74話 証拠って大事だね。オイ
「これからは私達がアンタの女になって毎日思う存分、エロい事してあげるんだから感謝しなさいよね!」
「海月君、優しくしてね・・・お願い」
「ウソだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺は目玉が飛び出さんばかりに驚いた。
おいおい何だってこんな展開になってるんだよ?
コイツらは俺を地獄へたたき込んだ奴らで、復讐対象だぞ?
俺はコイツらに判決を下したんだ、勇者の称号を封印の上で懲役刑だって・・・
俺は2人を見た。
滝座瀬は上から目線で、三津島は上目遣いのあざとい感じで俺を見ていた。2人に共通するのは、顔が真っ赤という事だ。
・・・これは、参ったな。
俺の女うんぬんは置いといても、この顔を見て容赦なく刑務所にぶち込むのは流石に心が咎める。
俺は揺らぎそうな心を抑えて、抵抗を試みた。
「け、けど俺は・・・お前らに殺されかけたんだ。それで俺は・・・お前らに判決を下した、今さら覆す事は出来ないぞ?」
滝座瀬はズカズカと俺に近づいて来ると、強気な目で俺を見据えたままグイッとその顔を俺の顔の間近まで寄せて来た。
そして、
「まだそんな事言ってるの?私達はもうアンタの女なのよ?アンタの所有物なの!つまり、もうアンタに屈してるのよ。白旗上げて土下座して『エロいお仕置きして下さい』って言ってるの!・・・そりゃ確かにあの時、アンタの称号剥奪に手を上げたけど、あんな異常な状況の中で冷静な判断が出来なかったのよ!それに称号がこんなに重要なものだなんて思わなかったし、その後、アンタが死にそうな目に遭ってたなんて知らなかったし・・・王女様が言ったのよ、アンタは自分の意思でお城を出て行ったって・・・だから・・・ごめんなさい・・・本当にごめんなさい!」
話してるうちに目に涙をいっぱい溜めた滝座瀬が土下座で謝って来た。
それに合わせて三津島も、
「私も、麻耶と似たような感じだったんだ・・・あの時は不安でいっぱいだったし、六条が海月君をストーカー犯人だって言ったから、それが怖かった事もあったの。私も以前、ストーカーの被害に遭ってたから・・・でも、後で片山さんが海月君は犯人じゃないって、本当は山本君が犯人なんだって改めて言いに来てくれたの。被害者本人が何度も断言してるんだからそれが真実なのかなって・・・でもその時にはもう海月君はいなくなってて・・・まさか死にかけてたなんて知らなかった・・・ホントに・・・ホントにごめんなさい!」
そう言って土下座して来た。
三津島も泣いていた。
・・・ここまでされて許さないんじゃ逆に俺が悪い事してるような気持ちになるんだけど・・・
≪まあ、そんなすぐに気持ちの整理は付かないだろうし、取り敢えず処分は保留って事にして改めて心が決まってから判断すれば良いんじゃない?≫
アールはそう俺に助言して、俺が称号を奪われた時の、あの多数決の映像をみんなで見るように勧めて来た。
俺の視覚と聴覚で見聞きした内容を映像記録として再生出来るらしいのだ。
あのトラウマをまた見る事になるとは・・・俺はかなりの抵抗感があったが、アールが勧めるからには理由があるのだろう。
俺はみんなに説明し、テレビモニターに魔法をかける振りをして、テレビをつけた。
あの時の映像が流れる。
全てでは無く多数決のシーンだけが流れた。
それでもあの時の気持ちが蘇って来て胸糞悪かったよ。
みんなも食い入るように見ている。
ちょうど多数決が始まった。
みんなが俺の称号剥奪に手を上げていく・・・
委員長は上げていない。片山も。
他にも何人か上げてないヤツがいた。
そして滝座瀬と三津島は・・・
手を上げていた。
それは知っていた。
しかし、その時2人がどういう雰囲気だったかまでは覚えていなかった。
改めてその場面を見てみると、2人共、諸手を上げてという感じではなくて、迷いながら最後に小さく上げている感じだった。
滝座瀬は、隣の女子に何か耳打ちされた後、手を上げていた。
耳打ちした女子は、多多優香、クラスカースト上位の女子で、四大美人や三大アイドル、二大エロスには劣るが普通に美人系女子だ。
しかし、コイツは男子と一緒になってガチで俺を虐めていた奴だった。
モニターに映る多多は、整った顔を醜く歪めて笑いながら手を上げていた。
三津島のほうも、別の女子に耳打ちされた後、恐る恐る手を上げていた。
こっちの耳打ちは北騒未来だった。多多の親友で、同じく俺を虐めていた仲間だ。
北騒も嫌味な笑みを浮かべて楽しそうに手をあげていた。
・・・胸糞悪い。どうせロクでもない事を吹き込んでるんだろ?
≪待って、声を拾うから≫
アールがそう言うと、映像が巻き戻り、滝座瀬への耳打ちシーンがアップになった。
そして、
「滝座瀬さん、手を上げなくていいの?みんな上げてるよ?早くしないと委員長みたいに六条君に嫌われちゃうよ?」
今度は耳打ちの声がハッキリと再生された。
「そうよ!私あの時、多多さんにそう言われたのよ!それで、六条に嫌われたくなくて手を上げたの。今思うと、あんな奴のご機嫌を取りたいなんて本当にバカだったけど」
滝座瀬は過去の自分の行いを悔やむようにそう言った。
次に、三津島への耳打ちシーンが再生された。
「三津島さん、何で手を上げないの?あいつストーカーだよ?女の敵じゃん?女子が団結してアイツを懲らしめないとダメでしょ?」
「そう!そう言われたんだよ!それで手を上げないといけない気がして・・・ごめんね海月君、この時は海月君が犯人だと思い込んでて・・・」
映像を見て、俺は改めてハラワタが煮えくり返るのを感じた。
滝座瀬と三津島の挙手は・・・仕組まれていたのだ。
・・・コイツらが元凶か!!
俺はモニター越しに多多と北騒を睨みつけた。
≪ちょっと待って!≫
・・・まだ何かあるのかよ?!
≪もう1人お仲間がいるわね。出すわよ?≫
映像が切り替わった。
多多と北騒、それにもう1人・・・梨森だ。
3人が一緒にいる。
梨森沙知、片山の友人でいつも2人でつるんでいたヤツだ。
ストーカー事件の後、片山が俺を犯人扱いした事を謝りに来た時、コイツが付き添って来て、
『この事件のお陰で片クリとお近づきになれたんだから感謝しろ!』
とか訳の分からん事を言ってきたヤツだ。
あの時の傲慢な物言いは忘れられない。
映像の場面は多数決の後、俺の称号剥奪が決まった辺りだった。
丁度俺が呆然と立ち尽くしていた時だろう。
梨森が北騒へ話しかけた。
「上手くいったでしょ?三津島さんって過去にストーカーの被害に遭った事があるって聞いた覚えがあったから、上手くいくと思ったんだ」
「うん。『ストーカー野郎を懲らしめなくていいの?』って迫ったら簡単に手を上げたよ。チョロいチョロい」
「ざまぁね海月のヤツ。やってもいないストーカーの罪でクラスの女子を敵に回しちゃって、ホント、マヌケなヤツ。笑えるわ!」
そこに多多が加わる。
「滝座瀬もチョロかったよ。アイツ、六条君に嫌われるよ?って言ったら慌てて手を上げてやんの。バッカじゃない?・・・でもホント笑えるよね。あれ見てよ、海月のヤツ顔面蒼白になってるし」
「アイツのせいで私、片クリに『海月君に謝るつもりがアナタのせいで逆に怒らせたじゃない!』って責められて絶交されてんのよ?この程度じゃ恨みは晴れないし。アイツが称号ってのを剥奪された後、3人で思いっきり嘲笑ってやろうよ?」
「いいねそれ!その後、宇土達にボコらせよう!」
「ウケる!この世界でならちょっとくらいやり過ぎても誰にも文句言われないだろうし、これから毎日、死ぬほど虐めまくってやろうよ!」
3人で楽しそうに笑っていた。
俺の称号剥奪が決まって絶望に暮れていた時に・・・まさかこんなドス黒い話が進行していたとは・・・
映像は終わった。
「・・・・・」
重い沈黙が辺りを包んだ。
「カガリ、元気出しなさい!改めてコイツらを八つ裂きにすれば良いじゃない!」
アールらしい慰めだ。でも嬉しい。
「カガリ殿、ご学友に恵まれなかった事、お気の毒に思います。しかし、今は私がおります。私はカガリ殿を決して裏切りません!」
ホリーも嬉しい事を言ってくれた。
「カガリ・・・かわいそう・・・私が・・・ずっと一緒にいてあげるから」
ミミも健気な事を言ってくれた。
「海月アンタ、こんなに可哀想な奴だったのね・・・ありがたく思いなさい。私いま、アンタの為に心の底から怒ってあげてるんだからね!」
滝座瀬が相変わらず上から目線で恩着せがましくだけど、俺の為に怒ってくれた。
「海月君、私、あんな人達に利用されてたなんてホント悔しいよ。私も海月君と一緒にアイツらに仕返ししてやりたいよ!」
三津島は、俺と怒りを共有してくれた。
「みんな、ありがとう!こんな事実、1人じゃとても受け止められなかった。アール、ホリー、ミミ、これからも宜しく頼む!」
「当然!」
「もちろんです!」
「ん!」
三者三様に力強く答えてくれた。
そして、
「滝座瀬、三津島、悪かったよ。お前らは逆転無罪だ。称号も封印しないし、懲役も無しだ。俺の女なんて嫌だろうから、バグの力でなんとか命令を解除出来ないか試してみるよ。それが終わったら・・・お別れだ」
滝座瀬と三津島が悲しそうな顔をした。
「嫌よ、今の泣きそうな顔した海月を見捨てて別れられる訳ないでしょ?だって、私、あのクソ女達に踊らされて・・・今アンタを悲しませてる責任は私にもあるんだから!」
「そうだよ。私だって責任を感じてるよ?今はあのクソ女達から海月君を守ってあげたいって思ってる。不思議だね。海月君はすごく強いのに・・・でも、さっき、海月君と一緒にアイツらに仕返ししてやりたいって言ったのは本気だから!」
「私だってアンタと一緒に仕返ししてやるわよ!それに、アンタの女って命令も解除しなくて良いから。アンタは信用出来るし、それに、自分の女にはとことん優しいでしょ、海月って?」
「私も解除しなくて良いよ。もう覚悟は出来てるし。それに今は、命令抜きで海月君を慰めてあげたいから・・・」
2人はそう言ってじっと俺を見つめて来た。
俺の女で良いってのは、確実に命令に引きずられてる気持ちなんだろうけど、それ以外の言葉は、素直に嬉しかった。
思えば、日本で滝座瀬が俺に酷い事を言ってたのだって、コイツは俺だけじゃなく他の男子にも似たような事を言っていたのだ。
要は、単に気位が高いってだけなのだろう。
別に俺を虐めていた訳じゃない。
それどころか、さっきの言葉を聞く限り、一度心を許してしまえば、かなりデレるタイプなのかもしれないな。
三津島とは日本では全く絡みが無かったし、こっちでの事もさっき無罪にした。
なのでもうわだかまりは無くなった。
俺は2人に尋ねた。
「滝座瀬、三津島、じゃあお前らも、俺の仲間になってくれるのか?」
「仲間じゃなくて女だから!」
「そうだよ、海月君の女だよ・・・でも、それって仲間って事でもあるよね?」
俺は2人へ手を伸ばした。
「俺の女ってのは置いといて・・・仲間なら歓迎するよ!」
そして、2人とガッチリ握手をした。
・・・仲間としてだぞ?!




