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76話 <まったりと自己紹介2>

「水のケーキ・・・でございますか?」


「ええ。水のケーキよ」


・・・え?アールさん、何言ってんの?


『ザ・料理長2号』も、『うむむ』と唸っている。


みんなもそれぞれケーキを食べながら、頭に『?』マークを付けていた。


そんな中、二個目のケーキを頬張りながらホリーは目を輝かせた。


「もぐもぐ・・・私は『ザ・料理長1号』の時から1日10個はケーキを食べていますが、水のケーキというのはまだ食べた事がありませんね。大いに興味があります!」


・・・そりゃそうだろ?水のケーキなんて地球人の俺だって聞いたこと無いぞ?アールが単純に無茶振りしてるだけだろ・・・てかホリーってばケーキ食いすぎじゃん!太っちゃうぞ?


同じ突っ込みを滝座瀬と三津島がすると、ホリーは『ふふん!』と鼻を鳴らした。


「『太る』・・・今は亡き『ザ・料理長1号』にも同じ事を言われました」


・・・『ザ・料理長1号』はまだ死んで無いから。鉱山に置いてあるから!


ホリーはドヤ顔で続けた。


「なので私は『ザ・料理長1号』に言ったのです・・・『ならば太らないケーキを作ってくれ』と!」


これにはスイーツ大好き女子、滝座瀬と三津島が食いついた。


「太らないケーキ?!あるワケ無いでしょ?」


「そんなのあったらノーベル賞ものだよ?!」


「ふふん、それがあるのです!『ザ・料理長1号』が開発した独自の製法による、味は全く落とさずにカロリーだけ99%カットのケーキが!」


「嘘でしょ?!」


「地球でもそんなの無いのに?!」


「何を言っているのですかあなた達は!『ザ・料理長1号』は偉大なる大魔法使いであるガガリ殿が作った魔道具ですよ?不可能な事はありません!」


ホリーが自信満々で説明している。


・・・俺の設定、あんまりハードル上げ過ぎないで欲しいんだけどな。


「そのほぼ0カロリーケーキのおかげで、私は朝食の時に2個、昼食に2個、3時のオヤツに2個、夕食に2個、そして寝る前に2個という夢のローテーションを実現したのです!」


「な、なんて我がままな胃袋なの?!でもカロリー99%オフなら、1日100個までは食べても良いって事よね?」


・・・いやいやその計算おかし過ぎだろ滝座瀬、太らなくても絶対体を壊すから。


「はわわ〜、ケーキをカロリー気にせずに食べ放題って、何ここ、天国?私ってばスイーツ天国に来ちゃってるの?」


・・・なんだよ『スイーツ天国』って。安っぽいチェーン店みたいな名前だな。三津島お前は質より安さを取る派なのか?!


「私も・・・ローテーションする」


おいおいミミまで目が輝いてるよ。

さすが女子はみーんなスイーツ好きだな。


俺はチーズケーキを口に運びながら思った。


そう、何を隠そう俺もスイーツ男子だったりするのだ。


・・・うんまっ!このチーズケーキうんまっ!思わず笑顔になるヤツだコレ!


滝座瀬がケーキもぐもぐしながら恨めしそうに俺を見た。


「私たちが虫を食べさせられて苦しんでた時にカガリはこんなの食べてたのね・・・」


「俺だって鉱山で地獄の強制労働をさせられてたときは、虫食ってたぞ?」


「パン虫とポテ虫でしょ?美味しそうな名前じゃない?」


「どの口が言うかな?お前らの伊勢海老虫とかメロン虫の方がよっぽど美味しそうだろ?!」


ホリーも昔を思い出したようで苦々しい顔をした。


「ポテ虫ですか・・・アレは本当に心の底からクソまずかったですね・・・思い出します。あの鉱山の日々を」


「え?ホリーも鉱山にいたの?」


三津島が聞いた。


「はい。カガリ殿とはそこで知り合いました」


「ホリーも何かやらかして鉱山に入れられたとか?」


・・・今、ホリー『も』って言った?俺ってば何もやらかして無いんだからな!


「ふむ、鉱山にいた理由ですか・・・では、自己紹介と共にお話しましょう・・・我が名はホリー・フューネラル、スピーリヒル帝国の隣、モリッツァ聖帝国の貴族で元風騎士団の団長です」


「え?ホリーって貴族で騎士団長だったの?凄いじゃない!」


「うん、凄いね!テンプレだけど・・・」


ホリーは三津島の『テンプレ』というワードがどうも引っかかったようだ。


「テンプレとはどういう事でしょう?こう見えても私は最年少で騎士団長にまで上り詰め、天才と呼ばれていたのですが?」


「うん、だからそれってテンプレでしょ?」


・・・天才騎士団長をテンプレって・・・まあ俺も薄々思ってたけどさ、金髪だし、バインバインだし・・・ラノベじゃ良くある設定だからな・・・ん?・・・もしかして三津島ってラノベ好きなのか?て事はアニメやゲームも好きって事?意外に俺と気が合うかも・・・そういえばゲーム機とかソフトが散らかってたよな?犯人は三津島かよ!


テンプレ扱いされて『どよーん』と落ち込んでるホリー。


この世界に『テンプレ』って言葉、存在してるんだな・・・しょうがない、フォロー入れてやるかな。


「まあ、ホリーが凄い奴だってのは事実だからさ!・・・元気出して自己紹介の続きを頼む」


「そ、そうですね・・・」


ホリーは気を取り直して続きを語り出した。


自分が仕える聖王女の話、モリッツァ聖帝国の後継者争い、そしてそれに巻き込まれて家族が殺された事、更に聖王女と共に追われる身となった事、聖王女の身はなんとか匿ったものの、自分は捕まった事、その後、鉱山へ引き渡された事など、かなりハードな内容だった。


この話は滝座瀬と三津島だけでなく、ミミにとっても初耳だった。


「ホリー・・・かわいそう・・・私も・・・ホリーを守ってあげる」


「ありがとう、ミミ殿」


「殿はいらない・・・ミミでいい」


「分かりました。ありがとう、ミミ」


「んん」


ホリーはミミの頭を優しく撫でた。


ああ、なんだか優しさに溢れていて良い光景だな。


「なんだか尊いわね」


「うん、感動的だよね」


俺は事のついでに、その光景を微笑ましげに眺めていた滝座瀬と三津島に告げた。


「滝座瀬、三津島、次の俺たちの目標だけど、ホリーの手伝いをする事だぞ。聖王女を助けてモリッツァって国へ乗り込む。そして聖王女を次の聖帝として擁立する。その為の権力争いも

受けて立つ。あとは、ホリーのご両親を殺したヤツらへ報復する。今回は、ドラゴンでも魔族でも無く、対人間だ。戦闘にだってなるかもしれない。お前らも覚悟してくれよ?」


滝座瀬と三津島の顔が引き締まった。


「分かったわ!大変でしょうけど頑張ってね、カガリ!」


「私達も頑張って応援するからね!」


・・・ん?応援?


「応援って・・・お前らも戦うんだぞ?」


「は?」


「え?」


滝座瀬と三津島の目が点になった。

どうやら本気で応援だけのつもりだったみたいだ。

コイツらマジかよ?!


「ちょっと待ってよ!私達戦闘は苦手なの。六条の命令で魔族と戦わされた時だって何度も死にかけたし!」


「うん!私達は戦闘向きじゃ無いと思うんだ。カガリ君の女として、旦那様の留守をしっかり守ってるからね!」


「は?お前ら仲間になったんだから協力してくれなきゃ困るぞ?六条みたいに無茶な事をさせるつもりは無いしさ」


「そりゃ出来る事はもちろんやるけど戦闘は無理よ。か弱い女の子なんだから、そこは考慮してよ」


「私も、戦闘向きじゃないし、命がけなヤツはちょっと無理かな、雑用なら出来るかもだけど・・・」


「戦闘は無理?お前ら、俺に向けてバンバン攻撃魔法放ってたよな?結構エグかったぞあれ!それに2人共S勇者なんだから戦闘の才能超一級じゃねえかよ!」


「でも、戦うの怖いし・・・」


「私も。それに訓練はツラくて苦手だったりして・・・」


「じゃあ、お前ら俺達の仲間になって、これから何をしてくれるってんだよ?」


途端に2人が顔を赤くしてモジモジし始めた。


「何をってそりゃ・・・エロい事に決まってるじゃない・・・」


「うん・・・毎日いっぱいしてあげるからね!」


はあ、また来たかこのパターン。


「・・・なあ2人共・・・いい加減さ・・・エロから離れろやああああああ!!!」



俺は、2人にコンコンと言って聞かせた。

俗に言う『お説教タイム』だ。


まさかクラスカースト最底辺の俺が、最上位の2人を正座させて説教するなんて思いもよらなかったよオイ。


でもさ、ふた言目にはエロエロエロエロ言いやがって、俺だって思春期の健全な男子だよ?一度タガが外れちゃったら、何するか分からないよ?本当に2人をはべらせてエロ三昧しちゃうかもだよ?


コイツらは六条のスキル『勇者の口づけ』の影響を受けている。


その状況を知りつつ利用する訳にはいかないんだからさ、俺のスケべ心をザワつかせるのは勘弁してほしい。


しゅんとする2人がしおらしくてやけに可愛かった。


ダメだ、俺ってば、だんだんコイツらにほだされて来てるのかも?


しかし俺の説教も虚しく、結局2人のエロ奉仕路線がブレる事は無かった。


まあ、戦闘とか『エロ以外の協力』もOKしてくれたのは救いかな。



最後に、俺とアールの自己紹介をした。


アールは、ただ一言、


「名前はアール、カガリの相棒よ。それ以上でも以下でも無いわ。以上」


・・・それだけ?随分素っ気ないな。


≪だって、私はみんなとは違うから。あくまでカガリの観察者なんだからね≫


・・・そんな事言って、ホリーとミミとは結構仲良くやってるじゃん!


≪う、うるさいわね!そりゃ相棒としてはカガリの仲間との協調も必要だからよ。それだけなんだからね!≫


そして大トリの出番が来た。

別に勿体つける程のものじゃ無いんだけどな。


「俺の名前は海月加架梨(ウミツキカガリ)、16歳だけどもうすぐ17歳になる。勇者召喚で呼ばれた異世界人で元SSS勇者だ。称号を剥奪されて、色々あって今の称号は『バグ』って表示されてる。特技は魔法かな?見ての通りいろんな事が出来るよ。今は仲間も出来て楽しいけど、ここまで来るのに色んな絶望を見てきた・・・・・・・」


俺は延々とこれまでの事を語った。

勿論、アールの正体や超科学は隠しながらだが。


ホリーには既に話している事だし、滝座瀬や三津島も断片的には知っている事だと思う。

ミミにとっては初めての話ばかりだろうな。


とにかく、俺の自己紹介と言えば、どうしてもこの世界で受けた酷い経験の数々になってしまうのだ。

話したのは大体以下の内容だ。


勇者召喚でクラスメイトと共にスピーリヒル城に来た事。


SSS勇者という伝説でも語られた事の無い凄まじい称号を得た事。


元々俺はクラスではイジメられっ子の雑魚キャラだったのでクラスメイトから嫉妬され、特に六条というクラスカーストトップの奴からはとんでもない難癖をつけられた事。


六条はクラスメイトの片山クリスティーナへのストーカーという濡れ衣を蒸し返し、俺を危険人物だと決めつけ、被害者の片山自身が俺の無実を証言しても聞き入れず、俺をストーカー犯と断定して糾弾し、それを理由に称号の剥奪を提案した事。


その時、クラスメイトの大半は賛成の手を挙げ、俺の称号が剥奪された事。


俺は牢に入れられてしまった事。


翌日、訓練と称する拷問の数々を受けて、身も心もボロボロになった事。


その後、王女に勧められるがまま、魔王討伐を諦める内容の文章を書かされた事。


突然、その文章が効力を発し、俺の契約は破棄され、魔王討伐した後も元の世界へ帰れなくなってしまった事。


王女は『魔王討伐を断念しても他の勇者が討伐すれば俺も元の世界に帰れる』と言っていた。つまり自分は王女に騙され、捨てられたのだという事。


手足を鎖で繋がれ、囚人同然の酷い扱いで鉱山へ連れて行かれ、そこで死ぬまで強制労働させられるハメになった事。


辛くてキツイ労働、そして容赦なく鞭で叩かれ傷つき、食事も満足な量を与えられず、睡眠も鉱山の冷たい岩の上で布団も何もなく寝させられ、やがて死ぬ直前にまで憔悴した事。


死ぬ寸前に、奇跡的にバグの能力に目覚めた事。


そしてホリーと出会い、バグの力を駆使して鉱山から脱出した事。


ホリーの頼みを聞き入れて、一緒に旅する事になった事。


途中、ミミを助け、魔族の陰謀を知り、急いでドバシェックに駆けつけた事。


そしてさっきの戦いを経て今に至る事。


俺の話、特に鉱山で死にかけるまでのくだりは、みんなにとってもハードな内容だったみたいで、話し終わると気遣ってくれたよ。


「カガリ殿、そんな境遇にも関わらず、壊れずにこの場にいてくれて、私達の仲間でいてくれて感謝します!」


「カガリ・・・一生守ってあげる」


「本当に、心から謝罪するわ。カガリ目線で聞いて初めて痛みが分かったかも。これからはそんな痛みを忘れるくらい大切にしてあげるからね!」


「私も、本当にごめんなさい。カガリ君をいっぱい癒してあげられるように、私頑張るから!」


「みんな、ありがとう!改めてよろしくお願いします!」


俺はみんなに頭を下げた。



「ううぅ・・・カガリ様、実においたわしい。ううぅ・・・」


「ん?誰?」


「『ザ・料理長2号』です。アール様のご要望にお応えすべく、試行錯誤の末、ようやく品物が完成しましたのでご報告のタイミングを待っていたのですが、カガリ様のお話についつい聞き入ってしまいました。実においたわしい・・・ううぅ・・・」


・・・ん?アールの要望ってまさか?


「「「水のケーキ?!」」」


「はい。ではご覧下さい!私が試行錯誤の末に完成させた『水のケーキ』・・・こちらです!!」


そしてテーブルに現れたのは・・・


ぷるん!


透明でぷるんとした塊。


ケーキらしいデコレーションは無く、ただただシンプルに透明で弾力のあるそれは・・・





「「「「ゼリーじゃん!!」」」

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