラゾーマは2800年前、ヒットハイドは2000年前、ガージャックは1500年前だ」
「古っ!それに確かにバラバラだな。どう言う事だ?」
「考えられるのは、みんな同じ代の出身だが文献に載るのが単にバラバラだったパターン、あとは、別の代の奴らが連合を組んでるパターン、そのどちらかだな。いずれにしても、2千年以上年前からの残党派って事は相当な勢力だろうな」
「そんな大勢力なら魔王軍とぶつかって削り合うなら人類にとっては良い事じゃん?」
「そう上手くは行かねえかもな。今代の魔王は人間だからな。削り合う前に魔王があっさりとコンコルディアスに倒される可能性もあり得る」
・・・魔王が人間?それって前にも聞いたような気がする。ホリーからだったか?
「人間って確か、魔王級ダンジョンの制覇者だっけか?どんな奴なんだ?」
「さあな。分かってるのは去年ダンジョンが制覇されたって事と『魔王教』信者の誰かが魔王になったって事くらいなんだ」
「魔王教?」
・・・また胡散臭そうな名前が出て来たな。
「オメェ『魔王教』を知らねえのか?」
「い、いや、実態とかは知らないかな?」
・・・名前も初耳だけど。
「魔王教ってのは文字通り魔王を信奉する宗教の事だ。魔王は魔族の中から発生するパターンと魔王級ダンジョン攻略者がなるパターンの2通りあるんだが、奴らは魔王を信奉するあまり、魔王級ダンジョンへ定期的に人を派遣して制覇をもくろんでるんだ。そして去年もダンジョンへ大規模遠征隊を送り出した。すると暫くしてダンジョンは攻略され、100年ぶりに新たな魔王が誕生したんだ。だから魔王教の誰かが制覇した事は間違いない」
「でも魔王が人間ならさ、話し合いで人類と敵対しないようには出来ないのか?」
「無理だろうな。そもそも魔王教自体が人類の平和を望んでいないからな。魔王教は元々、人間に虐げられた亜人種が人間へ対抗する為に魔王に助けを求めたのがきっかけとされているんだ。今は亜人種だけじゃなく人間種の信者も大勢いるけど、教義は変わっちゃいねえ。奴らは人類の一員だけど、同時に人類の敵でもあるんだ」
「なんとまあ。それは厄介だな」
「まあな・・・けど本当に厄介なのは人間の魔王が誕生したって事自体にある。実は人間の魔王には魔王補正が無いって説があるんだ」
「魔王補正って?」
「魔王が魔王であり続ける為の仕掛けの事さ。魔王は勇者にしか倒せねえ事に決まってんだ。いくら魔王より強い人間や魔族が現れても、そいつらじゃ勝てねえ。必ず負けるんだ。そう決まってる。それが魔王補正さ。つまり魔王に実力で勝る勇者が出てきた時に初めて魔王は討伐されるんだ」
「魔王より強いのに勝てないって、具体的にどういう状況なんだ?」
「それは伝わっちゃいねえ。けど、そういう文献が残されている以上、信じざるを得ねえんだ。何しろ人類の存亡がかかってるからな」
「なら、今の魔王に魔王補正が無いって事は、つまりどうなる?」
「コンコルディアスって奴が実力で魔王に勝れば、倒して魔王に成り代われるって事だ。SSSの力を持ってるなら充分あり得る。」
「SSSの力は元々勇者の頂点に君臨する力だからな。そうなったら今の勇者じゃ新たな魔王には歯が立たないと思うぞ?」
「いや、そうなったら勇者は戦いの舞台にすら立てねえよ。勇者は魔王が倒された瞬間、契約満了扱いになって元の世界へ戻されちまうんだ。そして、次に勇者を呼べる100年後までは新魔王の独壇場になっちまう。魔族出身の魔王は魔王補正が発動するからな。勇者以外には倒されねえ。けど肝心の勇者は帰っちまってる。言わば無敵状態になるんだ。3000年前は、このパターンで人類は滅びかけたんだぜ?・・・どうだ、かなりヤバイ話だろ?」
・・・アール、コンコルディアスと再戦して勝てるか?
≪万全の状態なら余裕よ!≫
・・・今の話、どう思う?
≪ちょっと信じられないわね。でも、ブルーネルの言う通り、万が一を考えると、魔王が倒されて勇者が全員消えてしまうのは避けた方が良いわね≫
・・・だな。俺はもう勇者じゃないし。
≪まあね。でも、うちの陣営には勇者が2人いるじゃない≫
・・・滝座瀬と三津島か。
≪ええ。あの2人を勇者の称号はそのままで地球には返さないような方法があれば、何とかなるわよね?≫
・・・それは流石に可哀想じゃないか?あいつらだって地球には帰りたいだろ?
≪そう?あの2人はカガリにゾッコンだから聞いてみればOKすると思うけど?≫
・・・そりゃ六条のスキルに縛られてるからだろ?一生こっちの世界にいてくれ。なんて申し訳なさ過ぎて言えないぞ?
≪カガリ、実は、あなたにまだ話していない事があるの。魔王討伐を果たして勇者がこの世界から消えても、全員が地球へ戻れる訳じゃないのよ≫
・・・ん?それってどう言う事だ?
≪龍王が使った勇者召喚には大きな欠陥があってね・・・異世界へ渡るのって、そもそも成功率が低いのよ。精々10%の成功率しか無いの。だから、クラスメイト40人が地球へ戻っても、無事生還できるのは4人前後だと思うわよ≫
・・・じゃあ、他の36人はどうなる?
≪存在ごと消滅するわ≫
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?




