77話 これはアールの陰謀か?オイ
かぽーん
ザバーッ!
「おおおぉぉぉ・・・くううぅぅぅ・・・はへえええぇぇぇ」
温泉を味わうのに言葉は要らなかった。
時間はもう真夜中だ。
俺は1人、温泉を満喫していた。
「それにしても、さっきは間一髪だったな」
俺はついさっきの出来事を思い出した。
全員の自己紹介が終わり、その後はみんな思い思いの時間を過ごした。
ミミは眠そうだったので、ホリーがミミの個室へ連れて行った。
仲間が増えたので、急いで全員分の個室を増設したのだ。
そしてアールもさっさと自分の部屋へ向かった。
・・・でも・・・居るんだよね?
≪当然でしょ?私の仕事はカガリの観察なんだから≫
しっかり観察されていた。
滝座瀬はお肌の手入れをしたいって事だったので、日本製の高級な化粧水とか、その他諸々、言われるままに作ってあげた。
めちゃくちゃ喜んでたよ。
「もうカガリ無しじゃいられない体になった」
とか言ってたし。
誤解されるからみんなの前でそのセリフを口走らないでほしい・・・
そして三津島は、ゲームをしていた。
やっぱコイツはゲーマーだったんだな。
「ガガリ君も一緒にやろうよ!」
「お、おう・・・」
そんな感じで俺は生まれて初めて女子と2人でゲームをやった。
あ、生まれて初めてでは無いか、小学生の時は、仲の良かった幼馴染の女子と良く遊んでたし。
あの事件のせいで疎遠になったんだよな・・・
まあ暗い話は忘れて、俺は三津島とゲームを楽しんだ。
アクションゲームを協力プレイで攻略中だ。
これって家デートっぽいよな?
チラッと横を見ると楽しそうに画面に食い入る三津島の横顔があった。
・・・改めて見ると、やっぱりコイツ、めちゃくちゃ可愛いよな。
さすがは3大アイドルの一角だ。
本来なら俺がコイツとこんな近い距離にいる事自体、奇跡なんだよな。
しかも今は三津島の方が俺にグイグイアプローチしてくるのだ。
ふと冷静にその事を考えてみると・・・ダメだ、ドキドキしてきた。
もしもエロい事とか抜きで、普通に告白とかされてたなら・・・速攻で落ちてたんじゃないか?
ああ、俺ってばチョロ過ぎだろ!
そんな事を考えてたら、うっかり序盤のザコボスにやられてしまった。
「もう、ガガリ君ってばゲームに集中しないとダメだよ?」
そんな事言われたってさ、ドキドキしすぎて、ゲームに集中出来ないんだよ!
三津島は俺のドキドキを感じ取ったのか、
「カガリ君、じゃあこのまま、エッチぃ事に集中しちゃう?」
そう言って俺に顔を寄せて来た。
「うっ・・・」
俺は一瞬で顔がカーッと熱くなるのを感じた。
「どうしたの?カガリ君、顔赤いよ?」
三津島の顔も赤かった。
そして潤んだ目でジッと見つめて来る。
まずい、可愛い過ぎる!
これは・・・ヤバイやつだ!
「み、三津島…」
「沙彩だよ、さ・あ・や」
三津島がさらにグイっと近付いて来た。
・・・た、たたたすけてくれ、アール!
≪・・・・・≫
・・・こんな時だけ応答無しかよ!
その間にも距離を詰めてくる三津島。
「ほら、言ってみて、さ・あ・や」
「さ・・・」
「さ?」
三津島が小首を傾げる。
その仕草の可愛さったらもう反則だぞ?
てかそもそも恋愛防御力0の俺にはこのボス戦は余りにも無謀すぎた。
三津島沙彩、コイツは序盤のザコボスなんかじゃない、ラスボスに匹敵する攻撃力を誇っていたのだ。
なら、潔くゲームオーバーになるか、それとも、無様を晒してでもしぶとく生き残るか、2つに1つだ。
俺は後者を選んだ。
「さ、さささささ、さあ〜、な〜んかそろそろ風呂にでも入りたくなって来たな〜。じゃ行くわ!」
俺は逃げ出した。ダダダッ!
そうして俺は今、1人で温泉に入っているのだ。
≪カガリったらホント、ヘタレなんだから!≫
「うおっ!」
・・・って、アールかよ?ビックリするだろ?てか、今入浴中だぞ?俺ってば素っ裸なんだが?
≪そうね≫
・・・そうねじゃねえよ!少しは遠慮しろよ!
≪別にいつも見てるし、問題ないわよ?≫
・・・いつも見てるとか言うな!恥ずかしいだろ?!
≪この程度で恥ずかしがってたら、この先、ハーレムなんて運営して行けないわよ?≫
・・・そりゃハーレムなんて運営する気が無いからな。
≪今まではそうだったかもしれないけど、これからはそんな事言ってられないわよ?≫
・・・ああ、滝座瀬と三津島の話だろ?マジで参ったよな?あの2人のエロ攻勢にいつまで耐えられるのか、正直自信ないんだけど?・・・そういえばアールってば、さっき俺が助けを求めた時、無視しただろ?
≪そりゃあんな美味しい展開、邪魔するのは野暮ってものでしょ?それより、パンパカパーン!おめでとう!≫
・・・は?何が?
≪以前から議題に挙がっていたんだけど、ついさっき、評議会から結論が届いたのよ。カガリおめでとう!≫
・・・おめでとうって、何の?・・・評議会って何?・・・
≪評議会ってのは我々の大銀河連合を運営しているトップ達の組織よ。地球で言う所の国連みたいなものね≫
・・・大銀河連合って、スケールデカすぎだろ?そんなご大層な組織が何の結論を出したんだよ?俺と関係ある事なのか?
≪大アリよ!だって議題は『カガリがこの異世界で子孫を残しても良いかどうか』なんだから!≫
・・・俺が・・・子孫を?つまりどういう事かな?・・・
≪カガリがこの世界でハーレムを築いて良いかどうか?って事よ≫
・・・はああああああああああ???ちょちょちょっと待ってくれ!何でそんな話になってるんだよ?!なんで大銀河連合のお偉い議員さん達が俺のハーレムについて議題に挙げてるんだよぉ?!」
≪そりゃ、カガリは我々の大切な観察対象なのよ?あなたの子作り1つ取っても、我々にしてみれば大きな問題なのよ?実は数日前からその議題が挙がっていてね、私は反対したんだけど、議論はかなり紛糾しちゃってね。昨日あたりから旗色が悪くなってきちゃって、それでついさっき結論が出たの≫
・・・何で議論が紛糾してるのか意味わからんが、旗色が悪いって事は、つまりハーレムは無しって事なんだよな?
≪逆よ。ハーレムは承認されたわ。それどころか、この世界で大ハーレム帝国を作れっていう指令が下ったのよ。だから、これから私は、カガリのハーレム作りを全力で応援する事になったから。まあカガリだって、それならそれでウハウハだし嬉しいでしょ?≫
・・・嬉しくねえよ!俺ってば恋愛経験ゼロだぞバカヤロー!今だって三津島のこの上なく甘々な誘惑をぶっちぎって逃げて来たくらいの超絶恋愛ヘタレなんだぞ?!そんな俺が大ハーレム帝国なんて、心身共に持つ訳ないだろうが!
≪大丈夫。実践あるのみよ!≫
ガラガラ。
ん?何かやばい音が聞こえたんだが・・・?
ぴた、ぴた、
湯けむりでよく見えないのだが、何かが入って来た気配はビンビンに感じた。
「おジャマしまーす」
これは、三津島の声だ!!
え?逃げて来た筈だぞ?
何で追いかけて来た?!
湯けむりの先で、三津島の声が響いた。
「カガリ君ってばもう!いきなりお風呂に誘うなんて・・・ヤル気満々だね!」
・・・盛大に勘違いされてたああああああああ!!!
ぴた、ぴた、
足音が更に近づいてくる。
しかし、濃い湯けむりでまだ三津島の全貌は見えない。
嬉しいような残念ような残念なような・・・
今、俺は確実に追い詰められていた。
もはや背後には岩しかない。
さすが温泉!
これは絶対絶命の大ピンチなのでは?・・・と思いつつも今か今かと破滅の瞬間を待ちわびている俺・・・ダメだ、三津島がこの湯けむりを越えて姿を見せた瞬間、俺は獣になる。
ヘタレだろうが獣は獣だ。
俺は記念すべき大ハーレム帝国への第一歩をここに刻む事になるだろう。
「カガリくーん!」
湯けむりの壁を三津島の右足が越えて来た、その瞬間・・・
「ちょっと待ったああああ!!」
勢いよく扉を開く音と共に、滝座瀬の大きな声が浴場に響き渡った。
「ま、麻耶?!」
三津島の慌てた声。
「沙彩ぁ〜、抜け駆けしないって約束したわよねー?」
「えへへ、だって麻耶、お肌のお手入れに夢中だったし」
「誰の為のお手入れだと思ってるのよ?!今この瞬間の為なんだからね!カガリの初めては渡さないわよ!」
「私だってそれ目当てで抜け駆けしてるんだってば!」
俺は2人を窘めようとした。
「な、なあ、何もそんなに争わなくてもだな・・・」
「「アンタは黙ってて!」カガリ君は黙ってて!」」
どうやら2人の闘争心に火がついたようだ。
「ここは引けないわね!」
「私だってそうだし!」
目の前の湯けむりの先で、素っ裸の超美少女2人が俺を取り合って言い争ってる・・・何このパワーワード?!
・・・もしかしてアール、お前が滝座瀬を呼んだとか?
≪だって1人だけ仲間外れは可哀想でしょ?≫
・・・ん?1人だけってまさか?
ガラガラ。
「おお滝座瀬と三津島、あなた達も一汗流しに来ていたのですか?」
「みんなでお風呂・・・楽しそう・・・カガリとアールも呼んでこよう?」
・・・この声は、ホリーとミミか?!俺も呼ぶってさミミ、実はもう居るんだなこれが・・・まさかアール、お前も混ざるなんて言わないよな?
≪私はパスよ。この体じゃ子供作れないし≫
・・・そういう問題じゃねえよ!
≪あら、問題ないなら参加してあげるけど、まさか私までご所望とはね。そりゃ確かに見た目は超絶美女だけど・・・宇宙人よ?≫
・・・俺は誰一人所望してないんだけど・・・
一方、湯けむりの先では、滝座瀬と三津島の空気が変わっていた。
「ミミちゃんは・・・流石にNGじゃない?沙彩どう思う?」
「ダメに決まってるじゃん!ロリコン死すべし!だよ!」
ホリーとミミはまだ事情を察していないようだ。
俺は『ここしか無い』とばかりにホリーへ助けを求めた。
「ホリー、俺だ。カガリだ!今、滝座瀬と三津島に迫られてるんだ、何とかしてくれえ!」
ホリーは驚きの声を上げた。
「カガリ殿?どうしてあなたが女湯に?まさかこの2人と不埒なマネを?」
「違うってば話聞いて?そこの2人が俺を狙って入って来たんだって!・・・って女湯ぅ?!」
「そうです、こちらは女湯ですよ?まさか、間違えたフリをして我々が入ってくるのを待ち構えていたのですか?」
「だから違うってば話聞こうよ!俺が入った時は確かに男湯だった筈だぞ?」
・・・まさかアール、お前の仕業かあ?!
≪ハーレムに男湯は必要無いからさっき片方を取り壊したのよ。今の正式名称は『カガリと女湯』よ!≫
・・・何?その痛すぎる名称?
「カガリ・・・いるの?」
俺の声を聞いたミミがトタトタお湯に向かおうとしているのを必死に止める滝座瀬と三津島・・・っぽい音がした。
「ミミちゃんダメよ、これ以上進んだら見えちゃうでしょ?」
「そうだよ、ミミちゃんはカガリと一緒には入れないんだよ?」
「どうして?・・・私もカガリと一緒が良い」
「ダメなの!コンプライアンス的にNGなのよ!ホリー、アンタも止めるの手伝いなさいよ?」
「・・・そ、そうですね。では、ここは一旦、全員で出ましょうか?」
「は?」
「え?」
「私達は良いのよ!って痛い痛いやめて!」
「私は一番乗りだから特別に残るって痛い痛い耳引っ張らないでえぇ!」
「ミミも行きますよ」
「入れないの・・・私のせい?」
ミミがしゅんとした声で聞いた。
「違います。これはカガリ殿の邪な企ての所為です。なのでミミが気に病む必要はありません」
「・・・わかった」
「カガリ殿、あとでお説教ですからね!」
そう言うとホリーは全員を連れて出て行った。
「た、助かった・・・のか?それとも死んだのか?・・・判断に困るんだが?・・・」
≪うーん、失敗だったわね。てっきり全員集合したら勢いで夜の大運動会に発展すると思ったんだけど?≫
・・・おいアール、お前も一緒に土下座だからな!
こうして俺とアールは、ホリーの前で夜の大土下座大会を繰り広げたのであった。




