75話 <まったりと自己紹介1>
俺達は今、馬車のメインルームにある全自動料理テーブル、その名も『ザ・料理長2号』を囲んで話している。
この2号は、鉱山にあった1号より大きくて豪華な作りで、料理の質もかなりのグレードアップ仕様だ。
俺が今飲んでるコーラも一味違うウマさだったよ。
みんなもそれぞれ好きな飲み物を飲んでいる。
アールは水を。
これで体を構成しているナノマシン集合体へ水分を供給しているらしい。
「水が体にしみ渡るわね」
ホリーはロイヤルミルクティーを。
今や彼女のお気に入りだ。
「はあ〜、おいしい。これを飲むと心が安らぎます」
ミミは果汁100%のオレンジジュース。
「すっぱおいしい・・・これ好き」
滝座瀬と三津島は、何故か2人揃って緑茶を飲んでいた。
「はあ〜。コレよコレ。やっぱり日本人はお茶よね」
「お城でお茶っぽいのが出たと思ったら、『お茶虫茶』だったのには怒りを通り越して笑えたよね」
みんなマッタリした所で・・・
「仲間になった事だし、改めてお互い自己紹介しようよ!」
三津島の提案で、1人づつ自己紹介する事になった。
「あ、カガリ君は最後、大トリだからね!」
「カ、カガリ君?」
「うん、カガリ君。私ってばもうカガリ君の女になったんだし、海月君ってちょっとよそよそしいでしょ?」
「お、おう・・・」
すると滝座瀬も負けじと、
「じゃあ私もカ、カ、カ、」
「無理に言わなくても良いぞ?」
「嫌よ!私も言うの!カ、カ、カガリ・・・・・様?」
「いやいや、お前のキャラで様付けっておかしいだろ?」
「おかしくないわよ失礼ね!私ってどういうキャラなのよ?」
すかさず三津島が、
「高飛車キャラ?」
俺も続けて、
「傲慢キャラ?」
そしてホリーとミミは揃って、
「「ビッチキャラ?」」
アールは完璧なる無表情を崩さず「ふっ」と鼻で笑った。
「ちょっとみんなヒドイじゃない!あとホリーとミミ、あんたらのはもはや単なるネタでしょ?」
滝座瀬は居住まいを正すと、
「おほん、じゃあ私からいくわね・・・えー、名前は、滝座瀬麻耶、17歳、高校2年生、称号はS勇者よ。自慢はルックスね。学校じゃ四大美人の1人に数えられていたわ。私と同列が3人もいるのは気に入らないけど、ルックスなら他の3人に負けてない自信はあるわね。ウチのクラス、ってより学校って女子のレベルがあり得ないくらい高いから仕方ないんだけど、もし私が他の学校だったなら、間違いなく学校全体でダントツトップの可愛さね!・・・あと、性格は・・・まあ、カガリと沙彩が言うみたいに、高飛車だったり傲慢だったりの自覚はあるわ。だって、これだけ可愛いのよ?私と釣り合うルックスの男子なんて六条位しかいなかったんだから、他の男子へ当たりが強くなっても仕方ないじゃない。まあ、その六条は脱落しちゃったけどね。それにしてもまさかこの私がカガリの女になるなんて、日本にいた時は考えられなかったわね」
自慢げにドヤ顔する滝座瀬。
「滝座瀬お前・・・相当イタイ奴だったんだな?」
「イタイって何でよ?アンタ、この私をゲットしたんだからもっと泣いて喜びなさいよ!」
「泣くかよ!お前、自分で『ゲットした』とか言っちゃって、嫌じゃないの?」
「だって事実だし。それにカガリになら良いわよ。これが宇土とかだったら死んでもお断りだけど」
その発言に、三津島が疑問を挟んだ。
「あれ?麻耶って、日本にいた時、カガリ君に酷い事を言ったりしてたんじゃなかったっけ?」
「それが・・・思い出せないのよね。私って可愛いからいろんな男がすり寄って来るし、ソイツらを門前払いするつもりで六条以外の男子全員にキツイ事言って追い払ってたから。私、カガリに何て言って追い払ったの?」
俺は指をパチッと鳴らした。
すると、テーブルの上にウインドウが現れて、ある映像を映し出した。
日本の、学校での一コマだ。
俺が滝座瀬に先生からのことづてを伝えようと話しかけたシーンだった。
「あの、滝座瀬さん、さっき先生から…」
「アンタ、なに私に話しかけてるのよ?私の事好きなの?ごめんなさい、無理だから消えて!」
「いや、先生のことづてを…」
「はあ?そんな嘘ついて、どうせ私とお近付きになりたいとでも思ってるんでしょ?アンタごときが私と付き合える筈ないわよね?消えて!」
「いや、嘘じゃなくてさ…」
「しつこいわね!そういうのホント嫌われるからやめた方がいいわよ?これ、私からの貴重なアドバイスよ。ありがたく思いなさい。とにかくキモいから消えて!」
「・・・はい」
「・・・・・」
どよーん
「麻耶、ひっど!」
「ちち違うわよ!これは全然違うから!この場面だけを切り取って流してるから酷く見えてるだけで、この前後にはお婆ちゃんの荷物を持ってあげたり、捨てられた子犬を拾ったり、通りがかりのお巡りさんに『ご苦労様です!』って敬礼したり、それはもう大活躍だったんだから!」
「嘘・・・だよね?」
「・・・嘘です」
しゅんとする滝座瀬。
しかしすぐに開き直り、
「もう!カガリってば、全っ然、分かって無いわね?あんな悲惨な状態からアンタは奇跡の大逆転で憧れの私をゲットできちゃったのよ?いわば宝くじで1等を当てたくらいの奇跡なんだからね!そして今はあの時と180度立場が逆転して、私のほうがカガリ目当てで頑張っちゃってるのよ?六条にだって待ちの姿勢だったこの私がよ?アンタ自分がどれだけ幸せ者か、ちゃーんと理解しなさいよね!」
「そ、そうなのか?」
俺は既に滝座瀬の勢いに押されまくっていた。
「そうなのよ!」
自信満々に言う滝座瀬。
「カガリ君、誤魔化されちゃダメだよ。結局、麻耶ってば、一切謝ってないんだから」
「沙彩!アンタどっちの味方なのよ?!」
「カガリ君に決まってるでしょ!」
「・・・もう!分かったわよ。謝れば良いんでしょ?・・・カガリごめんなさい。あの時は貴方の事をその辺のモブ共と一緒にしちゃってて、酷い言葉を言っちゃったわ。でもこれからは優しくしてあげるから安心してね!」
「お、おう・・・」
結局俺ってば、好かれてんのか嫌われてるのか、褒められてるのか貶されてるのか、どっちなんだろうか?
なんだか色んな意味で強烈な自己紹介だった・・・
「じゃあ次は私ね!私は三津島沙彩、16歳、高校2年生?で、称号はS勇者だよ。3大アイドルとか言われてるけど、男子が勝手に言ってるだけだし気にしてないかな・・・カガリ君とは、日本では殆ど絡んだ事無かったよね?でも今は、カガリ君の事しか頭にないから。キャッ!私ってば大胆!・・・とにかくそういう訳で、私もカガリ君のハーレム軍団に入ったのでよろしくね!」
「お、おう・・・」
三津島の自己紹介も・・・結構、濃い内容だった。
・・・なあアール、これって、2人共、俺の事が好きってアピールしてるんだよな?
≪そうなんじゃないの?≫
・・・今まで女子からこんなにぐいぐい来られた事無かったから正直戸惑いまくって勘違いしそうなんだけどさ、これってつまり、六条のスキルの影響なんだよな?
≪まあそれしか無いでしょうね?だってこれだけプライドの高い娘達が、こんな綺麗に手のひらを返す訳ないでしょ?≫
・・・そ、そりゃそうだよな・・・でもさ、あくまで願望としてだけどさ、多少は本物の好意が含まれてたりは・・・するのかな?
≪脳波をスキャンして詳しく分析すれば分かると思うけど、やってみる?≫
・・・いやいや、やめとくよ。今はこれ以上、傷つきたく無いし、ガッカリしたくも無いからな。別に2人に恋愛感情が芽生えたって訳じゃ無いけど、今までアール、ホリー、ミミ以外は全然仲間に恵まれて来なかった俺にとっては、この2人の加入は意外と嬉しかったりするんだよな。複雑ではあるけど・・・
≪まあ賑やかにはなったわよね。カガリも難しく考えずに普通に喜べば?≫
・・・だよな。今は単純に2人を歓迎しよう。
次はミミが自己紹介をする番だ。
「ミミです・・・13歳です・・・ドラゴンと人間のハーフです・・・お父さんはクソ龍王です・・・カガリが懲らしめてくれて嬉しかったです・・・よろしく」
ミミの自己紹介に滝座瀬と三津島のテンションが上がったみたいだ。
「ええ?!ミミってドラゴンと人間のハーフなの?それってファンタジーぽくない?!・・・でも姿は人間そのものに見えるけど?もしかして変身とか出来るの?」
「・・・できる・・・大きくなれる」
「ミミちゃん凄い!ドラゴンに変身なんてカッコいい!」
「そ・・・そうでもない」
滝座瀬と三津島に褒められて照れているミミ・・・可愛い!
そうか、13歳だったのか、今まで敢えて歳は聞かなかったんだけど。
やっぱり俺的には可愛い妹って感じだな。
まあ実際には可愛いなんて生易しいレベルじゃないんだけど。
こう見えてミミは超絶美少女なのだ。
滝座瀬の質問は続いた。
「あのデカブツ、じゃない、龍王がお父さんだったのね?一緒に行かなくて良かったの?」
「ああ、それなんだけどさ」
俺は2人にミミの事情を話した。
龍王と人間の女性との間にハーフドラゴンとして生まれ、父である龍王によって龍人族の村に預けられた事、魔族の陰謀で村の仲間が全員殺された事を。
「ミミったらまだ小さいのに、そんな厳しい境遇だったなんて・・・私をお姉ちゃんだと思って良いからね!」
「ミミちゃん、私もお姉ちゃんになってあげる!これから一緒にいっぱい遊ぼうね!」
そしてホリーも2人に負けじと、
「ミミ殿の姉は私ですよ?だからミミ殿は私が守ります!」
俺とアールも声を掛けた。
「ミミ、当然、俺もどんどん頼ってくれよ?」
「右に同じよ」
「・・・ん・・・ありがとう。みんな」
ミミは滝座瀬、三津島とも少しは打ち解けて来たようだった。
いい雰囲気だ。
話の流れで、俺は気になっていた事をミミに聞いてみた。
「ミミはこれからどうしたい?お母さんの所に行きたいか?」
「お母さんは・・・もういないの・・・3年前に、死んじゃった」
「そうだったのか・・・悪いこと聞いたな。ゴメン」
「別にいい・・・事情を話すのは大切」
そう言うとミミは、椅子から降りて立ち上がり、俺たちに頭を下げた。
「私はもう・・・身寄りもない・・・龍王の所へなんて行きたくない・・・私も・・・みんなと冒険したい・・・よろしく」
俺たちはみんなで答えた。
「こちらこそ!」




