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89話 解放記念パーティーやるぞ、オイ!

悪徳商人ブラボンヌは退治した。


あとはここにいる奴隷達を解放するだけだ。


幸い、さっきコピーした偽者達の中に『奴隷契約能力』を持つ者がいたので、彼に奴隷達の契約解除を頼んだ。


実は、彼女達に無理矢理奴隷契約を施したのは、コイツの本物だったりするんだけど・・・


奴隷達のトラウマが再燃しないように、そいつにはひょっとこのお面を被らせて解除作業をさせた。


幸い、パニックを起こす人もおらず、契約解除作業はスムーズに進んだ。


奴隷達は泣いて喜んでいたよ。


「本当にありがとうございます!」


「このご恩は一生忘れません!」


みんな俺達に心からのお礼を言ってくれた。


まあ奴隷達からすれば、まさかこんな形で解放されるなんて想像すら出来ないだろうからな。


地獄に仏とはこの事を言うのだろう。


俺は自分の鉱山時代を思い出した。

あの頃の俺は完全に心が折れてたし、ただ死ぬのを待つだけだった。


俺も似たような経験があるからこそ、運良く解放されたこの人達には、出来るだけ幸せになって貰いたい。


解放された人は全部で60人だ。

内、50人が女性で10人が男性だった。


女性も男性も全員が若くて美形揃いだった。


まあオークションなんだから見た目の良い奴を残すのは当然なんだろうけどさ、美形以外の『その他大勢』的な奴らはどうなったのだろうか?


聞くと、みんな鉱山奴隷として売られて行ったらしい。


そしてその殆どはスチル鉱山だった。


俺は偽スパへ連絡した。


・・・オイ、偽スパ、いるか?


≪≪はい、カガリ様、ご用でしょうか?≫≫


・・・そっちは未だに鉱山奴隷を受け入れているのか?


≪≪はい。我々の存在がクソ王女にバレないよう、支配体制が変わった事を出来るだけ隠しておりますので、表向きは以前からの取り引きはある程度、継続しています。勿論、犯罪者は刑務所へ、無実の者は、ある程度の金を与えて釈放、残りたい者には仕事を与え快適な環境で働いて貰っております・・・しかし、近いうちに奴隷の受け入れも必要なくなるかもしれません・・・どうやら大量の政治犯を釈放した事で、かなり国に怪しまれているようです。もはやバレるのは時間の問題かと。つい先程もスピーリヒル城から使者が参りました。かなり怪しんでいる様子で色々と聞かれました≫≫


・・・そうなのか?


≪はい。隠し立てすれば為にならんと脅されました。勇者率いる軍勢が討伐に来る可能性も匂わせておりました≫


・・・勇者が?・・・なる程ね。もし勇者が来る様なら知らせろ!その時は戦争だ!俺もそっちに戻るからな。


≪≪承知致しました≫≫


俺は開放した人達から聞いた仲間の名前を偽スパに告げた。


すると、彼らはほぼ全員、鉱山に残って働いているという。

何でも、鉱山の労働環境が最高らしく、一度体験してしまうと離れられなくなるらしく、彼ら以外にも、鉱山を離れる割合は意外と少ないのだそうだ。


これは・・・環境を良くし過ぎたか?


しかし俺が運営する鉱山のスタッフに虫を食わせる訳にもいかないからな。

彼らには普通に地球飯を食わせていた。

労働環境だって日本のホワイト企業並にしてあるしな。


週休2日制だぞ?

有給だって付けてるしね。


勿論、犯罪者にはパン虫とポテ虫しか食わせて無い。

臭い飯じゃなくてキモい飯だな。



俺は無事を確認出来た鉱山奴隷達の名前を読み上げた。


すると、彼らの無事を知って、みんなはまた涙を流して喜ぶのだった。


開放した人の中に1人、ひときわ異彩を放つ女性がいた。


理知的な顔をした紅い瞳をした赤髪長髪の美女だ。

スタイルも良く胸もかなり大きい。

年は20歳くらいかな。


彼女は、他の女性と比べてダントツに美しかった。


そういえばブラボンヌが、アールとミミ以外にもう1人オークションの目玉がいるって言ってたな?


間違いなく彼女だろう。


彼女の名前はミラ。

モリッツァ聖帝国人で、商人の娘らしい。

何でも、商売の修行の為、一人旅をしていたのだそうだ。


攫われた際、護衛の冒険者は彼女を置いてさっさと逃げたらしい。

碌でもない奴だ。


俺は彼女に開放した人達のまとめ役を頼んだ。


彼女はめちゃくちゃ魅力的に微笑んで、


「命の恩人の頼みですもの、勿論、承りますわ」


承知してくれた。


「あ、ありがとう!じ、じゃあ頼むね」


ミラの目力は半端なく、俺はその魅力にドギマギしながら何とか返事を返したのだった。


次に俺は次元収納から超科学製の機械をいくつか取り出した。


一つは服製造マシーン。

これは服のイメージを伝えれば、それに見合う服をサイズもピッタリに作ってくれるという超便利な装置だ。

これでみんなの服を作ってやった。

偽ブラボンヌ達の服もついでにね。


そして、二つ目は、携帯用の全自動料理機だ。

これは持ち運びできるように小さなカバン型になっている。

それを床に置き『展開!』と一声かけると、カバンがロボットアニメさながら、ミニテーブルへと変形するのだ。

俺はコイツを『さすらいの料理人1号』と名付けた。


俺達はみんなを引き連れ、偽ブラボンヌ、略して偽ブラの案内で、屋敷の大広間へ移動した。

この家は妻子が住む本宅では無く、裏の仕事専用の別宅だったので、特に邪魔者もいなかった。


そこで奴隷から開放されたみんなをゲストに、立食パーティーを開く事にしたのだ。


『さすらいの料理人1号』が、高級ホテルのバイキングメニューと同じ物をこれでもかと用意し、飲み物も色々な種類のジュースを並べた。

流石にお酒類はトラブルの元だし用意しなかったけどね。


俺はマイクを片手にみんなへ挨拶した。


「えー、今回はみんな本当に最悪の目に遭って、心から同情します。心の傷は簡単には癒えないと思う。もし必要なら俺が魔法で心のケアをするから遠慮なく言って下さい。とにかく、今、みんなは奴隷契約から解放され、完全に自由の身です。そこは安心して下さい。あと、さっきからみんな俺にずっと感謝してくれてるけど、俺は別に正義の味方じゃなくて、偶然、みんなと同じ様に騙されてここに連れて来られただけの人間です。ただ、俺にはその理不尽を叩き潰せる力があった。そして心強い味方が側にいた。ただそれだけの事なんです。だから俺への感謝はもう充分です。これからは自分の幸せだけを考えて行動して下さい。それと、みなさんが自由になったお祝いに、ここにささやかですが料理と飲み物を用意しました・・・いや、謙遜はやめましょう。ささやかどころか、超豪華な料理とめちゃくちゃ美味しい飲み物を用意しました!おかわりはいくらでもありますので、どうぞ心ゆくまで飲んで食べて下さい!」


・・・なんだか偉そうだったかな?


≪そんな事無いわよ、カガリらしい良いスピーチだったわ!≫


ミミが服の袖を引っ張ってきた。


「ねえカガリ・・・私たちも食べよ?」


「だな。ちょうど昼飯の時間だし、思いっきり食べようか!」


「うん・・・楽しみ!」


パーティーは大いに盛り上がった。


「え?何これ?虫じゃないの?」


「美味しい!美味しい!美味しいいいいぃぃぃぃ!!」


「これは何だ?まさか噂に聞いた魔獣肉か?!」


「こんなに美味しい料理が食べられるなんて、生まれてきて良かったよおおおおぉぉぉぉ!!」


とにかく、絶賛の嵐だった。


まあ、そうなるわな。


でも、地球飯を喜んで食べてくれる異世界人の姿って、なんだか嬉しくなるんだよな。


俺達は盛り上がるみんなを偽ブラに預けて、屋敷を出た。

勿論、冒険者登録をする為だ。


偽ブラの部下に道案内してもらったので、迷う事なく冒険者ギルドへ着いた。


ブラボンヌのせいでとんだ寄り道をしてしまったが、いよいよ目的を果たせる。

さっさと済ませて、早いとこホリー達と合流しよう。


冒険者ギルド内は、冒険者達でごった返していた。


ギルド職員が叫んでいた。


「緊急クエスト!ドバシェックの調査!人数制限無し!奮って参加してくれ!てか全員参加しやがれ!」


それに冒険者達の反応は様々だった。


参加登録の為に並んでいる冒険者もいれば、


「馬鹿野郎!ミノタウロスの新種が出たらしいじゃねえかよ!魔族とドラゴンを見たって話も聞くぜ?そんな危険な仕事、無差別に募ってんじゃねえぞ?!B級以上の仕事だろ?俺はゴメンだぜ?!」


こんな感じで、拒否する冒険者も沢山いた。


「馬鹿野郎!隣街の危機だぞ?ランクなんて関係ないだろ?ここで駆けつけなきゃ男じゃねえぞ!」


「なんだとこの野郎!」


とにかく、ギルドハウスはてんやわんやだった。


・・・これってさ、新規登録なんて受け付けてくれる場合じゃないよな。


≪そうね。でもとりあえず受付に行ってみましょう≫


やはり案の定、受付は新規登録どころでは無かった。


受付の厳ついおっさんが怒鳴る。


「お前ら、なんて日に来やがるんだ?今はそれどころじゃ無いのが分からねえか?悪いが出直してくれ!」


確かに忙しいのは分かるけど、こっちも急ぎだからな。

簡単には引き下がれない。


・・・アール、どうしようか?『2、3人ぶっ殺せば言う事聞くわよ』ってのは抜きで頼む。


≪その選択肢がダメなら私に意見聞くんじゃないわよ!≫


・・・・・・。


つんつん


ミミが俺の背中をつついてきた。


「どうした?」


「私・・・みんなを静かにさせられるけど・・・やる?」


「ん、マジで?なら頼む」


「ん!」


俺は何も考えず返したその返事を後悔した。


「むん!」


ミミが、なんといきなりドラゴンの威圧を放ったのだ。


ドーン!!!!!


実際にはドーンって音は鳴って無いのだが、まさにその音が聞こえそうなくらいに、凄まじい威圧がその場を包み込んだ。


すると何と、冒険者ギルドにいた人全員が・・・気絶してしまった。


・・・ヤバイ!、やっちゃった?

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